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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第二章『冒険者編』
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046 獣化

 先日巨大化した際、何故か私は白銀色の毛皮に覆われてしまった。

 巨大化した理由も謎だけど、体毛が異常なほど生えて来たのも謎だった。

 そこで師匠の場合を考えてみると、師匠は人、ライオン、巨大ライオンと3つのステップを踏んでパワーアップしていた。

 私が巨大化した時は、そのうちのライオンに相当する段階を飛ばしてしまっているのだ。

 ファンタジー毒を使えばたぶん巨大化も出来るんだけど、この地下で巨大化する訳にはいかないので、今はこのライオンの段階こそが重要になる。

 仮に『獣化』と呼ぶことにすると、巨大にならなくてもこの獣化するだけでもかなり強くなれるんじゃないだろうか?

 今のままじゃ決定打に欠けるので、レイアさんに勝つには何らかのきっかけが必要だと思う。

 見た目が変わってしまう事で色々言われそうな気はするけど……。

 前回の巨大化の時の形状や尻尾の形から、たぶん猿系の獣になるんだと思うけど、異形と呼ばれる程じゃないだろうし、いいよね?


 私はバックステップで距離を取る。


「どうした?これで終わりか?」


 若干挑発気味にレイアさんが聞いてくるけど、終わりどころかここから快進撃が始まるんだよ。

 何せ私はあと2段階変身を残してるんだから。

 耳の上辺りに、髪飾りに偽装しておいた精度の高い針を、右手へと持ち替えた。

 石から削り出した針だとイメージを完全に再現出来ない可能性があるので、自分に打つ毒は悪影響が出ないように、なるべく精度の高い針を使うようにしている。

 私は『獣化する為のファンタジー毒』を生成して、クリティカルポイントのある自分の右腕に打ち込んだ。


「ぐっ……ぐがあああああっ!!」

「……な、何だっ!?」


 私の体が白銀色の体毛に覆われ、大きさも前回巨大化した時程ではないが、身長2メートル程にまで大きくなっている。

 ちなみに元の私の身長は同年代の中でもやや小柄で、たぶん120cm無いぐらい。

 別に身長なんてどうでもいいのよ、胸さえ大きくなれば……なればね……。

 一瞬前世のトラウマが蘇った気がしたが、気のせい気のせい。

 獣化した私は普通に二足歩行できるし、手の形も人のそれに近いので、明らかに猿系の獣になったと思われる。

 なんか獣化したら尻尾を腰に巻き付けておくのが窮屈な感じがしたので、尻尾も後ろへ伸ばしてみた。


「け、獣になった……!?」

「な、何だあれ……?」

「魔物……?」


 視力が回復したらしいギャラリーがワイワイ言ってるけど、獣化を見られたのは拙かったかなぁ?

 半分ヴァンパイアである事も知られちゃってるし、後で口止めしとくか。

 いや、万が一を考えて記憶を飛ばす毒を盛る事にしよう。そうしよう。


「「「あれ?何か悪寒が……」」」


 さてさて、ギャラリーに構ってる余裕は無いのよ。

 半身に構えて右足を引き、その足に気を集中させる。

 音を置き去りにするかのように一瞬で加速した私は、レイアさんの間合いに入ると同時に右拳を突き出した。

 今までの攻撃ではその場から動かずに捌いていたレイアさんだったが、今度はさすがに剣で防ぎきれなかったために、威力を殺そうと横方向へ飛んだ。

 当然の如く私は追撃を掛け、連続で拳を繰り出す。


「くっ……!!」


 何発かヒットしたけど、あまりダメージは与えられた気がしない。

 レイアさん何者よ?百戦錬磨過ぎない?

 明らかにドラゴンより強いし、戦い慣れているようで、一撃当たれば吹き飛ぶ筈の私の攻撃にも怯まず対処している。

 まぁアースドラゴンを一瞬で倒すジっちゃんの弟子だから、それなりに強いんだろうとは思ってたけど。

 魔力が伸び悩んでるって言ってたけど、これで魔力も伸びたら魔王すら倒せるんじゃないかな?

 魔王とか会った事無いけどね……。


 でも、今は獣化した事で私に分があるようだ。

 徐々に私の拳がレイアさんを捉え始める。

 苦しそうに眉を顰めるレイアさん——だが、まだ眼は諦めていないようだ。

 窮鼠猫を噛むなんてさせるつもりはないから、最後まで油断しないよ。

 レイアさんが防御に徹してしまい、暫くそのまま攻防は膠着していたが、いつの間にかレイアさんの剣に魔力が集中していた。

 最近はクリティカルポイントで相手の身体を視る癖がついてたから、武器に纏わせた魔力に気付くのが一瞬遅れてしまった。


「『閃紅』っ!!」


 獣化した私の動体視力でも、それは全く目で追えなかった。

 レイアさんの放った刃は完全に光の線と化していた。

 辛うじて、クリティカルポイントで腕の動きを予測出来ていた事と、獣化した事で身体能力が大幅に向上したいた事が重なったおかげで、身動ぎして急所だけは避けれた。

 しかし、切り裂かれた右肩から、大量の血飛沫が舞う。

 今の攻撃、当たってたら命に関わってない?

 躱されると思っていなかったのか、勢い余って一瞬レイアさんの体が流れ、体勢が崩れる。

 その隙は見逃さないっ!

 躱した力を利用して体を回転させ、そのまま拳に力を乗せて、レイアさんの顔面を捉えた——かに見えた。


「そこまでじゃあっ!!」


 私の腕はジっちゃんに掴まれて止められていた。

 いや、ジっちゃん、致命傷になりそうなレイアさんの『閃紅』の前に止めてよ……。

この物語はファンタジーです。

実在する獣化する為のファンタジー毒とは一切関係ありません。

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