095 ジャミング
プスプスプスプス……。
「なぁ……」
「ん?何?」
プスプスプスプス……。
「これ、俺要らなくね?」
「まぁ、そだね」
「正直っ!」
「そんなに褒められると照れちゃうなぁ……」
「褒めてねぇっ!!」
私がファン○ルで金属スライムを刺しながら歩いてたら、なんか伝説の武器がうるさい。
「なんなんだよそのファン○ルみたいなのは!?」
「毒針から出した毒だけど?」
「なんで毒で金属スライムを突き刺せるんだよっ!?」
「高硬度金属(毒)だから金属スライムより硬いし」
「なんでコアの位置をそんなに正確に突き刺せるんだよおっ!?」
「私のスキルの特性で、相手のクリティカルポイントが視えるからだよ、赤○きんちゃん」
「質問繰り返してるのは赤○きんだからじゃねぇっ!!お前が常識外れな事ばっかやってるからだっ!!」
工夫してるのを常識外れと言われるのは納得いかないなぁ。
寧ろ、何も改善せずに既存のやり方を続けてるだけの人って害悪じゃない?
「おい、たまには俺の事も使えよぉ……」
「傷が付いたら下取り価格が落ちるじゃん」
「だから、伝説の武器を売ろうとすんなっ!」
「えー。だって、あなた伸びないから突き刺す時に金属スライムのとこまで移動しないとだし」
「いや、お前のイメージ次第で形が変わるんだから、伸びるイメージしろよ」
「あ、そっか」
イメージしたら伝説の武器(毒針)の先がゆっくり伸びた。
「もっとシュッと伸びないの?」
「魔力込めれば高速で変形できる」
「ファン○ルは魔力込めなくても高速変形できるから、やっぱりこっちの方がいいや」
「ちょっと待てっ!そもそも俺の最大の利点は形が変わる事じゃなくて、魔力を直接魔法に変換できる事なんだよ!ほらこんな風に」
伝説の武器の周りに、急に電気のようなものがバチバチと放電されて纏わり付いた。
「魔力を電気にして武器の周りに纏わせる事で、攻撃の威力を上げれるんだぞ」
「ほーん」
私は伝説の武器を持ってる逆側の手に針を持って、同じように電気を纏わせてバチバチいわせた。
「なんで出来るんだよっ!!俺の存在意義を潰してくんじゃねえええっ!!」
その後も私はファン○ルで金属スライム達を殲滅していった。
プスプスプスプス……。
「やっぱりファン○ルは楽でいいわ〜。今度から私の攻撃スタイルこれで行こう」
「ちっ……。そんなもん、それこそお前がやってるようなジャミングが弱点だろうが」
「ジャミングは、私の転生特典のスキルだから出来るんだよ。そうそう同じ事出来る敵なんて出てこないから大丈夫」
「やっぱりお前も転生者か……。でも、その油断が命取りだぞ」
急に私のファン○ルがフラフラと私の意思を無視して動き出した。
「どうだ?お前のジャミングを再現してやった。さしずめ、ジャミングノイズってとこだな」
「なっ、なんだと……?ならばこっちはジャミングノイズジャマーだっ!」
「ぬうっ!?それなら、ジャミングノイズジャマーキャンセラー!!」
「なんのっ!ジャミングノイズジャマーキャンセラーデリーターっ!!」
なんてアホな事やってたら、私のジャミングがキャンセルされて一斉に金属スライムが襲いかかってきた。
「ぎゃああああああっ!!」
喚きながら四方八方にファン○ルを突き出したら何とか撃退できた。
「あ、危なかった……」
「今日のところは引き分けだな」
「くっ、まだやれるっ!」
「やろうとすんな。また襲われるぞ」
決着は後日に持ち越されたのだった。
また暫く金属スライムを刺しながら練り歩く。
それにしても階層が深いダンジョンだね。
敵は変わり映えしないのに……。
伝説の武器があった部屋からずっと戻り続けて、もう私が最初に転移させられた場所は越えてるはずなのに、出口はまだまだ先らしい。
「まだ先なの?」
「伝説の武器が封印してあるダンジョンだぞ。そんな簡単に出口にたどり着ける訳ねーだろ」
こんなに長いダンジョン、この伝説の武器が道案内してくれなかったら、絶対出れなかったと思う。
というか、伝説の武器って呼び方面倒くさいなぁ。
「ところで伝説の武器に名前は無いの?」
「名前……そ、そういえばお前の名前も聞いてなかったなっ!」
なんか急に挙動不審になった?怪しい……。
「私はアイナだよ。それで、あなたの名前は?」
「……で、『伝説の武器』が名前じゃダメかなぁ?」
「何よ、名前無いの?」
「うっ……あ、あるけど……」
「なら教えてよ。私鑑定とか使えないから名前までは分からないし」
しばし沈黙する伝説の武器。
「……ものの槍」
「え?何て?」
なんで魔力で作った声を小さくするのよ?
そんなに恥ずかしい名前なの?
「『のけものの槍』だっ!俺が前世の学校で『ぼっち』だったって話したら、前の所有者がふざけて付けやがったんだ!ぼっちで悪いかっ!?しかも名前ありきで槍の形を某アニメに寄せやがって!あんな形で切れるのは妖怪だけだああぁっ!!」
あらら、辛い過去があったんだね……。
可哀想だから別の名前付けてあげたいところだけど、でも名前って考えるの難しいよね?
「そっかぁ、大変だったね。新しい名前付けてあげたいけど今は思いつかないから、とりあえず仮で『ぼっちさん』って呼ぶ事にするよ」
「……おい、名前が上書きされたんだが?」
この物語はファンタジーです。
実在するファン○ル及び高硬度金属及びジャミングとは一切関係ありません。




