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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第三章『学園編』
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069 奴隷商館

 王都の中央を走る大通りは、市も多く出ていて、とても賑わっている。

 そこを歩く私達3人はかなり目立っているようで、遠巻きに噂されていた。

 正確には前を歩く2人が目立ってるんだけど。

 それに追従する私は、「あの2人の後ろの奴は誰だ?」的な感じで悪目立ちしているだけ。

 せっかく目立たないように黒髪にしてるのに。


 それにしてもキャサリンネエとリスイねえの人気は凄い。

 まぁ、あれだけ強ければ有名にもなるだろうし、憧れる気持ちも分からなくは無い。

 ちなみに2人を姉と呼んでいるのは、初め冗談半分で「お姉ちゃん」と言ったら、かなり気に入られてしまったので、『姉』と付けて呼ぶようになったからだ。

 最近では妹のように可愛がってくれるので、私としても呼ぶ事に吝かではない。


「とりあえず家を確保しないとね。どこか良い家売ってるかしら?」

「ちょい待って!買うの!?借家で良くない?」

「ダメ。借家だと貴族が押しかけて来た時に面倒な事になる」

「それって買っても面倒なのは同じじゃない……?」


 この2人はとんでもなくお金持ちなようで、金銭感覚がおかしくなってくる。

 ずっと保護されて、養って貰うのが正解な気がしてきた。

 でも色々忙しいらしく、交代でどこかに調査に出掛けたりするから、ずっと一緒にいるのは難しいんだよねぇ。

 私もこれから貴族の動向を探って、身の振り方を考えないといけないし。

 逃亡生活に終止符を打つためには、誰かの庇護下に入るのが一番いいんだけど。


「あとはアイナの護衛になる人も探さないと」

「そうねぇ。私達が居ない時、アイナちゃん一人だと何かと心配だものね」


 まったくもう、2人とも過保護なんだから。


「護衛なんていらないよ。2人にかなり鍛えてもらったから、Aランクの魔物でも一人で狩れるし」

「うん、だからこそ、やらかさないように監視役が必要でしょ」

「そっち!?」


 別の心配があったようだ……。

 そりゃ、しょっちゅうガラの悪い連中に絡まれるけど。

 ちゃんと撃退できるし、手加減してコーヒー(毒)とか野菜汁(毒)とかでトラウマを刻む程度に止めてるもん。


「という事で奴隷商館に行くわよ」

「え?奴隷……?」

「そうよ。アイナちゃんを護衛できる程の人を雇うのは難しいからね。借金奴隷とかになってる腕の立つ人を買う事にするの」


 奴隷かぁ……。前世の世界では私の周りには無かった制度だからちょっと躊躇うなぁ。

 でもこの世界では割と普通にあるものだ。

 奴隷だからと酷い扱いを受ける訳ではないらしいので、契約によっては普通の雇用契約とほぼ変わらないとのこと。

 一応奴隷紋が刻まれて、雇い主の合意無しに勝手に解除出来ないらしいけど。

 私は解除できちゃうんだけどね。

 そういえば、前に奴隷解放してあげたルールーは元気にしてるかな?


 奴隷商館はとても大きくて綺麗な建物だった。

 相当儲かっているんだろうね。

 名のある姉達が使うぐらいだから、アコギな商売はしてないと思うけど、だからこそかなりの高額で取引されるんだろうなと思う。

 最近魔物の素材を売ったりしたので、私も多少のお金は持っているけど、こんな高そうな店ではさすがにローンを組む事になるんじゃなかろうか?


「もっと安そうなとこにしない?」

「何言ってるのよ、安い奴隷じゃ護衛にならないでしょ」


 その辺は私が魔力とか気を解放しちゃえば、どうとでもなるんだけど……。

 商館に入ると、恰幅の良い人の良さそうなおじさんが出迎えてくれた。

 奴隷を扱う人って、もっと悪そうな感じの人をイメージしてたよ。


「ご無沙汰しております、キャサリン様、リスイ様。本日はどういった奴隷をお求めですか?」

「なるべく強い奴隷がいいのだけど。できれば男性と女性を一人ずつ」

「え?キャサリン姉、どうして二人も必要なの?一人で充分だよ」

「あのねぇ、アイナちゃんは見た目が弱そうで絡まれちゃうじゃない。女の子なんだから身の世話をする女性と、余計な輩を牽制するために男性も必要でしょ」


 私、見た目弱そうなのか……。まぁ外見は10歳の子供だもんね。

 普段から気を解放して威圧しまくる事にしようかな?


「あ、あの……キャサリン様、そちらのお嬢様は?」

「ああ、この子の事は気にしないで」


 紹介ぐらいはしてよ。

 いや、下手に名前を知られると、貴族に狙われるかも知れないからいいのか。


 暫くすると、何人か候補となる人が連れて来られた。

 私は魔力測定機を生成して、奴隷達のステータスを見てみるが、以前魔力解放してあげた若い冒険者程度だった。

 流路を見ても、それほどの腕前でも無さそうだし、これなら必要無いんじゃないかなぁ?

 キャサリン姉とリスイ姉もあまり反応は良くない。


「もっと強そうなのは居ないのかしら?」

「申し訳ございません。ここにいるものが現在ではこの商館最高の強者でして」


 ん〜?そうかな?

 なんかこの建物の地下に、もの凄い流路を持つのが3人ぐらいいるけど。


「地下にいるのは売ってない奴隷ですか?」


 私が質問すると、おじさんは目を見張るが、すぐに少し困った表情へと変わる。


「さすがキャサリン様とリスイ様のお連れ様ですね。ですが、地下にいるのは体が欠損していたりと、まともに動けない者ばかりです。確かに以前は達人だったようですが、今の状態ではとてもおすすめ出来ないのです」

「その人達に会わせてもらえませんか?」

「ええと……、ここに連れてくるのは何かと憚られるので、地下においでいただく事になりますがよろしいですか?」


 あぁ、かなり酷い惨状になってるから、客の目に触れない地下に追いやられてるのね。


「はい、大丈夫です。じゃあ行きましょう」

「……承知しました」


 おじさん、渋々ながら案内してくれるようだ。


「アイナちゃん、元達人でも動けないんじゃ購入してもしょうがないでしょ」

「アイナ、私達も地下に居る強そうな気配は感じてたけど、気とか魔力だけじゃ護衛にならない」

「たぶん大丈夫。気とか魔力さえ強ければなんとかなるから」


 心配そうなキャサリン姉とリスイ姉を伴って、私達は奴隷商館の地下へと降りて行った。

この物語はファンタジーです。

実在するコーヒー及び野菜汁とは一切関係ありません。

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