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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第三章『学園編』
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072 ぶっ壊れスキル

 目が覚めると、そこは知らない天井……。

 豪華なシャンデリアに飾られた——ここはどこだったかな?


「目が覚めたかしら?」


 キャサリン姉の声……。

 そういえば奴隷達を治療して、そのまま意識を失ったんだっけ?

 ムクリと起き上がると、なんだか肌寒いような気がして……ハラリと私に掛けられていた布が床に落ちた。


「「「「「あ……」」」」」


 そこには下着だけのあられも無い姿が。


「ぎゃあああああっ!!バ○スぅっ!!」

「「うぎゃああああっ!目があああああっ!!」」


 咄嗟に男性2人に聖属性の光バ○スを食らわせた。

 最近は宿で寝てたし、布団の中でしか意識を失わないから油断してた。

 10分過ぎて、服として纏っていた毒が消えてしまっていた。

 たぶん布はキャサリン姉かリスイ姉がそれを見越して掛けてくれたんだろうけど、うっかり床に落としてしまったのだ。

 街に寄った時に、下着だけでも買っておいて良かったよ……。

 私は素早く服を生成し直して、何事も無かったかのようにソファーに座り直す。


「それで、何の話だっけ?」


 しらーっとした空気が流れるが、知った事ではない。


「なんでそっちのでかい人には目潰ししないんだよ?」

「あら、アタシは心が女だもの」

「なんだよそれ、ずりぃな。俺も心を女にして女風呂入りたイテテテテっ!!」


 男性奴隷は女性奴隷に腕をつねられている。

 せっかく治った手とか腕の使い方それでいいの?


「とりあえず、貴方達の名前を教えてもらってもいい?」

「お、おう……。俺は九曜くようだ」

「儂は叢雲むらくもですじゃ」

「私は吹雪ふぶきです」


 うん、和装だからそうかなと思ってたけど、やっぱり3人とも和名だね。

 筋肉質な男性が九曜くよう、白髪のお爺さんが叢雲むらくも、白い耳と尻尾の獣人のお姉さんが吹雪ふぶきね。

 和風ファンタジーな国から来たのかな?

 ワクワクして聞こうと思ったが、直ぐに横槍を入れられる。


「それで、アイナちゃん。さっきの治療だけど、あれはスキルよね?」

「うん、そだよ」

「アイナのスキル、ぶっ壊れ過ぎ。奴隷商館で使わないで良かった」

「ああ、正に神の奇跡だったぜ」

「上位の回復魔法でもここまではできんじゃろう」

「もうこのまま生きていくしかないと思っていたのに……、本当にありがとうございました」


 そんなに褒められると照れちゃうなぁ。

 ふへへ。


「こらこら、照れてる場合じゃないわよ。こんなスキルが教皇国に知られたら大変よ。絶対に教会関係者の前で使っちゃダメだからね」


 私はそっと目を逸らす……。


「アイナちゃん、まさか……」

「……聖女の前で使ったら『異端者』に仕立て上げられて、聖女の護衛騎士が襲いかかって来たから返り討ちにした」


 キャサリン姉とリスイ姉が頭痛を堪えるように頭を抱えた。

 私は悪くないと思うんだけどなぁ……。

 そういえば、聖女の一人が王国の学園に通うって言ってたっけ。

 もしかしてこの王都にいるのかな?

 いや、でも聖女って複数いるらしいし、同じ聖女とは限らないよね?

 フラグ様、お座りになってっ!!


「もう一つ調べなきゃ行けない事が追加されたわ……。奴隷に危害を加えてる貴族の事も調べないとだし」

「あ、それなら大丈夫。この3人の奴隷紋を破壊して喋って貰うから」

「はぁっ!?」


 私は奴隷達の奴隷紋を破壊しようとソファーから立ち上がったが、直ぐに腕を掴まれて止められてしまう。


「ちょ、ちょっとっ!!奴隷紋を破壊できるの!?」


 キャサリン姉が驚愕の表情で聞いてきた。


「うん、出来るよ。前にやった事あるし」

「どんだけぶっ壊れてるのよ、そのスキル……。ダメだわこの子、早く封印しないと」


 『なんとかしないと』を通り越して『封印しないと』になってる!?

 人を魔王みたいに言わないでよねっ!


「アイナ、それやっちゃダメ。奴隷にしておかないと、アイナのスキルの事をこの3人が他人に話せるようになる」


 何故かリスイ姉の方が冷静だ。

 でも、そっか……奴隷解放すると、貴族の事だけじゃなくて、私の秘密も自由に話せるようになっちゃうんだ。

 私に関する記憶だけ消すか?ついでに私の下着を見た記憶も消そう、そうしよう。


「おい、あの嬢ちゃんやべえ事考えてる目をしてるんだが?」

「うむ、儂も何故か冷や汗が止まらん」

「あ、あの……貴族の事を話したら、また奴隷にしてもらうというのはダメでしょうか?」


 獣人のお姉さん吹雪が提案してきた。

 普通解放される事を望むと思うんだけど、それを放棄してでも話したいって事か。

 恨みを持った眼じゃないから、今も貴族の玩具にされてる奴隷を救いたいという想いからなのかも知れない。


「奴隷紋を刻むためには、また奴隷商館に行く必要があるの。つまり、奴隷紋を破壊できる事がバレちゃうわ。あの奴隷商館にまた貴族の使いが来た時に、どこからか情報が漏れるかも知れないから、それは無理ね」

「それに、貴方達3人の事、まだ良く知らないのに解放するのは危険」

「そうですか……」


 キャサリン姉とリスイ姉に断られて、吹雪は頭を垂れて残念そうに俯いた。

 それを見て、私はやっぱり奴隷紋を壊す事にした。


「キャサリン姉、リスイ姉。やっぱり奴隷紋破壊しよう」

「アイナちゃんっ!?」

「アイナ!?」

「今は一刻も早く貴族の情報を掴む必要があるでしょ?それに奴隷じゃなくなったからって、急に敵になるような人達には見えないから、大丈夫だよ」


 若干逡巡する姉達だが、最後は溜息をつきつつも了承してくれた。


「嬢ちゃん……いや、主殿。本当に俺達の奴隷紋を破壊する気か?俺達が襲いかかってきたらどうすんだ?」

「ん?返り討ちにするだけだけど?」

「はぁ?……くっ、くくくっ!面白ぇ!最高だな主殿はっ!!」

「主殿よ、3人いっぺんに解放せずとも、1人だけ解放すれば、残りの2人を人質に出来るんじゃぞ?」

「主殿、私が奴隷のまま人質になりますので、他の2人を解放してください」


 全く、この人達は……すごく信頼できそうな性格してるなぁ。

 奴隷商館でも、何気にこちらを気遣ってる風だったし。

 端々に優しさを感じるから、ついつい助けたくなっちゃうよ。


「言ったでしょ、3人とも幸せになってもらうって。まぁ、奴隷じゃなくなっても、私の護衛として雇われてくれたら嬉しいけど、帰る場所があるなら無理には引き留めないから」


 私の言葉に、3人は目を見開き、互いに視線を送って頷き合う。

 そして、そのまま床に片膝を突いて頭を垂れた。


「「「我らが神に誓って、主殿に忠誠を捧げます!!」」」


 おおう……。

 なんかまた忠誠を誓う人達が出てしまった。

 私の毒に忠誠誓うような隠れた効能とか無いよね……?

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