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暗闇の襲撃
階段をのぼる。
航が、良二のからだを背負っている。意識はないが、まだ、かろうじて呼吸はしている。
ぼたり、ぼたり、と血が落ちていく。そのたびに、美香がちいさく啜り声をあげる。
さつきは、大きくふくらんだ鞄を背負っている。結局、古い服は捨てた。竜の魔力結晶が、鞄に入りきらなかったからだ。
かんてらの光をたよりに、最短ルートを思いだしながら、迷宮を登っていく。
航の剣は、もう輝きを失っている。力を引き出せるのは、ほんの一瞬。そのあとは、半日ほど休まねばならない。
できるだけ、背中を揺らさないよう、早足で通路を進んでいく。
「あ、……ここ。」
だれかが、ふとつぶやく。
良二の声だったかもしれない。
ここ、──たしか、小鬼が。
ひゅっ……、と、航の右耳のあたりから、血がしぶいた。