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食欲の錬金術師〜草しか食べれないエルフは禁断の錬金術に手をかける〜  作者: シュガースプーン。


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第42話 焼き方

 フォルテ達は、提供された肉を食べ終えた後、宿の料理人と一緒に厨房にやって来た。


「それじゃ、肉の焼き方って言うのを教えてもらおうじゃないか」


 料理人の言葉に、フォルテは頷いて厨房に立った。


 使うのは、先ほどフォルテ達が食べたのと同じ肉だ。


 まずは、油をフライパンに馴染ませる。


「それでは、まずはフライパンの温度からだ。180℃くらいの温度が理想だ。しっかりと熱してから焼き始めるぞ」


 肉を焼く前にしっかりと油を馴染ませ、フライパンを温めたら肉を焼いていく。


 肉をフライパンに乗せた瞬間、ジュゥと肉の焼ける音が厨房に響いた。


「焼き始めたら塩を振っておく。いい肉だから塩加減も重要だ。肉の味を楽しむのなら塩は肉に対して1%だ」


 フォルテは塩を肉の表面に満遍なく振り掛けると、肉をフライパンの上で1箇所に居続けないように移動させつつ、焼き目はまだついていないが、構わずにひっくり返した。


「この時、フライパンの油の加減を見て少なければ油を出してもいいが、今回は要らなそうだな」


 フォルテは両面焼いた後は肉の側面を肉を立てて焼き始めた。


「フォルテ様、それは?」


「周りを先に焼かなければ肉汁が出て行ってしまうからな。こうして周りを焼きて中に閉じ込めるんだ」


 フォルテへ周りを焼いた後は、小まめに肉をひっくり返して焼いていく。


「片面からしか焼かないと火の通りにムラが出るからな。側面も含めて四方向から、なるだけムラがないようにひっくり返して焼いていくぞ」


 焼き始めて均等に火を通しつつ、全体に焼き目が付いたらフライパンから避けて、まな板の上に置いた。


「もう終わりなのか?」


「慌てるな。これがさっき言っていた休ませる工程だ。今は肉の表面の温度が180℃位になっているからな。この余熱を利用して中に火を通していく」


 料理長の質問に、フォルテはこの工程も大事なのだと説明した。


「大体休ませる時間はさっき焼いたのと同じくらいの時間だ」


「「そんなにですか!」」


 ヤコブと料理人が休ませる時間に驚いた。


 先ほど焼いていた時間は5〜6分だ。


 そんなにも長い時間を置くのかと衝撃を受けた。


「それに、休ませる間、半分くらいの時間で肉をひっくり返す」


 そう言って、半分くらいの時間でフォルテは肉をひっくり返した。


「こうする事で、肉の中の肉汁が片方に寄らないように整えるんだ」


 ひっくり返した後に時間が経った頃を見計らって、フォルテはフライパンへ肉を戻して、サッと温めたらそれで完成だ。


「完成だ!」


 フォルテはまな板に肉をフライパンから移すと、皆が食べやすいように切り分けた。


「胡椒は降らないのか?」


「まあ、食べてみろ」


 料理人の質問に、フォルテは言葉ではなく肉を差し出した。


 切り分けられたステーキは、赤みが残っているのに肉汁が出て来ていない。


 料理人だけでなく、ヤコブもケミーニアも、レイアも同時にステーキを口に入れた。


 料理人はもちろん、皆が驚愕の顔に変わった。


 肉が変わったわけではないのに先程よりも柔らかく、歯の通りがいい。

 それに、塩だけの味付けにもかかわらず、先ほどのステーキよりも肉の旨みで味が濃く感じられる。


「なんだ、これは!」


 料理人は自分のステーキは肉に助けられていただけで、本来の美味さを引き出せていなかったのだとこのステーキを食べて感じた。


「確かに、この味を知っていたならあの言葉も頷けるな…… なあ、この焼き方をちゃんと教えてくれねえか?」


「それは構わないが、これで終わりじゃないぞ?お次はソースだ!」


 フォルテは、フライパンに残った脂に、おろしニンニク、おろし玉ねぎ、醤油と酒、砂糖を少々入れる。


 使った酒は麦から作った焼酎に近い物だ。


 米に出会っていない為、米の酒や味醂が無いのが無いのが悔やまれるが、代用は可能だ。


 沸騰手前、アルコールが飛ぶ程度に温めたら、ステーキソースの完成だ。


 ソースをスプーンで掬って、残った肉の上にかける。


「さあ、好みはあるが、これで食べてみろ!」


 先程は肉の旨みを味わう物であったが、このソースは、ニンニクの風味などによって、肉の味を高めるものである。


「あんた!これの作り方もおしえてくれ! さっきの茶色い汁はなんだ!」


 必死に頼み込む料理人を見て、フォルテはやり過ぎを悟った。


 まだ、醤油は錬金術によって作っているのでフォルテの手元にしか無い。


 フォルテは、料理人に頼まれながら、料理の《さしすせそ》をこの世界で自給自足させなければいけないなどと考えるのであった。




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