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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第三章『学園編』
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075 潜入

 月明かりの無い闇夜の中を4つの影が走る。

 屋根伝いに飛んで行けたら格好良かったけど、ここは貴族街なので各家の庭が広すぎて、屋根と屋根の間隔が広い。

 獣化すれば地上に落ちる事無く伝って行けると思うけど、無駄に体力を使うのは無しだ。

 今はとにかく急ぐ事が大切なのだから。


 妖術というのはかなり便利で、姿を消した者同士でもコミュニケーションを取る手段がある。

 『伝心』という妖術で、短距離であれば声を出さずに会話できるし、相手の位置も把握できる。

 私だけはクリティカルポイントで3人の位置が丸見えなんだけどね。


『主殿、この先を右に曲がったところだった筈です』

『了解』


 足音も完全に消えているので、通りを行き交う人がいても、こちらを見向きもしない。

 買い物行く時これで行けば、貴族に絡まれる心配なくなるんじゃない?

 思わぬところで問題が一つ解決した。

 この調子で本日最大の問題もサクッと解決するぞ!

 フラグちゃん、おすわりっ!!


『見覚えがある。確かにここがダンテ・ゲファレム伯爵の屋敷だ』


 九曜達は奴隷商館に連れて行かれる時は目隠しされてたけど、最初に奴隷として伯爵邸に連れて来られた時は、馬車から外の様子が窺えたらしい。

 その時の記憶を辿って、伯爵の屋敷までやって来た。

 伯爵自身は慎重でも、奴隷を運ぶ者まで細心の注意を払ってる訳では無いようだ。

 トップがいかに優秀でも、組織には何らかの綻びがあるものよね。


 私達はあえて正面の門から、普通に侵入した。

 周りの塀等は侵入者対策がされている可能性もあるので、門番が立っている場所の方が逆にセキュリティが甘いと踏んだからだ。

 その読みは正しかったらしく、夜にも拘わらず立っていた門番の横を、あっさりとくぐり抜けられた。

 それにしても、夜にまで門番働かせるって、めっちゃブラックだね。

 後ろ暗い事やってるから、夜の来客とかがあるのかも知れない。


『奴隷が囚われている場所は分かる?』

『正確な場所は分かりません。屋敷の中を移動する時は目隠しで情報を封鎖されていましたから』

『部屋には光が差し込んで無かったし、そういった後ろ暗い事を隠すなら地下だと思う』

『地下への入り口を探すのが先決じゃな』


 なるほど、地下ね。

 でも、屋敷の建物の近くまで来たけど、地下にクリティカルポイントは見つけられなかった。

 この建物の中じゃないのかな?


『この付近の地下に人は居ないよ』

『……主殿、何で分かるんですか?』

『私のスキルの特性だよ』


 可能性としては別の場所も考えられるけど、最悪は既に誰も生きてないか……。

 いや、悪い方に考えちゃダメだ。

 でも、自分の悪行を隠す場所をそんなに離れた場所に作るとは思えないから、絶対この近くだと思うんだけど……。

 一応、屋敷の中の人の動きをクリティカルポイントで探ると、不自然な程に横たわった人が集まる場所があった。

 屋根裏で寝てる……?

 そういえば妙に屋根が高くて広い気がするが、そんな無駄なスペースなら屋根裏部屋がある筈なのに、光を入れるための窓らしきものは無い。

 そこか!


『たぶん見つけた。屋根裏部屋だよ』

『おお!なるほど』

『さすが主殿じゃ』

『まさかの主殿を連れて来たのが正解とは』


 ふふふ、褒め称えるがよい。

 そうこうしている内に、門番が交代になったようで、ドアを開けて屋敷に入っていこうとしていたので、私達はその後ろから付いて行き、無事屋敷に入る事に成功する。


『じゃあ手分けして屋根裏に行く階段を探すよ』

『『『了解!』』』


 4人で手分けして階段を探した。

 しかし、それらしきものを見つける事は出来なかった。

 そりゃあ普通の通路から登れる場所に、やばいところに繋がる階段なんて作らないよね。

 どこかに必ず隠し階段があるはずだけど……。

 私は、久々にファンタジー金属ダウジング仕様(毒)を生成した。


『主殿、遊んでる場合では……』

『いや、遊びじゃないから』


 オンラインゲームは遊びじゃないけど、これも遊びじゃないんだよ。

 こういった閉鎖された空間内ならダウジングで見つけられるんじゃないかと思ったのだ。

 ダンジョンでは上に上る階段ではなく、下に降りる階段を見つけてしまったから、いまいち信用できないけどね……。

 ダウジングの示す方向へ訝しむ九曜達と共に行くと、一つの部屋の前に来た。

 中には気配が無く、誰も居ないようだ。

 そっと扉を開くと、そこは執務室のような内装の部屋で、壁際にはびっしりと本棚が並んでいた。

 ここは伯爵本人の部屋だろうか?

 調べるべく足を踏み入れたのだが……、


「その先へは行かせないぞ」


 声がしたので振り返ると、仮面を付けた人物が部屋の入り口に立ってこちらを向いていた。

 妖術はまだ継続しているのに、仮面の人は確実に私達を認識しているようだ。

 特殊なスキル持ち?

 あるいはあの仮面が魔導具か?

 その仮面の人の横から、戦士風の装備をつけた男が2人顔を覗かせる。


「誰もいないぞ……」

「本当に侵入者がいるのか?」

「いるぞ。その本棚の付近に4人いる」


 人数まではっきりバレている!?

 これは戦闘不可避かもね。


『ちっ、見つかったか』

『九曜、儂らで迎撃するぞ。主殿と吹雪は手はず通りに』


 叢雲がそう提案してくるけど、2人とも武器すら持ってないじゃない。

 本来は獣人の子供だけ保護したらこっそり逃げるつもりだったから、武器どころか防具すら何も装備していない。

 人を呼ばれる前にさっさと片付ける必要があるし、武器は私がなんとかしようか。


『九曜は刀、叢雲は小太刀を二刀でいい?』

『あ、ああ。主殿、よく俺達の武器が分かったな』


 私は毒で刀(毒)を一本と小太刀(毒)を二刀生成して2人に渡した。

 更に、外見がバレないように、九曜と叢雲を忍装束(毒)で包み込む。


『主殿、何でも有りだな……』

『かたじけない。これで正体もばれずに戦えるわい』

『10分経つと武器と防具が消えちゃうから、注意してね』

『主殿は猿の獣人だと思ってたが、狸だったのか?』

『余計な事言ってないで、さっさと行きなさいっ!』

『おうっ!』


 九曜と叢雲が隠密の妖術を解除して、仮面の人に向かって駆け出した。

この物語はファンタジーです。

実在するファンタジー金属及び刀及び小太刀及び忍装束とは一切関係ありません。


短編小説も書いてみました。

『ブサイクだから召喚キャンセルされたけど、戻った世界がパラレルワールドで何故か妹がデレた』

https://ncode.syosetu.com/n2940id/

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