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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第一章『逃亡編』
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007 ダウジング

「娘っ子よ、ダンジョンに住むにしても、この階はほとんど魔物おらんから食料が無いぞ。さっきの亀も2週間彷徨ってようやく見つけたんじゃから」


 え?そんなに魔物いない階なんだ……。

 そういえば私もお爺さんに会うまで全然魔物に襲われなかった。

 襲われる心配が無いのはいいけど、食料が無いのも困るなぁ。

 私の通った魔方陣から追っ手が来る可能性もあるし、とりあえず他の階に移動した方がいっか。


「ねぇお爺さん、私と協力しない?」

「協力とは?」

「私の護衛してくれたら、出口探してあげる」

「ほぅ、自信あり気じゃが、有用なスキルでも持っとるんか?」

「まぁ見ててよ」


 普通は方角を見るのに一番いいのは天体観測だけど、まさかのダンジョンの天井がただの模様だとは。

 太陽でも描いてあれば目印にできるんだけど、どんより雲の絵が続いてるだけだからいまいち方角は分からない。

 そんな時の毒針!

 固体も直接針の先に出せるようになって、しかも形も私のイメージで自由自在。

 砂鉄(毒)を棒状にして針の先に吊すように生成すると、グルグルと回り始めた。

 グルグルグルグル……止まらないんかい……。

 方位磁石は諦めました。


「次!」

「……ほんとに大丈夫か?」


 残念な子を見る目はやめてっ!

 気を取り直して次は金属の棒を直角に曲げた形で針の先に生成する。

 ファンタジー金属ダウジング仕様(毒)。

 現実には存在してない空想上の金属もイメージさえ出来れば生成できちゃうけど、存在してないものを作り出してるせいか、ごっそりと魔力を持って行かれた。

 元素の組み合わせを越えた超常の物質を作るには大量の魔力が必要みたいだ。注意しないとね。

 でもファンタジー金属じゃないと、ダンジョンの出口なんて曖昧なもの探せないだろうし、しょうがない。


 私が通ってきた魔方陣は一方通行だったみたいで消えていたから、そっちに反応はしないと思う。

 けどそもそも出口が無いなんてことは……いやいや、お爺さんが通ってきた道が少なくともあるはずだよね。

 ピクピクと手に持った毒針ダウジングが動き出し、一定方向を向いて止まった。


「あっちだ!」

「おお、何か分からんが凄いのぉ!」


 私とお爺さんは出口に向かって歩き出した。

 残される亀の甲羅が哀愁漂う。

 甲羅は割れないし、肉を膨張させても突起してない部分は引きずり出せなかった。

 逃亡中の今、食べれるもの以外はいらないから。


「そういえば、娘っ子。名は何という?」

「えっと……ヒナ」


 まだ味方だと断言できないので偽名を名乗ろうとしたら、思わず前世の名前が出ちゃった。

 前世の名前は朝日奈陽菜あさひなひな、今世の名前はアイナ。

 韻をふんでるっぽいから咄嗟でも間違えないだろうし、まぁいっか。


「ふむ、ヒナか。聞いて驚け、儂の名はジオ・ストームじゃ!」

「……ふ〜ん」

「ふ〜んって……、驚かんのか?」


 どこに驚く要素あったの?ひょっとして有名人?

 どや顔で言われても知らないものは知らんよ。

 亀の甲羅叩いてる姿は有名人ってより村の変人って感じだったけどね……。


「おいヒナ、めっちゃ失礼な事考えとるじゃろ?」

「気のせいだよ。じゃあ、ジっちゃんって呼ぶねっ!」

「お爺さんとあんまり変わっとらんじゃないか……」


 ジっちゃんそれなりに強そうだし、しばらく寄生してレベル上げもしてもらおうっと。




☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆




 『琥珀ダンジョン』の地上入り口に揃いの鎧を着込んだ戦士達が数十人規模で待機していた。

 その中で紅一点、赤い意匠を施された目立つ鎧を着た女性——紅い髪は頭の上の方で結び上げられており凜々しい印象を与えるが、顔立ちにはまだ若干のあどけなさも残る。


「お〜い、集まったかぁ?」


 若干気の抜けた声でその女性が皆に問いかける。


「全員集合しました。突入しましょう」


 真面目そうな少し高齢と思われる男性が女性に返答した。

 すると、女性は肩を落とす。


「そうかぁ、集まっちゃったかぁ……めんどくさい……」


 何故か集まった事が不服な様子。


「いや、何でまだ乗り気じゃないんですか!あなたの大事な師匠でしょっ!ダンジョンに入ってもう一ヶ月ですよ?助けに行かないと!」


 真面目そうな男が叱咤するも、女性は胡乱げな目を向けるだけ。


「師匠だけど、大事ではない……」

「こらっ!」

「あんなエロジジイ、ダンジョンに封印しといた方が良くない?いつも股間掻いてるし、その手でお尻触ってくるんだよ?」

「いやいや、あの方が居ないと世界の均衡が狂いますって」

「一人ぐらい勇者が居なくても大丈夫でしょ。他に五人もいるんだし」

「ダメですって。ほら、早く行きますよっ!」

「やだ〜。あんた達だけで行って来てよ〜」

「何で駄々こねてるんすかっ!?ジオ様が行くような階層なんて、団長であるあなたが居ないとたどり着けませんって」

「え〜、って、痛い痛いっ!引っ張らないでよ〜!」


 紅髪の女性は無理矢理ダンジョンに引きずられていった。

この物語はファンタジーです。

実在する砂鉄及びファンタジー金属とは一切関係ありません。

ファンタジー金属なんて無いって?

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― 新着の感想 ―
水(毒) 砂糖(毒) 酒(毒) 小麦粉(毒)とかも出せるから ビタミン不足してくるまでは居られるかも。 ビタミンも認識があればいけるだろうけど。
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