魔力結晶
さつきが横穴から這い出ると、そこは真っ暗だった。
壁ぎわに立っている航が、スマートフォンの光をこちらに向ける。一瞬、まぶしさに目を閉じてから、あわててかんてらを横穴から拾いあげる。
「……ごめん。灯りが」
「いいよ。……ちゃんと、見張ってたから」
良二が、にこりと笑っていった。その言葉とともに、……ぼとりと、手のなかから、小鬼の死骸が落ちる。
死骸は、腹に大きな穴があいている。同じように傷ついた死骸が、良二の足元にはいくつも転がっている。
右手には、戦いに使っていたのとは別の、メスのような小さな刃物。それから、今、死骸からこじり出したばかりの、黒い、いびつな形をした石。
「……それで、全部?」
「うん、」
いいながら、石とナイフを、鞄に入れていた布で雑にぬぐう。
足元に置いていた4つとあわせて、5つの黒い石を、鞄の奥にしまい込んで、良二は頷いた。
「ん、」
ぐい、と航がさつきに、預かっていたスマートフォンを差し出してきた。
「……ありがとう」
「で、……どうだった?」
「4人。……たぶん、みんな生きてる。効いたと思う」
「そっか、」
「だいぶ使っちゃったから、……節約しないと、やばいかも。ごめんね」
「それはいいけどさ……、」
「ね、宝箱! 開けようよ」
ぐい、と大きな声で割りこんで、美香がふたりをつついた。
「そうだね」と、落ち着いた声で、良二。
「いや、」
航は、自分のスマートフォンの画面を一瞬だけ見て、
「少し、……移動してからにしよう」
と、言った。