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食欲の錬金術師〜草しか食べれないエルフは禁断の錬金術に手をかける〜  作者: シュガースプーン。


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第28話 朝食うどん

 朝食に並んだのは昨日とは違ううどんであった。


 ・カルボナーラうどん


 ・豚しゃぶサラダうどん


 ・コンソメかき玉あんかけうどん


 の3種類である。


 朝なのであっさりした物を。


 カルボナーラうどんはあっさりだけでは物足りないとフォルテが考えたからである。


 テーブルに並んだ3種類のうどんを見て、国王は驚きの声をあげた。


「うどんとはどれだけでも姿を変えるのだな」


 昨日と同じ味なものは用意していないので、味の変化も楽しめるだろうと予想している。


 勿論、うどんを一年と言われると飽きそうなので、別のメニューも教えてから旅に出るつもりだが、間違いなくうどんは主食になるだろう。


 朝から昨日の晩ご飯を食べたメンバーが全員集まって一緒にいただきますをする。


「女性が朝食を食べに来るのは珍しいですな」


 宰相がそう話すと宰相の妻が恥ずかしそうに代表して答える。


「恥ずかしながら、今朝はいつもよりお腹が空いてしまって」


 恥ずかしがる女性陣に、フォルテが笑いながら答えた。


「それはちゃんとした晩ご飯を食べたことで胃が膨らんでいたからだ。胃もたれだなどは無いのだろう? 健康な証拠だ、恥ずかしがる事じゃない」


 エルフであるフォルテの言葉に、女性陣は胸を撫で下ろした。


「しかしな、健康な生活と言うのには食事だけではダメだぞ。バランスの取れた食事、それに加えて適度な運動が必要だ。それによって体を強く作っていく。食事ばかりでは、カロリーの取りすぎは体の毒になる。バランスが大事だ。これからヤコブは俺に付いて美味しい料理をたくさん覚えるだろう。その時の為に、今からゆっくり運動を始めるといい」


「頑張りますわ。ありがとうございます、フォルテ様」


 フォルテは前世で、そのバランスを崩して食に傾けすぎた為、病にかかり、大好きな食事を制限しなければならないという生き地獄を味わった。


 その苦しみをこの世界の人に味わって欲しく無い。

 みんなで、楽しい幸せな食事がしたいのだ。


 話をしていると、フォルテの隣に座っていたケミーニアのお腹が「ぐ〜〜」と鳴いた。


「ははは。そうだな、早く食べよう。話は食べながらでもできる」


 まるでケミーニアのお腹と会話をするような口調で、フォルテが話した事に顔を赤くしながらケミーニアは「そうですね、早く食べましょう」と元気に返事をした。


「きただきます」


「「「「「いただきます」」」」」


 全員がフォルテの号令に合わせて顔の前で手を合わせて挨拶をして食べ始める


「あなた、その豚しゃぶうどんをお願いします」


 王妃に言われて国王がうどんを取り分ける。


「他には豚しゃぶうどんはおらんか?」


 ついでとばかりに、国王が希望者に取り分けている。

 この食事の場に、遠慮と言う物はない。


 代わりに料理長がカルボナーラうどん、ケミーニアがかき玉うどんを取り分けたり、身分関係なく会話を楽しみながら朝食をいただく。


「フォルテ様!これは、このサラダうどんはなんなのですか!」


 隣のケミーニアがフォルテに語彙力を失った質問をしてくる。


「そんなに美味いか。どれ、俺も食べよう」


 フォルテは国王が取り分けてくれた豚しゃぶサラダうどんを豪快に啜った。


 鼻に抜ける濃厚な胡麻の香り。


 このうどんの為に、わざわざ作った胡麻ドレッシングがいい仕事をしている。

 その為にわざわざマヨネーズも作ったのだ。


 胡麻、醤油、味噌、マヨネーズ、お酢。


 調味料を掛け算して生み出される無限の可能性の一つだ。


 まろやかだが、食欲をそそる酸味のある味。


 そして冷やしうどんのモチモチとした食感、喉ごし。


 完璧である。


「美味いな!」


 フォルテはただ一言ケミーニアに笑顔で伝える。


 コメンテーターのような長ったらしい解説はいらない。

 食べている物が同じなら、それだけで伝わるのである。


「このスープは凄いです!この上の野菜は私がこれまで食べていた物と同じです!なのに、こんなにも、美味しい!」


 ケミーニアが興奮する理由もゴマだれであった。


 長年生野菜それも葉野菜ばかりを食べてきたケミーニアにとって、ゴマだれで野菜が美味しく食べる野菜が衝撃だったようだ。


 周りを見れば、国王他、野菜で過ごしてきた面々は感動した様子で野菜を食べている。


 ゴマだれを作っている時に料理人達に聞いたが、ドレッシングと言う物もこの世界には無いそうだ。


 味と言えば塩。


 それがこの世界。


 フォルテは肉が食べられるように慣れば食事が楽しめるかと思っていたが、まだまだ道のりは遠そうである。


 そんな事を考えながら、フォルテはこの美味しい朝食を楽しむのであった。



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