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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第二章『冒険者編』
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049 フラグ

 程なくして、ジっちゃんとレイアさんは旅立って行った。

 何やら教会が不穏な動きをしているので、王国内のダンジョンを回っているらしい。

 教会の本部はこの王国には無くて、東の小国群を抜けた先にある教皇国にあるんだけど、そこも教皇派と聖女派があって、後継者問題で揉めているんだとか。

 聖女も複数人いて、そのうちの一人が王国の学院に通う事になり、それに呼応するかのように王国内の教会が不穏な動きを始めたらしい。

 学院なら王都にでも行かない限り会う事もないだろうから、私には関係ないけど。

 ……何かのフラグ立ってないよね?面倒そうだから嫌だよ?


 ひとまず冒険者登録を終えた私は、ギルマスに宿を取ってもらって、そこを拠点に活動する事にした。

 ギルマスが伯爵と侯爵の情報を集めてくれるので、貴族の動向が分かるまで無闇に動かないつもりだ。


 一晩明けて、早朝から冒険者ギルドに向かうと、意外にも朝から混雑していた。

 冒険者って、昼間から酒飲んでるニートだけじゃなくて、ちゃんと朝から仕事貰いに来る人もいるみたいだ。


「ひっ!」

「げっ!?」

「うわっ!」


 私が中に入ると、何人かが驚きの声を漏らし、順番を譲ってくれた。

 別に脅してないんだけど?

 いや、親切な人達なんだね、きっと。

 そういえば、昨日は登録だけで終わってしまったので、冒険者ギルドの説明とか聞いてないや。

 受付のお姉さんに仕事の受け方とか聞いとこっと。


「はい、おはようござ……ひいぃっ!?」


 昨日のお姉さんのとこに来たら、めっちゃ顔引き攣ってるし。


「昨日、仕事の受け方とか聞かなかったんだけど、説明してもらってもいい?」

「は……はい。ええと、仕事はあの掲示板に張り出されている依頼票を持ってきてもらい、受付で受領したら受注完了となります。依頼によっては、完了時に依頼者の印を貰う必要があったりするので、受注時にその辺は確認しておいてください。また、討伐等の常時依頼は受付を通す必要はなく、魔物を倒したら討伐証明部位を買取所で提出していただければそれで完了となります」

「ふむふむ……よく分からんから、その都度聞くようにするね」

「そ、そうですか……。あ、あと、冒険者同士の揉め事は本来自己責任なんですが、アイナ様だけは特例ですぐにギルマスを呼びますので、なるべく手は出さないでください」

「ほーい」


 私としても絡まれなければ何もする気はないよ。

 しかし、フラグというのは恐ろしいもので、いつの間にか立ってしまうんだよね。

 後ろから私に近づくクリティカルポイントの塊は、明らかに悪意持ってるんですけど?


「なんだぁ?こんなチビが冒険者とか、舐めてんのかぁ?」


 昨日は見なかった顔だなぁ。

 赤いモヒカンと鼻ピアスという、いかにもなチンピラ顔の青年だ。

 このチンピラみたいな冒険者が絡んで来た瞬間に、何人かギルドから逃げ出したけど、たぶんあれは昨日の惨劇に遭った人達だろうね。

 翌々周りを見たら、時間帯が違うせいか、昨日居合わせた冒険者の数も今は少ない。

 私の事を知らないから誰も止めないのかな?


「ギっ、ギルマスううううううぅっ!!」


 受付のお姉さんが2Fのギルドマスター室に向かって走って行った。

 『冒険者ギルドで絡まれる』の定番は昨日やったんだけど、今日もやっていいの?

 あ、昨日のは勘違いだったから、実際は今日が初絡みって事になるのか。

 じゃあ、記念すべき第一回は、様式美として『ざまぁ』してあげないとだね。


「お前みたいなチビに冒険者が務まる訳ねぇだろ。家に帰って、かあちゃんの乳でも飲んでな!ヒャハハハ!」


 モヒカンならそこは「ヒャッハー!」でしょうが。

 しかし、彼の発言によって、私は重要な事に気が付いた……。

 そういえば、お母さんの胸、結構大きかった!

 つまり、今世の私は遺伝子的にも期待が持てるということだっ!!

 何という事だろう……前世のトラウマが今まさに払拭されたよ。

 ありがとうモヒカン、お礼に特大の毒を盛ってあげよう——と思ったが、遅かった。


「こんのバカチンがあああああぁっ!!」

「ぐぼあっ!」


 ギルマスの右ストレートが強かにモヒカンの顎を打ち抜いた。

 モヒカンは空中で華麗に一回転して、そのまま地面に落下した。


「大丈夫ですか、主……アイナ様。こいつには徹底的に教育しときますんで」

「あぁ……うん。ありがとうギルマス」


 主様って呼ばれると色々面倒な事になると思い、ギルマスには名前で呼ぶように言ったんだけど……。


「おい、ギルマスがあの少女に様付けしてたぞ」

「見た目は村娘みたいだが、貴族のお嬢様のお忍びなんじゃないか?」

「そうかも知れんな。変なちょっかい出さないように連絡網回しとけ」


 おかしな誤解が生まれてしまってるんですけどぉ!

 私、普通の村娘だからね?

 まぁ、一応貴族の血縁ではあるらしいけど。


 それにしても、ここは『一見弱そうな冒険者が、絡まれたけどざまぁする』のフラグだったんじゃないの?

 フラグさん、ちゃんと仕事しなきゃダメだよ。

 ……いや、ギルマスの仕事が早すぎたのか。

 若干の鬱憤を溜めてしまったので、何かストレス発散できる強力な魔物の討伐系依頼でも探す事にする。


 私が掲示板に張られている依頼票を眺めていると、一人の青年が慌てて冒険者ギルドに駆け込んで来た。

 大量の魔物でも出たのかな?


「おい、聞いたか!?聖女様がこの街に来てるんだってよっ!!」


 ……いやフラグさん、そっちのは回収しなくていいんですけどぉ?

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