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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第三章『学園編』
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096 飛行魔法

 このダンジョンに入ってから、もう何時間ぐらい経っただろう?

 周囲は薄暗く、私が生成した発光素子(毒)による僅かな光しか無いため、外界の時間は全く分からない。

 唯一正確な腹時計はずっと鳴りっぱなしなので、役立たず……。


「今何時かなぁ?けっこう時間経ったけど……」

「04時21分をお知らせします」

「……なんでそんなに正確に時間分かるの?タイマー内蔵されてんの?」

「封印されてて暇だから時刻魔法を開発したんだよ。100年封印ってのは時刻魔法があったから分かったんだ」

「太陽も見えないとこでどうやって正確な時間を得てるの?」

「光は届かないけど重力波は届いてるからな。惑星間の距離から恒星の位置も分かる。ちなみに重力波は魔力のイメージでなんとなく感知できんだよ」

「ぼっちさん意外と頭いいんだね」

「くっそ、その名前なんとかしてぇなっ!」


 重力波かぁ……さすがにそこまで物理得意じゃないから難しそう。

 私の毒は、重力無視して効果範囲内なら浮かす事も出来るけど……。

 いや、ファンタジー毒なら再現できるんじゃない?

 試しにファンタジー重力(毒)を金属スライムの真上に生成してみた。

 地面にへばりついてた金属スライムがちょっと浮いて、焦ったようにもがき始めた。


「おおっ、できた!でもこれめっちゃ魔力消耗する」

「なんで重力生成出来るんだよ?お前なんでも有りだな」

「魔力消費が多いから、空を飛ぶのは無理かぁ……」

「空なら俺が飛べるから、俺に乗ればいい」

「えっ!?空飛べるの!?」

「魔力で作った空気を操って、無理矢理自分の周りに揚力を発生させるんだよ。本来なら航空力学に沿った形状が必要なところを魔法で強引に飛べる。ただし魔力がけっこう必要になるから、宿主から魔力を借りないと出来ないけどな」

「宿主って……ぼっちさん、寄生虫なのっ!?ぎゃあああああああっ!!」


 ぼっちさんを投げ捨てたが、壁に当たる事無くふわりと浮いた。

 あれが飛行魔法か……。


「こら、投げ捨てんな!お前の体に寄生してる訳じゃなくて、契約者とパスが繋がってるだけだから。魔力は借りれても、体を蝕んだりする事は無いんだよ」

「なんだ、じゃあ私の内側から食い破って出て来たりしないんだね?」

「発想が怖ぇよっ!!」


 そうか、ぼっちさんに乗れば空飛べるのか。

 それなら定番は剣の形にして乗る感じかな?

 いや、髪を後ろで編み込んで円柱に乗るのもいいね。


 それにしても、外はもう明け方なんだね。

 きっと、みんな心配してるよなぁ……。

 心配されるほど弱くもないつもりだけど、逆に強いのに帰って来ない方が心配されるのかも知れない。

 まぁ悪いのは私じゃなくて、金髪リーゼントだし。

 説教されたら容赦無くチクるもんね。


 それから暫く歩くと、ようやく最上階層へ辿り着いた。

 あとちょっとで出られる……と思ったところで、何やら先の方で戦闘音らしきものが聞こえてきた。

 金属同士が高速でぶつかり合っている音だ。


「誰かが戦ってるみたいだね」

「どうすんだ?」

「とりあえず隠れて様子見かな?」


 私はファン○ルを消して、壁の影になっている部分を伝いながら、音のする方へと近づいていった。

 光も消しているので姿は見えないが、どうやら私より少し大きいぐらいの子供が金属スライムと戦っているようだった。

 光も無しにどうやって戦ってるんだろう?

 私と同じく、何らかの感知系スキルがあるとか?

 かなりの身体能力で頑張っているように見えるが、金属スライムに攻撃が通っていないので徐々に劣勢になる。

 そしてカキンという音がして、その人が武器を取り落としてしまった。


「がはっ!」


 そのまま攻撃を受けて壁に打ち付けられる。


「やばいね。助けに入るよ」

「しゃーねぇな」


 足に練った気を込めて、全力で金属スライムに肉薄する。

 クリティカルポイントは走り出す前に見極めてるので、そこへ向けてぼっちさんを突き刺した。

 金属スライムのコアを突き刺すと、すぐに溶けるように消えていった。


「大丈夫?」

「うぅ……」


 生きてるみたいだけど、結構重症かも?

 魔力を多めに込めた回復薬(毒)をその人の腕に突き刺す。


「あばばばばばばばば」


 あ、慌て過ぎて魔力込めすぎたかな?

 回復薬(毒)だからアホになる事は無いと思うけど……。


「完全に気を失ってるな。どうやって運ぶ?」


 私が背負うにはちょっと身長差があるなぁ。

 ……あ、閃いたかも?

 私はぼっちさんを長方形の板にして、その上に気を失ってる人を乗せた。


「じゃあ、ぼっちさん。飛行魔法で飛んで運んでね」

「俺、武器なんだけどなぁ……」


 何故か落ち込んだ様子で、ふらふらとぼっちさんが浮き上がった。

 念のためにぼっちさんの周囲にもジャミング魔素(毒)を展開させて、私達は再び出口を目指した。


 ようやくダンジョンから出ると、朝日が既に顔を出していた。

 脱出に一晩中かかってしまうなんて……。

 いや、ぼっちさんが案内してくれなかったら、もっとかかってたかも?


「う、うーん……」


 ぼっちさんの上で運ばれていた人が目を覚ました。

 朝日に照らされた顔を見ると、黒髪黒目のその少年はどこかで見たような顔だった。


「あれ?確かAクラスにいた人……?」

「……え?君は先日教室の前で会った子……?」


 以前王女と話した後に会ったAクラスの少年だった。

 Fクラスを差別していないようで、好感が持てるなと思ったんだよね。

 でもこの人、どこか別の場所でも見た事ある気がするんだよなぁ……?

この物語はファンタジーです。

実在する重力及び回復薬及びジャミング魔素とは一切関係ありません。

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