第37話 毒イモ
フォルテ達は、旅をしてある街にやって来た。
この街はケミーニアの視察の仕事がある為に寄ることになっていた街である。
ケミーニアは歓迎を受けて領主に案内されていくが、フォルテ達は遠慮して街に繰り出すことにした。
フォルテとヤコブを羨ましそうに見るケミーニアを尻目に、街を歩き、王都では出回らない食材やスパイスがないか歩いて回る事にした。
「うーん、やはりここはまだ王都と近いから目新しい物はないな」
「そうですね、それにこの街はあまり治安が良くなさそうです」
ヤコブはフォルテに返事をしながらチラリと路地を見た。
大通りからすぐ横の路地でさえ、スリやひったくりを狙う子供達が大通りを覗いている。
「まあ、たしかに……」
フォルテは、同じように路地裏を覗いた所で路地の方へ歩いて行き、そこに居た子供の手を掴んだ。
子供は驚いた様子だったが、すぐにフォルテを睨んで怒りだした。
「何すんだ!これは俺のだぞ!」
子供が持っていたのはコロッケやピザでも使ったジャガイモであったが、子供の持っているそれは芽が出ているどころか生である。
「それをそのまま食べれば死ぬぞ?」
「死ぬのは分かってる。でも食べなけりゃひとは死ぬんだ。だから、食べて死ぬか食べずに死ぬかなら俺は食べる。食べて死ななかったやつもいるんだから俺はそっちに賭けんだよ!」
フォルテは確かに王都とは違うとため息を吐いた。
王都ではここまで切羽詰まった者はいなかった。
買い出しの為に街は歩き回ったが、王都では孤児は教会がきちんと面倒を見ていた。
「それを絶対に死なずに食べられる方法を教えてやる。お前、ここいらの子供は仲間か?」
「そうだよ。最近は警備が厳しくなって盗むこともできない。捨てられた毒イモを食ってでも生きるしかないんだ」
「だから安全な食べ方を教えてやると言っているだろう。その今はな、国王も美味しいと言って食うんだぞ?」
フォルテの言葉に、子供は目をパチクリとした後に疑いの目でフォルテを見た。
「本当かよ?」
「だから死ぬのをちょっと先延ばしにして俺の言う事を聞いてみろ。そしたら腹一杯食えるぞ?」
「わ、分かった。でも、コイツらも……」
子供は自分だけなのかと聞くように周りの子供達を見た。
その様子を見てフォルテはニヤリと笑った。
「全員まとめてだ。その代わり、盗むのはもうやめにしろ。そしてお前がリーダーだ。他の子供達のまとめ役になれ」
フォルテの言葉を聞いていた周りの子供達が、本当に腹一杯食えるのかと聞いてくるので、フォルテは大きく頷いた。
「だから、約束を守るんだぞ?」
「「「「「「わかった!」」」」」」
この路地に居るのは子供ばかりだ。多分口減しの為に捨てられた子供なんだろう。
盗むのも生きる為。そんな子供ばかりである。
治安は悪いが悪い大人がいないのが救いであった。
「お前の名前は?」
「俺の名前はレイアだ。嘘ついたら全員でボコボコにしてやるからな!」
「よし、そうと決まればその毒イモをありったけ集めてこい後は、空き地が必要だな。ヤコブ、ひとっ走りして領主に空き地を貰ってこい。ケミーニアに理由を説明すればなんとかなるだろう」
「分かりました!」
今までの話を聞いていたヤコブは笑顔で領主館まで走った。
子供達も捨てられた毒イモを撮りに行った。
そしてフォルテは、逃げ出さないようにとレイアに見張られて、準備が整うのを待つのであった。




