第43話 きな臭さい話
食事を終えて、フォルテはレイアを連れて来た本来の目的である教会の事を質問した。
「教会?なんですか、それは」
フォルテからレイアへの質問に対して先に反応したのはケミーニアであった。
ケミーニアが言うには、この街には教会など無いはずだと言う。
教会を建てるには、国への申請が必要である。
世界を作りし神を崇める場所なのだから、国が把握して、建物の建設を支援する他、司祭やシスターなどの人員も教会を通じて派遣される。
この街には、教会が建てられたらという記録はない為、ケミーニアが単身で監査に来ている。
教会があれば、教会の監査も同伴する事になる。
ケミーニアの説明を聞いて、レイアは難しい話に首を傾げた。
「その神っていうのが何かわからないけど、教会が言っているのは気高いエルフ様のようになれって事だぞ?」
レイアが言うには、教会はエルフを崇め、エルフのように過ごす事で人は素晴らしい存在に生まれ変わる事ができると言った話であった。
詳しく聞くと、教会とはもともと孤児院であったらしく、エルフを信仰する為に教会へと姿を変えたのだとか。
そのせいで孤児たちは孤児院の外に追い出され、外に建てられた納屋で寝る場所だけ与えられている。
本来なら孤児院を卒業する13歳になれば、孤児院の伝手で住み込みの職場を斡旋してもらえたり、孤児院の職員としてなかったりするのだが、子供達の面倒を見ない教会ではそんな事はせず、国への体裁を守って13歳まで寝床を与えた後は外に放り出すだけである。
レイアもその1人で、職も、帰る場所もない。
同い年の孤児達は、先に寒さや飢えで亡くなって残っていない。最後の1人がレイヤだという事だ。
その話を聞いて、ケミーニアは拳を強く握った。
書類の上で、孤児院に領主から支援が大きかった為に不正を疑った事があった。
しかし、領主が孤児院を手厚く支援する為、通常よりも沢山の支援をしているという報告に、納得をしてしまい、詳しく調べなかった。
孤児であろうとしっかりとした教育を受ければ将来国に貢献する良き人材になると考えたからだ。
その金は領主個人から出ており、国に収める税などに不正が無かったのもスルーしてしまった原因といえよう。
しかし、それはただの言い訳で、それに気づく事ができなかったケミーニアは自分を責めた。
「まあ、起こってしまったことは今から後悔しても遅い。問題は、これからどうするかだな。明日、その教会とやらを見にいってみるか。幸い、俺はエルフだから邪険に扱われるという事はないだろう」
レイアの話により、教会のきな臭さがぷんぷんと匂ってきているが、聞くだけでなく、実際に見てみる事も必要である。
翌日、教会に行く事を決めて今日は解散である。
解散といっても、ケミーニアも性的な事に興味がない為に、男女部屋を分ける事もなく、4人部屋なので寝るだけなのだが。
孤児院を出てから今まで、野晒しで寝ていたレイアは、孤児院でも使った事がない高級な寝具に興奮していたが、その使い心地に今までの疲れを癒すように即落ちしてしまった。
一方、ヤコブは、料理一本で育ってきた為、エルフであるケミーニアと、女性だと発覚したレイアが同じ部屋で寝る事に緊張して眠れなかった。
翌日、フォルテはヤコブから、男女で部屋を分ける事、せめてヤコブだけ別の部屋を取る許可を懇願されるのであった。




