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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第二章『冒険者編』
54/258

054 虎

 すっぽん美味しゅうございました。

 大きな鍋を買ってくれたお兄さんありがとう。

 鍋を売ってた雑貨屋で血を入れておく瓶や針まで購入して貰って、ちょっと申し訳ないぐらいだったので、すっぽんを少し分けてあげたらとても喜ばれた。

 血は一応寄生虫除去の毒で安全な状態にした。

 私は吸血衝動が無いので別に血を飲まなくても平気なんだけど、滋養強壮の為と思って飲んだら、めっちゃ美味かった。

 半分ヴァンパイアだから尚更美味いと感じたのかも知れない。

 これを機に吸血衝動が目覚めちゃったら困る……まぁ大丈夫か。

 そんなこんなで美味しいすっぽんを食したまでは良かったが、当初の目的であったお金を稼ぐという事をすっかり失念していたと気付いた。

 でも、お腹いっぱいになった私はそのまま寝る事にしたので、狩りは翌日に持ち越しとなった。

 最初の頃はヴァンパイアになったせいか昼夜逆転しちゃってたのに、最近は普通に昼に起きている事が多い気がする。

 寝ると全裸になっちゃうので、ずっと野宿だった私は明るい時に寝ないようにしてたから、そのせいもあるかも知れない?

 それで思い出した。服も買わないといけないんだった。

 ミミィが着てたような巨大化しても破れない仕様の服が必要なんだけど、そんな特別仕様の服売ってるかな?

 売ってたとしてもかなり高額になる気がするし、何にせよお金を稼がないとってことよね。


 翌日、朝から冒険者ギルドへの道を暢気に歩く。

 掲示板を確認しようとギルドの中を覗くと、やけに慌ただしい雰囲気になっていた。

 いつも2Fのギルドマスター室にいるらしいギルマスも、今日は1Fに降りて来て、何やら指示を飛ばしていた。


「おはよギルマス。何かあったの?」

「……おはようございますアイナ様。何かあったの?じゃねーですよ!昨日大変だったんですよっ!」

「あー、あの聖女?あの程度なら自分で対処できるからほっといてくれていいのに」

「いや、聖女もそうですけど、それ以外にも問題があって……って、それどころじゃ無かった。アイナ様なら問題無いとは思いますけど、スタンピードの兆候があるらしいので、森に入る時は気をつけてください」

「スタンピード?」

「普段は森の奥の方にしか生息していない魔物が、街の付近でも目撃されて、冒険者の中にも大ケガを負った者が出たんです。強力な魔物達が一斉に森の奥から押し寄せる前兆に似ているので、現在ギルドでは警戒態勢に入っています。まだ森へ入る制限は掛けていないですが、低ランク冒険者には控えてもらってる状況です」

「ほーん」


 でも強力な魔物ほど美味しいって、最近気付いたのよね。

 それに素材も高値で売れそうだし。

 Cランクの私は森に入っていいようなので、そのまま迷う事なく森へと向かった。


 森へ入ると、掲示板に貼ってあった常時依頼の討伐対象となる魔物を探す。

 オーク、ゴブリン、コボルトのように、繁殖力が旺盛で人族にとっても害になる魔物が中心だ。

 人との交配もするため、特別指定で優先的に狩る事を推奨されているらしい。

 でも人型の魔物はちょっと食べるのに忌避感があるなぁ……。

 オーク肉は美味しいらしいけど、解体しちゃえばいけるかな?

 でも、カタコトでも人の言葉を喋るというのはちょっと気になる点で、師匠みたいに普通の人の姿になったりしたら、もう食べれる気がしない。

 害になる魔物である時点で、殺す事に躊躇いは無いんだけどねぇ。


 そんな事を考えながら歩いていると、大きな猫——じゃなくて虎がいた。

 牙が口からはみ出しているのはいいけど、サーベルタイガーとは逆に下顎の牙が飛び出してる。

 その牙意味ある?

 生物の進化は時に意味不明な形態になったりするし、ツッコんでも詮無いことかな?


「ガルルルっ!!」


 猫科って食べれるの?ネズミとか食ってるから変な菌とか持ってそうな気もする。

 まぁいざとなれば毒針で消毒するけど。

 そういえば、虎の毛皮って言ったら、お金持ちが絨毯とかにしてるのを前世の漫画で見た気がする。

 食べれなくても、お金になるなら狩ろう!


「獣型だけど、人の言葉は話せる?」

「ガオアアアっ!!」

「ふむ、喋れないみたいだし、やっちゃってもいいかな?」

「ガルっ……!?」


 一瞬で間合いを詰めて、額のクリティカルポイントに毒針を打ち込んだ。

 ガクガクと震え出した虎は徐々に蹲り、暫くすると動かなくなった。

 即効性の毒は魔力を大量に食うけど、仕留める時間が短縮されて効率がいいね。

 せっかくの毛皮だから綺麗に解体した方がいいんだろうし、私が自分でやるより、専門の業者にやってもらった方が高く売れるはずだ。

 よし、ギルドにこのまま持って行って解体してもらおうっと。

 でも、すっぽんの時みたいに引き摺って行ったんじゃ、せっかくの毛皮がボロボロになっちゃうし、なるべく持ち上げて持っていこう。

 ちょっと大きいけど、しっぽも使って三点で支えていけば大丈夫そうだ……と思ったんだけど、


「ぎゃああああああああああああっ!!」


 門番の人にめっちゃ驚かれた。

 大人の目線から見ると私の姿は見えなくて、虎の魔物が少し浮いて動いてるように見えたらしい。

 ちょっと!せっかく綺麗な状態で持ってきたんだから、剣向けないで!!

 うーん、毎度こんなのは面倒だから、狩った魔物入れられるようなアイテム袋が欲しいなぁ……。

この物語はファンタジーです。

実在する寄生虫除去の毒とは一切関係ありません。

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