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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第三章『学園編』
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094 伝説の武器

 まぁ転生者だから何?って話なんだけど。

 前世の記憶はあるけど、望郷の思いは薄いのよね。

 戻れるわけでもない世界なんて、それこそファンタジー異世界だもの。

 まぁ共通の話題があった方が仲良くなれるかも知れないけどね。


「で、どうやって喋ってるの?」

「俺が伝説の武器である事より、そっちが気になるのかよ?」

「伝説自体を知らないのに興味あるわけないでしょ。それより口を使わずに声を発する方法の方が興味あるよ」

「声なんてのは空気の振動だ。魔力で空気の波を作れば声帯無しで喋れるって訳だ。つまり声帯を通してないから——こんな風に女の声だって出せるわよ」

「なるほどね。つまり、こうかな……あーあー発声練習」

「うわ、キモッ!少女の口からおっさんの声出てるとか恐怖映像だわ!」


 直接魔力で空気操作なんて出来ないから、毒針で出した空気(毒)を震わせてみた。

 音を出すだけなら簡単だけど、声だと声質を安定させるのが難しそう。

 大人な女性をイメージしたのに野太くなりすぎちゃった。

 透明な声帯を再現した方が、イメージ通りの声を出せそうかな?


「俺でも苦労した声の再現を簡単にやっちまうとはな。さすがこの部屋までたどり着いただけあるな」

「モノマネは得意なんだよ。じゃあ聞きたい事も聞けたし、帰るね」

「だから、早々に帰ろうとするんじゃねぇよっ!!」


 でも、いつまでもここに居るわけにもいかないんだよね。


「どうしても帰りたいようだが、こっちにはお前を抗えなくさせる言葉があるんだよ」

「え……?」


 急に雰囲気が違う喋りになった。

 私は警戒してジャミング魔素(毒)を強める。


「力が欲しいか?」

「……いや、それ二番煎じだから。前に言ってた人いたし」

「何だとおおおおぉっ!?」


 同じ事言ってた白銀の人もやっぱり転生者か転移者だったのかな?

 おや?なんか槍が落ち込んでる雰囲気に……。


「なんでだよぉ……100年も温めてきたネタなのにぃ……」

「長いよ。ってか、よく100年もこんなとこに居て平気だったね?」

「無機物になってから精神構造が変わったみたいでな。人間だったら耐えられなかったかも知れないが、寿命が無いせいか割と平気だった」

「ずっと閉じ込められる事には耐性あるのに、ネタが被ったぐらいでそんなにへこまないでよ」


 っていうか何かおかしくない?

 あのネタって100年も前のものじゃなかったと思うけど……。

 魂には時間が関係ないから、100年前に転生しちゃう事もあるのかな?

 異世界だから時間軸が同じとも限らないし。


「それで、結局あなたは何がしたいの?」

「……俺の所有者になって、俺を外に連れて行って欲しい」

「だったら最初からそう言えばいいのに」

「様式美ってもんがあるだろう?格好良く契約した感じでやりたかったんだよ!」

「はいはい。それで、どうやればいいの?」

「普通に俺を台座から抜くだけで契約成立だ」

「クーリングオフはある?」

「あるかあああああああぁっ!!」


 不親切だなぁ。

 まぁ最近はネット通販が主流だったし、クーリングオフが適用される事も減ったかもね。

 私は槍の柄の部分を掴んで台座から引き抜こうとした。


「むむぅっ!?……全然抜けないんだけどぉ?」

「あれ?おっかしいな。ここまでこれる程の実力者なら、余程の悪人か魔王でも無い限り抜けるはずなんだが?」

「私、悪人のつもりは無いんだけど?」

「おぅ、それは魔力の雰囲気で何となく分かる」

「じゃあ魔王って事?こんなに可愛い魔王がいると思う?」

「自分で可愛いって言う奴は小悪魔だと思うが、お前が言うとボケにしか聞こえねーしな」

「折っていい?」

「やめろぉっ!」


 うーん、何らかの封印が施されてるっぽいなぁ。

 それなら……、


「じゃあ封印破壊しちゃうね」

「は?」


 奴隷紋を破壊した時の毒のイメージで、封印破壊毒を生成して台座に打ち込む。

 バキンっという音とともに、何かが砕け散った。


「よし、抜けたっ!」

「……おい、今何やった?」

「封印を破壊したんだけど?」

「無茶苦茶すんなぁ……。世界平和の為にも、伝説の武器を手にしたお前が魔王じゃない事を祈るよ」

「大丈夫、外に出たらどこかの武器屋で下取りしてもらうから。良い人に買って貰えるといいね」

「早々に手放そうとすんなっ!伝説の武器だっつってんだろが!」

「だって私、槍なんて使えないもん……」

「あぁ、その辺は心配すんな。俺は持ち主のイメージする武器に形を変えられるから」

「え?そうなの?」


 それなら……アイスピック形になーれ。


「おお、本当にアイスピック形になった。便利!」

「これ、某RPGの毒針じゃねーか……。めっちゃ攻撃力低いだろうが」

「だって私、毒針使いだし」

「なんだその弱そうな職業は!?お前どうやってここまで来たんだよ?」

「金属スライムって毒針が弱点じゃん?」

「あ……あぁ、まぁそうだけど。でも素早くて簡単に倒せないだろうに……って、それでジャミングしてたのか」

「ジャミングしなくても倒せるけどね。ここまでくるのに何回プスプスやったことやら」

「伝説の武器なのに毒針にされるとは思ってもみなかったよ……」

この物語はファンタジーです。

実在するジャミング魔素及び封印破壊毒及びアイスピックとは一切関係ありません。

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