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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第二章『冒険者編』
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056 無力化

 冒険者達が一堂に会した後、全員で街の門をくぐるが、誰しも足取りが重いようだった。

 遠方に見える森付近には、既に多くの魔物がうごめいているのが見えて、更に恐怖を駆り立てている。


「マジかよ……」

「あの数を相手にするのか?」

「数ならこっちも負けてねぇだろ……」

「噂じゃCランクの魔物も混じってるらしい」

「それって数でどうにかなる相手じゃねーよな……」


 口々に不安を述べる冒険者達に囲まれつつも、私のお腹はベリーハングリーモードへと突入していた。


「お肉があんなに沢山……じゅるり」


 でも、さすがに私も、いくらなんでも数が多すぎるなとは思った。

 即効性の毒を使ってたら、私の魔力が持たない気がする……。

 一気に吹き飛ばしちゃえば楽だけど、せっかくのお肉とか素材を無駄にしたくないし。

 それにギルマスが言うには、あのスタンピードを引き起こした元凶となる強力な魔物がいるかも知れないとのこと。

 それの相手をするように頼まれたので、魔力はなるべく温存しなければいけないのだ。

 ……とすると、あれしかないかな?


「ねぇ、ギルマス」

「何ですかアイナ様?」

「私が魔物達を無力化するから、冒険者達に動けなくなった魔物の止めを刺してもらいたいんだけど」

「魔物を無力化ですか。それはかなり魔力を使うのでは?アイナ様は切り札なので、なるべく前に出て欲しくはないのですが」

「あぁ、魔力はあんまり使わないから大丈夫。その代わり10分しか無力化出来ないから、動けなくなったらすぐ急所を突いて仕留めて欲しいんだけど」

「……分かりました。とりあえず、先陣を切ってもらって、最初だけその作戦を試してみましょう」

「お願いね」


 ギルマスが先鋒部隊に説明を始める。

 うーん、なんかあの先鋒部隊見たことある人が多いなと思ったら、昼間からお酒飲んでた冒険者ばかりじゃないの。

 大丈夫かなぁ?まぁ、動けない魔物を仕留めるだけだし、それぐらいは出来るか。


 話が纏まったところで、私が先頭に立ち、先鋒部隊が突っ込む体制を整えた。

 おっさん(名前不明)が心配そうに眉を下げながら近づいてきた。


「嬢ちゃんの実力は分かってるつもりだが、ホントに大丈夫か?」

「大丈夫だと思うよ?前の方にいる魔物はあんまり強くなさそうだし」

「いや、見えてるだけでもCランクの魔物が数匹混じってるんだが……」

「Cランクなら大丈夫でしょ、私もCランクだし」

「いや、Cランクの魔物ってのはパーティ全員がC……って、話の途中で走り出しやがった!おい、てめぇら急いで嬢ちゃんを追いかけるぞっ!!」

「「「おぉっ!!」」」


 私が駆け出すと、ゾロゾロと冒険者達が後を追うように駆けて来た。

 最初に接敵したのは、さっき狩ったのと同じ虎の魔物。

 私は空中に透明毒で足場を作って、素早く虎の頭上を取った。


「人の言葉で命乞いできるなら、後から来る冒険者にしてね。こっからは無差別に全魔物を無力化するから」


 一応獣人が獣化したのが混じってても大丈夫なように、魔物達に警告はしておく。

 後から来る冒険者が、それに応じるかどうかまでは責任持てないけどね。

 空中から虎へ急降下しつつ、首筋のクリティカルポイントへ狙いを定め、針を打ち込む。

 頸椎に突き刺した毒針には、神経信号を遮断する毒を付与してある。


「ガルルっ!?」


 突然自分の体の自由が奪われて突っ伏した虎は、脳からの命令が首から下に行かなくなってる為、困惑の鳴き声を上げるしか出来なくなった。

 私は、魔物の数が多いので、そのまま虎は放置してすぐに次の魔物へと向かう。

 私の攻撃の隙を突くように襲いかかってきた熊の魔物は、右腕を振り上げるも、次の瞬間には私の姿を見失う。

 空中の足場を蹴って立体機動する私の動きは不規則なので、弱い魔物には捉え切れない。

 熊の魔物の頸椎にも、同様に神経信号遮断の毒を打ち込んで無力化した。


「な、なんだこりゃ……」


 次々に無力化して死屍累々となっている魔物達を見て、冒険者達は唖然としたまま立ち尽くしてしまっていた。


「ギルマスにも言ったけど、一時的に無力化してるだけだからねっ!早めに仕留めないと動き出すよっ!」

「お……おぉっ!てめぇら、さっさと止め刺すぞっ!!」

「「「お、おおっ!!」」」


 今のところ強そうな魔物もいないので、私はそのまま森の奥の方へ無力化しながら突っ込んで行く事にした。




☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆




 次々と、動けない魔物達の頭に剣を突き刺していく冒険者達。

 スタンピードと聞いて最初は尻込みしていた彼らだが、実際に始まってみれば拍子抜けするほどの単純作業に戸惑いを見せていた。

 暫く作業を続けているうちに、軽口を叩く余裕まで生まれて来てしまう。


「……なぁ、先日ウルズがあの嬢ちゃんに『パワーレベリングは良くねぇぞ』って言ったの覚えてるか?」

「あ、あぁ……確かに俺も聞いたわ」

「俺達が今やってるのって、パワーレベリングじゃね?」

「だよなぁ……」


 その言葉を皮切りに、冒険者達の目が遠くを見つめるようになっていった。

この物語はファンタジーです。

実在する神経信号を遮断する毒とは一切関係ありません。

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