047 魔力解放
跪き、呆然と地面を見つめ続けるレイアさん。
「『閃紅』が躱された……。やはり私の魔力量が少ないと言う事なのか……」
レイアさんはブツブツ何か言ってるけど、戦闘はもう終わったので、私は獣化の毒をキャンセルして元に戻る。
前回の失敗を糧に、服は毒で生成したものを着てるから、獣化による身長の伸縮にも対応出来ている。
ただし10分で消えるので、消える直前に服の下に新しい服を生成しておく必要があるけど、まぁ慣れたし。
でも、攻撃受けて気絶したら10分後に全裸になっちゃうのは、早めに対策しとこうと思う。
巨大化しても勝てない敵に襲われたら、乙女の危機だからね。
「アイナ、今の獣化はヴァンパイアの能力か?なんか獣人みたいじゃったが……」
「何かね、尻尾生えてきちゃって獣人になったんだよね。だから正確には私は、獣人とヴァンパイアのハイブリッドなのよ」
「初めて聞いたぞ、そんなの……」
人には尾骶骨というのが有るから、尻尾が生えて来ても不思議じゃないよね?
なんか濡れてると思ったら、腕から血がドクドクと流れ続けてた。
最後に攻撃受けちゃったんだった……。
毒針でポーション(毒)を出して掛けると一瞬で傷は塞がり、腕を伝って流れていた血も消滅した。
「回復魔法……!?」
「い、一瞬で治癒したぞ……」
「聖女様……?」
少年達3人組はまるで化物でも見たかのように目を見開いて、何かを呟いている。
ギルドマスターは顎が外れそうな程口を開けて唖然としているし、私に絡んで来たおっさんは白目剥いて気絶している。
うーん、どう収拾つけたらいいの?
とりあえず、ずっと地面と会話している対戦相手のレイアさんを復活させよう。
何か強い刺激を与えたら戻ってくるかな……?
あっ、そういえば魔力が伸び悩んでるとか言ってたっけ。
それなら、いい毒があるじゃん!
「ぷすっとな」
「あばばばばばばばば、ぷひゅー……」
『魔力を解放する毒』をお尻に刺してあげた。
……あれ?何か突っ伏したまま、ビクンビクン痙攣し続けてるんだけど……まさか、才能無くてアホになった!?
「なっ……何すんのよおおおおぉっ!?」
暫くしたら、ちゃんと復活した。アホになってなくて良かったね。
魔力測定機を生成してレイアさんの魔力を測定してみると、なんと45万まで増えていた。
ミミィの時は1万しか増えなかったのに、何で?個人差?それとも、人とヴァンパイアの差?
うーん、もっと検証しないと分からないなぁ……。
どこかに被検体いないかな?
「……何故だ?魔力が溢れて来ている……」
「む?確かに、レイアの魔力が増えておるのぉ……アイナ、何をしたんじゃ?」
「えっと、私のスキルで増やしてあげたの」
「「はぁっ!?」」
さすが師弟、息ぴったりでハモったね。
っていうか、そんな事どうでもいいのよ。
「それで、私は冒険者として登録できますか?」
「そ……」
「そ?」
「そんなのどうでもいいでしょうっ!!」
いや、良くないんですけどぉー?
「何なの、君はっ!?ヴァンパイアだったり、闇王と友達だったり、猿になったり、魔力増やしたりイイイイィっ!!」
レイアさんの方が吸血鬼っぽくなっちゃってますよ?
人間やめないでね?
「アイナ、今のはあまり人前でやらん方がええぞ。良くない輩に狙われるかも知れんからな。もっとも、レイアに勝てる程の強さなら心配要らんのかも知れんが……」
そういえば師匠にも言われたっけ……。
でも、色々試してみてからじゃないと自分に使うの怖いし、これからも被検体を見つけ次第使うけどね。
……と、今まで発狂気味になり肩で息をしていたレイアさんが、急に真面目な雰囲気になって私の前へ来ると……跪いた。
「取り乱してしまい、申し訳ありません。そして、今まで悩んでいた魔力が伸びない問題を解決していただき、ありがとうございました。私は貴方に忠誠を誓います。これからは、貴方の剣となって生涯を捧げたいと思います」
「待て待て待ていっ!!お前は儂の後を継いで貰わんといかんのじゃぞっ!魔力が増えたんじゃから、あいつらもお前の事を認めてくれる筈じゃ!」
「クソジジイの後なんぞ、『疾風』か『迅雷』にでも頼めばいいでしょうが」
「あいつらは他の者の後継者じゃっ!!」
何やら、後継者問題が勃発したみたい……。
どうでもいいけど、私の冒険者登録はぁ?
この物語はファンタジーです。
実在するポーション及び魔力を解放する毒とは一切関係ありません。




