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第22話 走り終わって

 明良達三人がベア・ウルフに追われていた頃、恒はドリーから剣術を学ぶことになった。

 恒にはお詫びチートで剣術関連のスキルも与えられていたが、原資となる体には剣術のなんたるかは備わっていなかった。

 それでもゴブリンの襲撃から、難なく逃れられたのはマンガや映画の殺陣を恒が知っていたからであるということ。それと幼少期にはチャンバラで遊んだ経験があったことから、チートスキルがそれを補助することでなんとか対応出来たというレベルだ。

 また、この時はゴブリンだけで作戦も何もなくただ突っ込んでくるだけの戦法だったので、剣術が素人な恒でも対応出来ただけだった。


「ふむ、スジは悪くはないな。それになんとなくだが、勘もいい。なら、少しずつ上げていこうじゃないか」

 ドリーから渡された木剣を軽く振った恒を見ていたドリーの目が爬虫類を思わせる目付きへと変わる。

「ドリー。これって訓練なんだよね? 殺されることはないよね?」

「さあな。もし死んでもワシを恨むなよ。恨むなら、ワシをその気にさせた自分を恨むんだな」

「ナニソレ……」

 ドリーの言いように呆れていると、恒の死角から剣先が迫ってくる。

「うわっ」

 その剣先に手に持っていた木剣の刀身当て剣先を逸らし、慌てて躱すとニヤリと笑うドリーが視界に入る。

「さすがとしか言えないな。まさか、あれを躱すとはな」

「ちょ、ちょっと待ってよ。ほら、俺を見て! 素手だよ。なんにも持ってないよ?」

 恒が手に持っていた木剣はドリーの剣先に合わせただけなのに、その半身もない状態だったので、恒はそれを放棄しドリーに素手であることをアピールする。

「ふむ。それもそうだな。なら、道具を選んでこい」

「え? アドバイスは?」

「ない。自分の直感で選べ」

「ええ! なにそれ」

「そうか? 自分の直感は大事だぞ。まあ、いいから。ほれ! あそこの台に並べている武器から好きなのを選んでこい」

「あ~もう分かったよ」

 ドリーからのアドバイスは当てに出来ないので、まずはどんな武器があるのかとドリーに言われた通りに武器が並べられている台に近付く。


「選べって言われてもな~」

『まあ、取り敢えずは振ってみればいいんじゃないの?』

「それもそっか」

 ミモネに言われた通りに端から順番に武器を振ってみるが、チートスキルのお陰かどの武器を手に取っても、スッと振れる。


「さすが、チートだな。でも、ここまで扱えると今度はどれにした方がいいのか悩んでしまうな」

『なんて贅沢なんでしょう!』

 ミモネに呆れられながらも台の上の武器を選び続けていると、なんだか自分を呼んでいる様な気がして、その方向に視線を向けると鞘に入った物が目に入る。

「あれって、あれだよな」

 そう思いながらも恒はそれに引かれるように近くに寄ると、黙ってそれを手に取る。

『あ!』

「なんだミモネ……ん? んんん? なんか吸われている?」

『ワタル! 早く! 早く、それを離して!』

「俺もそう思って、離そうとしているんだけど……なんか離してくれなくて」

 恒がなんとか必死に離そうと藻掻いていると『ゲフッ……』と聞きたくもない音が聞こえる。

「ミモネ、こんな時に」

『僕じゃないの。濡れ衣なの!』

「え? ってことは……」

 恒は自分の手から離れず、何かを吸い上げていたソレを鑑定する。

「あ……ダメな奴だ。これ」

『大丈夫なの?』

「多分……」

 恒がそう言って、鑑定した()を手から離すとそれは宙に浮く。

『大丈夫じゃないみたいなの』


 恒とミモネは宙に浮くそれをジッと見ていると、騒ぎに気付いた明良達にドリーにギルマスまで恒の後ろから黙って見守っている。

「恒、今度は何をしたんだ? って、あれは……日本刀?」

「やっぱり? 明良にもそう見えるのなら、そうなんだろうね」

「じゃなくて、なんでそんなものがここにあるのよ!」

「そうよね。だってここは日本じゃないものね」

「でもね、驚くのはそこだけじゃなくてね。この刀の銘が『村正』っていうこと」

「「「え~」」」

「それっていわゆる『妖刀』でしょ。なんかで聞いたことあるわよ。恒、ソレを早くポイしちゃいなさい!」

「ポイって……」

『そうじゃ。そこの女子(おなご)は何を言うておるのじゃ』

「「「「のじゃ?」」」」

 声の主は探すまでもなく恒達の目の前でゆらゆらと浮かんでいる妖刀だろう。


『このままじゃ話しづらかろう。ちょっと待っておれ。確か……こうやって、こうじゃったかの』

 目の前の妖刀は恒達のことは気にせずに一人? であ~でもないこ~でもないとぶつくさ呟いた後に『うむ、思い出した』と言うと刀本体が光る。

 そして、その光が収まると和装のおかっぱ頭の少女がそこに立っていた。


「うん、久しぶりじゃがうまくいったようじゃの。ん? そこの」

「えっと、俺?」

 和装の少女に指を差された恒は自分のことかと問い返す。


「ん、そうじゃ。そなたのお陰で久方振りに満腹を味わうことが出来、こうして人の形にもなれたのじゃ。礼を言おう。ご苦労じゃったの」

「「「すっごい高い所からのお礼!」」」

「うん。分かった。じゃあね」

 恒は目の前の少女に対する用事は終わったとばかりに台の上の武器選びに戻る。


「恒? お前、どうするんだ、これ?」

「何? 明良。今、武器を選んでいるところだから。話なら後でね」

「いやいやいや、そうじゃなくて。このお嬢さん? でいいのかな。この少女はどうするんだよ?」

「え~だって、俺の物じゃないし。ここのギルドにあったんだから、ギルマスがなんとかするでしょ。そんなことより、明良も手伝ってよ」

 恒と明良の会話を聞いていたギルマスが、ドリーに確認すると台の端の方に置いてあった黒鞘の一振りの武器を恒が手にした後のことを話す。

 そして、ギルマスは何故、その黒鞘をこの台に並べたのかと騒ぎを聞きつけ、訓練場に来ていたギルドの職員に尋ねる。

「えっと、確か木製の訓練用の武器を用意してくれとのことだったので、倉庫にあった木製のを持って来て並べました。それにあの黒鞘のはどんなに頑張っても鞘から抜くことは出来なかったので、なら危険はないだろうと思い並べました」

「そうか、分かった。ありがとう」

 ギルド職人の説明で、元々倉庫に保管されていた物らしいということは分かった。

 分かったが、目の前にいる黒髪の少女はどう扱えばいいのかとギルマスは頭を抱える。


「ほう、あやつは妾を不用(いらぬ)と言うのじゃな。じゃが、ここまで無視されて黙っているのも面白くないの」

 妖しく笑う少女を見て、ドリーが呟く。

「ワタルには女難の相でもあるんじゃないのか? 面倒な一癖も二癖もある女に好かれるなんてな」

「ちょっと、ドリー! それ、どういう意味かしら?」

「恒はそんな風に思ってはいないハズ……」

 ドリーの呟きに対し由香と久美が反応する。

「そういう意味なんだがな……」


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