表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第二章『冒険者編』
55/258

055 スタンピード

第二章に入ってから、アイナが魔物を倒す前に人の言葉を喋れるか確認していなかったので、修正しました。

 ギルド1Fで指示を出し終えたギルマスは、自室に戻ると報告書類に目を通した。

 その中の一つに軽い目眩を覚える。


「グラン・タートルの素材が買取所に持ち込まれたぁ!?」


 強さだけで言えばCランク相当だが、甲羅の中に閉じこもったらAランクの冒険者ですら手を焼く程の魔物。

 今この街でCランクの魔物を討伐できそうなのは数名いるが、どうにもあの金髪の少女の顔がチラつく。

 書類を見る限りでは、素材を持ち込んだのは別の者のようだが。

 しかし問題はそこではない。

 グラン・タートルはもっと森の奥の水場がある付近に生息している筈。

 それがこの近辺に現れたというのは、やはりスタンピードの兆候ではないだろうか?


 とりあえず考えるのを止め、次の書類に目を通そうとした時、慌てた様子でギルド職員がギルドマスター室に駆け込んできた。


「なんだ?許可を待たずに入室する程の事が起きたか?」

「ア……アンダーファングが……」

「なっ!!アンダーファングが出たのかっ!?それで、ケガ人はっ!?」

「あ、いえ……アンダーファングが買取所に持ち込まれました」

「はぁっ!?」


 アンダーファングも森の奥に生息する魔物であり、よりスタンピード発生の可能性が高まった。

 それにしても、弱めの個体でもCランク相当の驚異的な魔物だが、一体誰が倒したのだろうか……?

 いや、ギルマスにはもう大凡の見当が付いていた。




☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆




「やっぱり……」


 虎を買取所に持ってきたら、何故か呆れ顔のギルマスが態々わざわざ2Fから降りて来た。

 私、何かやっちゃいました?

 普通に魔物倒して持ってきただけで、誰にも迷惑掛けてないと思うんだけど……?

 まぁ、門番さんを怖がらせてしまったけどね。


「何かあったの?」

「この魔物、森の奥の方に生息してる筈なんですよ。スタンピードの可能性がかなり高まりました」


 あぁ、私のせいじゃないみたいね。

 なら良しっ!


「ちなみに、昨日岩を引き摺る少女が目撃されたと報告が上がって来たんですが。もしかしてアイナ様、亀の魔物について何か知りませんか?」

「あぁ、あれね。美味しかったよ」

「食ったんですか……?」


 ギルマスは何かを諦めたような表情で天を仰いだ。

 ひょっとしてギルマスも食べたかった?

 しょうがないなぁ、また森に行って狩ってきますか。

 ——と、そこでギルド内に怒号のような叫びが響き、数人のギルド職員が駆け込んで来た。


「緊急報告っ!スタンピード発生っ!!森の奥で多数の魔物が確認され、それが徐々に街へ近づいて来ています!!」


 静寂に包まれたのは一瞬……その後、喧噪に包まれたギルドは上へ下への大騒ぎとなった。


「職員は高ランク冒険者に招集を掛けろ!宿で寝ている奴も即刻たたき起こせっ!!」


 ギルマスが職員達に指示を出し、それに従って皆動き出した。

 私は暫し、成り行きを見守る。

 あの虎ぐらいなら簡単に倒せるけど、スタンピードってどれぐらい強い魔物が出るんだろう?

 それにしてもジっちゃんとレイアさんが街を出た直後にスタンピードって、何か意図的なものを感じるよね……。

 誰かが糸を引いている?

 誰が?


「おい、聖女様にも協力を要請しろ」

「そ、それが……」

「どうした?」

「聖女様は既にこの街を去られまして……昨日の騒動が腹に据えかねたと従者の方が言ってました……」


 あらら、聖女はヘソ曲げちゃったのか。

 私のせいか……?

 でもあれは聖女が先に絡んで来たんだし、確かに多少やりすぎたかなぁ?とは思わなくはないけど、私は悪くないよね?


「あっ、アイナ様」


 一人佇んでいたら、例の少年達3人組が息を切らせてギルドにやって来た。


「アイナ様、なんかスタンピードが起こったらしいですけど、何か知ってますか?」

「ギルマスが朝から慌ただしくしてたよ。でも私、森に入ったけど、その時はそんなに強い魔物は出なかったのよね」

「あ……何か察した」

「俺も……」

「まぁ、アイナ様だし……」


 うん?さっきまで強い魔物がいなかったのはホントなのに、3人組が遠い目をしているのはどういう事?

 ワタシウソツイテナイヨ?


「おっ、嬢ちゃんも居たか。ジオ様達が居ない時にスタンピード発生でどうなることかと思ったが、嬢ちゃんがいるなら安心だな」


 魔力解放してあげたおっさんも話しかけてきた。

 名前なんだっけ?そういえば聞いて無かったなぁ。

 まぁ特に知らなくても困らないから、敢えて聞かなくてもいいや。


 暫くあちこちに指示を出していたギルマスが、私達の方へ走って来た。


「丁度揃ってるな。申し訳ないが、君達には最前線を頼みたい」

「おいおいギルマス、俺はいいが、この3人はひよっこだぜ?いくら魔力が増えたからって、いきなり最前線は無茶だろ」


 あれ?私もひよっこだけど、数に入れてくれないのは何故?


「いや、昨日ぐらいの魔力があれば問題無いはずだ。もちろん俺も最前線に立ってフォローはする」

「ギルマスが最前線に出たら、誰が指揮をとるんだよ?」

「Cランクの魔物が複数確認されているんだ。最前線で戦いながら指示も出す」

「Cランク……」

「Cランクの魔物なんて勝てっこなくね?」

「Cランクって、熊より強いじゃない……」


 先日の熊より強いのが多数……つまり、熊より美味しい魔物がいっぱいいるって事よね?

 この前食べ損ねたドラゴンみたいなのもいるかな?

 ふふふ、よだれが止まらなくなってきたー!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ