008 ターキー
「ヒナよ、これはどう見ても……」
皆まで言うな。
私だって見ただけで分かるよ……下に行く階段だって。
「ジっちゃん、ワンチャンここって上に登っていくタイプのダンジョンだったりしない?」
「せんのぉ。地下100階って行ったじゃろ?」
つまり更に地下へ潜っちゃう階段しか発見できなかった訳だ……。
でもダウジングはここしか指してくれないんだからしょうがないじゃん。
帰り道の方に反応しないってことは、何らかの原因で閉ざされてるのかな?
あぁ……、教会の地下にあった罠の意図が分かったかも。
一方通行の転移で、更に地下へと降りて行くしか無い絶望を突きつけるつもりだったのね。
「まぁ、降りるしかないじゃろうて。もっと下の階なら転移装置があるだろうから、そこから出ればええじゃろ」
あ、そういえばダンジョンには10階ごとに地上に戻る為の転移装置が設置してあるんだっけ。
ん?それなら……、
「じゃあこの階にもあるんじゃないの?」
「残念じゃが、このダンジョンは特別での。30階置きにしか転移装置が無いんじゃ」
あぁ、なるほど。
つまり30、60、90と来ちゃうから、次の転移装置は120階になっちゃうのか。
「ちなみに120階が最下層で、そこのダンジョンボスを倒さないと地上に出れんがな」
「えっと、ちなみにジっちゃんはダンジョンボス倒せるの?」
「ふん、その程度倒せるに決まっとるじゃろ。儂を誰だと思っとるんじゃ?」
いつも股間掻いてる変人お爺さんだと思ってるけど?
ジっちゃんでもボスが倒せるなら、そんなに大した事ないダンジョンなんだろうな。
敵が弱くてそこそこ深いダンジョン……追っ手から隠れて住むには最適かも知れない。
下に降りる階段から少し下の階を覗いてみると、何やら美味しそうな七面鳥みたいな魔物がいた。
「これはもう絶対ここに住むしかないっ!!」
「な、なんじゃ!?どうしたんじゃ、ヒナ!」
まだ生きて動いてる状態の鳥を見て美味しそうって思えるなんて、私も着実に狩人に近づいてきたのかも知れない。
「ジっちゃん、あの魔物食べれるよね?」
「おお、ありゃビッグターキーじゃな。かなり美味いぞ」
私たちは下の階層でビッグターキーを狩りまくった。
だって美味しいんだもの!
亀しかいない階と違って、そこら中にいるから絶滅する事はないでしょ。
そもそもダンジョンだからリポップするはずだし無問題。
レベルが上がったおかげでビッグターキーの動きにも難なくついていけた。
素早く近づき、食べれなくなる毒は使わずに気絶させるだけの毒を生成して、クリティカルポイントに打ち込む。
動けなくなったビッグターキーの首をジっちゃんが戦斧で切断、そのまま血抜きして焼いて食べるを繰り返した。
普通の七面鳥サイズをもう10匹ぐらい食べたんだけど、まだまだ食べれそう。
私の胃袋どうなってんの?
下の階に降りる階段はダウジングであっさりと発見。このダウジング、チートじゃね?
地下101階以降は森がずっと広がっていて視界も悪い。
ダウジング無しだと階段見つけるのは難しそうだし、そもそも道なき道を行くから、かなり時間がかかるんじゃないかな?
ビッグターキー以外は虫系魔物ばかりだったので、食べれなかった。ジっちゃんは普通に食べてたけど……。
蟹みたいな味なの?でも見た目が無理だから絶対嫌っ!!
そのまま119階まで何の問題も無く降りてきた。
ジっちゃん結構強いね。
亀を殴ってた時とは別人のように素早い動きと豪快な戦斧の振り回しで、次々に魔物を屠っていった。
お腹いっぱいになって元気になったのかな?
一応寄生レベル上げのために、じっちゃんが攻撃する前に毒を飛ばしてちょっとだけダメージを与えておいた。
「いよいよ120階だけど、ここのボスってどんな魔物か分かる?」
「確かアースドラゴンじゃったかな?土属性の防御力が高いタイプのドラゴンじゃ」
ドラゴン……めっちゃ美味しいって言われてるよね?
是非食べないとっ!
——ふと疑問が生じた。
「ねぇジっちゃん、何の用でこのダンジョンに来たの?最下層の魔物が判明してるって事は、ここはもう攻略されちゃってるんでしょ?」
「攻略されたからって誰も入らなくなる訳じゃないぞ。ダンジョンにはドロップアイテムがあるから、それ目当てに入る者や、適正レベルの者がレベル上げに入る事もあるんじゃ」
「ここの魔物を簡単に屠るジっちゃんが態々レベル上げに来ないよね?じゃあドロップアイテム目当て?」
「いや、教会関係者が怪しい動きをしているというから、それを調査する為に来たんじゃ。既に脱出した後のようじゃがの」
教会関係者ねぇ……めっちゃ心当たりあるわ。
あの転移罠設置するために来てたんだろうねぇ。
「100階で彷徨ってた理由は?」
「うむ、道に迷った!いつも何の魔物がいるかしか調べないでダンジョンに入るからのぉ。がははははっ!」
あー、そいう性格なのね。短い付き合いながら、なんか分かる気がするわ……。




