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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第三章『学園編』
73/258

073 相談

 パキンという音とともに奴隷紋が砕け散り、3人の奴隷達は枷を失う。

 それはとても喜ばしい事の筈なのに、彼らは私との繋がりを失ったと少し悲しそうにしていた。

 いや、奴隷として繋がるって、あんまり健全じゃないと思うんですけど……。


「奴隷達に残虐非道な行為をしているのは、ダンテ・ゲファレム伯爵です。見かけは紳士然としているので、外ではそういった噂すら立たないと思われます」

「でもよ、正体は最悪のクソヤローだったぜ。恍惚とした表情で俺の手足を切り刻んでやがったからな」

「他にも何人か地下に囚われておったが、我らに飽いた後、また別の者を奴隷として仕入れているかも知れん。急ぎ衛兵を向かわせるべきじゃろう」


 色々と話しを聞いたところ、3人のその貴族に対する評価は、共に最低のクソヤロー。

 聞いてる私だってそう思うぐらい、野放しに出来ない人物のようだ。

 しかし、キャサリン姉とリスイ姉は難しい顔をする。


「そう簡単な話でも無いわ。証拠が無い限り衛兵は動かないし、奴隷紋に喋れないような細工を施す事からも、色々用意周到に立ち回る人物だと思われるのよね。慎重に動かないと察知されて逃げられると思う」

「その手の輩は潰すのに時間が掛かる」

「キャサリン姉とリスイ姉なら、簡単にぶっ飛ばせるでしょ?」

「アイナちゃん……魔物相手じゃないんだから、そんな無法者みたいな事できないわよ。特に貴族相手に問題を起こしたら大変なんだから」

「私とキャサリンは直接国の揉め事に干渉できない。国の上層部に掛け合って、証拠を掴んでもらうしかない」


 確かに、キャサリン姉とリスイ姉程の力を持つ人が力ずくで内政干渉したら、世界が混乱するもんね。

 単独で国滅ぼせそうだし、何らかの協定が結ばれてたりするのかな?


「じゃあ、私がこっそり殲滅……」

「殲滅しちゃってるのに、こっそりとか無理に決まってるでしょうが」

「殲滅するにしても、まず根回しが必要」


 私と姉達の会話を聞いていた九曜くよう叢雲むらくも吹雪ふぶきが唖然としている。


「殲滅できないって話にはならないんだな」

姉君あねぎみ達は明らかに儂らより強者であるし、何らかの勝算があるのじゃろう」

「でも、話を聞いてると、主殿だけで殲滅できるような事言ってますが……不可思議な術が使えてもそれは難しいのでは?」


 一酸化炭素(猛毒)を蒔いて、コーヒー(毒)纏わり付かせて視界を封じれば、簡単だと思うけどね。

 でもスキルを見切れるぐらいの達人がいたら無理かも?

 私には力任せな事しか出来ないし、ここは大人である姉達に任せるとしよう。


 キャサリン姉とリスイ姉は、情報屋を当たったり、国のお偉いさんに根回ししたりする為に出掛けて行った。

 まだ九曜達の事を信用しきってないみたいだったけど、一応忠誠を誓ったから私の事を任せると言ってくれた。

 まぁ、最悪3人がかりで来られても私は勝てると思うけどね。

 そもそも、私は3人を信用してるのでそんな心配はしてないし。


 しかし、ここで問題が発生する。


「お腹空いたけど、誰か料理できる?」


 吹雪が元気に挙手したのに、九曜と叢雲が必死に取り押さえていたので、察した。

 メシマズ属性かよ……。

 男性陣もあまりやった事が無いらしく、結局私がやる事になってしまった。

 私がやると、かなり男料理みたいな事になるんだけど、この中では一番マシかなぁ……?


 王都に着く前に狩った猪の保存加工した肉を使う事にする。

 というか、材料はこれしか無い……。

 買いに行こうにも、私達はこの辺の地理に明るくないし、貴族と鉢合わせると拙い事になる予感しかしないので、キャサリン姉達が戻るまではこれで凌ぐしか無いのである。


 まずはフライパンに油(毒)を敷きます。

 肉を入れます。

 焼きます。

 以上!


 調理に使える物を探したけど、フライパンと鍋しか見つけられなかった。

 油は毒で代用できるからいいとして、調味料は……やっぱり毒だね。毒のオンパレードだよ。

 でも奴隷生活が長かった3人は、久しぶりの肉だと言って一心不乱にかぶりついていた。

 調味料(毒)が良い感じに染みこんでいて、保存加工してた割にけっこういい感じに焼けて、美味しかった。


 ひとまず食事を凌いだ私達は、それぞれ部屋を割り当てる事にする。

 3人はもの凄く恐縮してたけど、部屋なんて余り過ぎてるから一人一部屋割り当てた。

 これ、掃除とかめっちゃ大変そうなんだけど、家政婦雇った方がいいかな?

 護衛を雇うだけでも色々揉めたのに、こっそり覗きとかする家政婦とかいるかも知れないし、難しいかなぁ?(偏見)


 私がまったりと部屋で寛いでいると、コンコンと扉をノックされる。

 九曜と叢雲と吹雪が、3人揃って何やら神妙な顔付きで部屋に入ってきた。


「主殿、姉君達がいる所では話せなかったんだが、その……」


 九曜が言いづらそうに口ごもる。

 姉達には、まだ信用されてないっぽいから、そりゃ不用意な事は言えないよねぇ。

 でも、何の話だろう?


「今晩だけ、主殿の元を離れてもいいだろうか?」

「いいよ」

「護衛として、それはダメだってのは分かってる。だが……って、いいのかよ!?」

「夜なんて出掛ける予定も無いし、一人でも別に平気だよ。最近は減ったけど、森の中でよく一人で野宿してたから、家の中に居られるだけで充分安心できるもん」

「どんな生活してたんだよ……。というか、ここを離れる理由もまだ言ってないんだが?」

「貴方達が、誓った忠誠を曲げてまで行きたいって事は、きっと相当な理由があるんだよね?」

「あぁ……実は例の貴族に囚われていた奴隷の中に、獣人の子供が居たんだよ。その子だけでも早めに救出してやりたいんだ」


 獣人の子供という言葉を聞いて、私の中の何かがドクンと脈打った。

この物語はファンタジーです。

実在する一酸化炭素及びコーヒー及び油及び調味料とは一切関係ありません。

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