第44話 孤児院
フォルテは、朝食を食べた後に、レイアの案内で教会もとい孤児院へ向かっていた。
しっかりと朝食を食べた後なので、少し遅い時間になってしまったが、予定を入れてるわけでは無いので問題はないだろう。
本日は、ケミーニアも一緒に来ている。
街の視察をする上でも、書類よりもこちらの方が気になるようだ。
孤児院に着くと、そこにはここを訪れる人で溢れていた。
一定以上の信者はいるらしく、教祖であろう人物の説法を聞きに来ているようだ。
遠目からフォルテ達が見ていると、説法を聞いている中の1人がフォルテとケミーニアに気づいたようで、声を上げた。
「エルフ様だ!」
その言葉で、集まっていた民衆はフォルテ達の方を向いた。
ざわざわとフォルテとケミーニアの事を話す声が大きくなる中、代表して声をかけてきたのは教祖であろう人物であった。
レイアによれば、元孤児院の院長であるらしい。
「これはこれはエルフ様、領主様からこの街にいらっしゃるのは聞いていますよ。私達はエルフ様のようになる為にエルフ様達と同じ生活をして、精神を高める事でエルフ様達のように長命に、そして美しく、エルフ様達に近づけるように務めているのですよ」
教祖であろう人物はニコニコとした笑顔でフォルテ達に話しかけてきた。
「ほう。私達の様になる為ですか?」
教祖であろう人物の言葉に、フォルテが興味深そうな返事をした。
隣にいたレイアが、私などとかしこまった言葉を使ったフォルテを胡散臭そうな目で見ているが、教祖であろう人物は、フォルテが興味を持った事が嬉しく思った様だ。
「エルフ様達と同じ様に野菜だけを食べ、同じ様に命を尊む生活を送る事で健康に、長生きができるようになるのです!」
教祖であろう人物が信者に演説するようにこう高らかに叫ぶと、信者達から大きな拍手が怒った。
「アホくさ」
教祖であろう人物の言葉を、フォルテは一蹴した。
エルフと同じ野菜の食事というのは葉野菜のみの生活であろう。
せめて緑黄色野菜や芋、豆類なども食べていればマシだろうが、動物性タンパク質も取らなければ体は弱くなるだろう。
「エルフ様、本当のことさ。私はエルフ様と同じ食事をしてエルフ様と同じ体型に近づいてきたんだ。きっとこれを続ければ長生きできるだろうさ!」
フォルテの反応に、信者の女性が意を唱えて説得してくるが、フォルテはその女性を見て鼻で笑った。
確かに痩せているが、それだけ。
栄養不足で肌はボロボロ、髪はパサパサである。
それに、先ほどの言葉だけで息を切らしている。
「人とエルフは違う。人はバランスよく物を食べないと体を壊す。当然早死にするぞ? 肉よりも野菜、特に葉野菜はカロリーが少ないから痩せて当然だ。その代わり栄養が偏るどころか不足するから肌も髪もボロボロでとても綺麗だとは言えないだろう」
声を上げた女性はハッとして周りの信者を見た。
周りの信者達は、気まずそうに彼女から目を背ける。
この世界にはフォルテの前世のようにどこにでも鏡があるような世界ではない為、痩せた体にしか目がいかなかったのであろう。
「今言ったように人には人の食生活がある。それを取らなければ痩せ細り体調を崩す。ならば何故その男は痩せていない? お前、自分だけ肉を食っているだろう?」
フォルテの質問の言葉に、信者達の視線が教祖であろう人物の方に向いた。




