005 肉
「いだだだだだっ!!」
急激な頭痛が私を襲った。
『レベルアップしました』『レベルアップしました』『レベルアップしました』『レベルアップしました』『レベルアップしました』『レベルアップしました』『レベルアップしました』『レベルアップしました』『レベルアップしました』『レベルアップしました』……
亀を倒すの手伝ったからレベルアップしたの!?
好都合だけど、たかが亀でなんでこんなに急激なレベルアップを……でかかったから、それなりに強い亀判定されてたのかな?
私が悶絶するのを他所に、お爺さんは生のまま亀を食べていた。
お腹壊しても知らんぞ……。
数分後、なんとか頭痛は収まったけど、亀の頭部はもう骨しか残ってなかった。
「ちょっとお爺さん!私にも分けてくれるって言ったじゃんっ!!」
「まだ頭しか食っとらんわぃ。食い足りないから、さっきの要領で手足も引きずり出してくれ」
まだ食う気なの?
さっきの頭だけでもかなり大きかったのに……。
渋々手足も毒針の毒で膨張させて引きずり出すと、それをお爺さんが戦斧で切断した。
私は前足を一本だけ貰い、残りは全部お爺さんが生で食べた。
マジか……頭と手足、全部合わせたらお爺さんの体格より大きかったのに、どこに入ってるの?胃袋四次元か……。
私はとてもじゃないが生でなんて食べれないので、焼いて食べる事にする。
なんとさっきのレベルアップで最初は液体の毒しか出せなかったのが、気体や固体の毒も出せるようになった。嬉しい!!
気体が出せるってことは、酸素も出せるって事じゃん!
酸素は毒じゃない?いやいや、体の状態を変化させるものは全部毒でしょ。(個人の見解です)
そして更に、出した毒を操作できるようにもなった。
針のまわりに酸素(毒)を出し、それを操作して急激に圧縮すると、勢いよく燃え上がった。
ファイアーピストンの応用だけど、スキルという不思議パワーなら空中でそのまま着火できちゃうのだ。
後は炎にちょうどいい感じで酸素をくべていけばいいだけ。
炎の維持調整が難しいけど、イメージでなんとか補う。
「娘っ子、おんし魔法使いだったのか」
ジュウジュウと音を立てて肉を焼いていると、お爺さんが近づいてきた。
何で涎垂らしてんの?あげないよ?
「めっちゃいい臭いじゃのう……ちょっとだけ」
「ダメ」
「ぐぬぅ……」
いい焼き加減になったので亀の足にかぶりつく。
「うんまっ!!」
めっちゃ美味!!
塩気も無い素焼きなのに味がちゃんとあるって不思議。
あっという間に足一本食べちゃったよ……。
お腹すいてたのもあるけど、何かレベルアップしたからか、いくらでも食べれた。
「ええなぁ……儂のも焼いて貰えば良かったわい。……ん、そうじゃ!まだしっぽがあるじゃろ!」
ああ、そういえば亀のしっぽがまだ甲羅の中だった。
「しっぽ半分こ」
「えぇ……、娘っ子ちっさいのにまだ食うのか?」
お腹はそれなりに膨れたんだけど、なんかまだ食べれる気がするのよね。
って言うか、美味しいものは別腹だし、いくらでも食べれる。私の別腹こそが四次元なのだよ。
ということで、しっぽも引きずり出して焼いて食べた。
お爺さんのもついでに焼いてあげた。
「うまうまっ!」
「おぉ、やっぱ焼いた方が美味いのぅ!」
普通、野生生物の肉とか生で食べないと思うの……。
いや、冒険者とかは食べるのかな?
父と母は冒険者だったけど、いつも調理して食べてたしなぁ。
やっぱりこのお爺さんが特別なんだと思う。
「さて、腹も膨れたし帰り道を探すとするかのぅ」
お爺さんがお腹をさすりながら聞き捨てならない事を言った。
「お爺さん、迷子なの?」
「……ま、迷子ちゃうしっ!」
なんで拗ねたみたいな口調になってんのよ……。
でも、食を共にした同士を見捨てていく訳にもいかないよね。
って言うか私もここがどの辺なのか分からないけど。
亀の魔物がいるぐらいだから、ここで野宿は避けたいなぁ。
「夜になる前に、この岩場は抜けておきたいんだけど……」
「何言っとるんじゃ?ここはダンジョンだから夜になんてならんぞ」
へ……?ダンジョン?
「『琥珀ダンジョン』の地下100階じゃ」
地下100階?何それ?
この物語はファンタジーです。
実在する酸素とは一切関係ありません。