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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第三章『学園編』
90/258

090 触れない

 みんなで鍋を囲んでいる間、レオナさんは終始俯いていた。

 鍋はしっかり食べてたけど……。

 めっちゃ思い詰めてるようだったので、ちょっとやり過ぎたかな?と思ってしまった。

 まぁ、これでスキルランクが強さの全てじゃないと理解してくれればと思う。

 キャサリン姉も特に言葉をかける事も無く、レオナさんは王女と一緒に帰って行った。

 明日以降の護衛任務に差し支えないといいけど……。


 そう思ってた時期が私にもありました。

 翌日、校舎裏の山小屋にて……


「本日からFクラスにお世話になるレオナ・ルークスです。よろしくお願いします」


 ……おかしいでしょ。

 なんでレオナさんがFクラスに来る事になるのよ?

 ひょっとして、昨日強く脳を揺らし過ぎたのかな?

 これ、回復薬(毒)で治る?


「あの〜、レオナさん。王女の護衛は?」

「護衛は別の者がつくので心配御無用です、アイナ様」


 あれ?この人、偽物じゃね?

 私の事『様付け』してるし、私に対して妙に丁寧だし。

 どう考えても別人ですよ。

 学園七不思議の一つ、ドッペルゲンガーに違いない!


「よし、では訓練を始める!まずは腕立て伏せからだっ!」


 何事も無かったかのように訓練始めようとしないで、軍曹殿っ!!

 そしてFクラスの人達も何事も無かったように受け入れて、腕立て伏せの体勢にならないでっ!!

 あれ?私がおかしいの?

 レオナさんも腕立て伏せの体勢になってるし。

 もう訳が分からないよ……パート2。


 その日の訓練も何事も無いかのように無事終了した……。

 きっとみんな腫れ物に触らないようにしていたんだ——と思う事にした。

 なので私も触れない。

 触らぬ神に祟りなし。


「じゃあレントちゃん。昨日約束したとおり、スキルの使い方教えてあげるね」

「ぜぇ……はぁ……い、今ですか……?」


 過酷な訓練で息も絶え絶えのレントちゃん……訓練が無い日にしてあげた方が良さそうだね。

 私はピンピンしてるけど、Fクラスは満身創痍な人ばかりだし。


「アイナ様、ちょっと宜しいでしょうか?」


 もう一人ピンピンしてる人が寄って来た。

 私はあなたに触れない事にしたんですが……?


「えっと、何かご用でしたでしょうか?レオナさん」


 昨日とは打って変わった、真剣な眼差しで私を見つめてくるレオナさん。

 その側でレントちゃんが地に伏した。

 大丈夫か、レントちゃんっ!!


「アイナ様、私に稽古を付けていただけないでしょうか?」

「はい?」

「ありがとうございます」

「いや、今のはYESの『はい』じゃないよっ!レオナさんはキャサリン姉に師事したいんじゃ無かったの?」

「私は自分の未熟さを痛感しました。スキルランクに胡座をかいているようではダメなのだと。そして、スキルに捕らわれない強さを持ったアイナ様に尊敬の念を抱き、私が師事するべきはアイナ様しかいないと確信しました」


 やはり脳を揺らし過ぎたのか。

 次からはアンダー・ジ・イヤーで三半規管を揺らす程度に止める事にしよう。

 おかしな信者が増えたら困るからね。


「お願いしますっ!私はどうしても『閃紅姫』を越えたいんですっ!」

「あ、やっぱりレオナさんってレイアさんと関係ある人なんだ……」

「レイアを知っているのですか?」

「うん、一度模擬戦やった事あるし」

「そ、それでアイナ様はレイアに勝ったのですか?」

「いやぁ、模擬戦だから途中で危険だからって止められちゃった。一応引き分けなのかな?」

「引き分けっ!?……やはり私は間違っていなかった。アイナ様に師事したいと思います!」


 詳しく話を聞くと、レオナさんは剣士の名家ルークス侯爵家のご息女で、レイアさんは分家筋にあたるらしい。

 同じAランクのスキルを授かった事から、初めは共に切磋琢磨する関係だった。

 しかし、徐々に実力に開きが出てきて、仕舞いにはレイアさんがジっちゃんの弟子になった事で軋轢が生まれた。

 分家筋の者が本家を越える力を手に入れた事で、レオナさんはかなり肩身が狭い思いをしたそうだ。

 努力はしても、スキルランクに拘っていたせいで実力が伸びず、鬱憤が溜まっていたらしい。

 それで先日のあの態度だった訳ね。

 そうか、レイアさんに追いつきたいから、強さを求めると……。

 ごめんね、先日レイアさんをパワーアップさせちゃったから、更に実力に開きが出ちゃってるわ。

 これは償わなければなるまい……。


「しょうがないなぁ。分かったよ、レオナさんの事も面倒見るよ」

「本当ですかっ!?ありがとうございます!!」

「とりあえず、強くなるに当たって、アホになる覚悟はあるかな?」

「強くなる為ならば、何でも致しますっ!!」


 よし、言質は取った。

 被検体1名様ごあんなーい!

この物語はファンタジーです。

実在する回復薬とは一切関係ありません。

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