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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第二章『冒険者編』
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045 ランクF

「ちょっと待て、その子のスキルはランクFだぞ。ランクAの閃紅姫の相手なんて無理だ!」


 絡んで来たおっさんが何故か私を庇ってくれてる。

 やっぱりホントは良い人だったのかな?


「問題無い。本質を視るだけだと言っただろう?」


 問題有り過ぎだよ。私剣なんて使った事無いし……。


「すまんなヒナ——じゃなかったか、アイナよ。レイアは元々は真面目で面倒見がいいんじゃが、最近魔力が伸び悩んでててのぅ。儂の後を継ぐのに納得せん者が出て来て、情緒不安定気味なんじゃ」

「私の情緒が不安定なのはクソジジイが私に迷惑掛けてるせいだが?」


 ギロリと余計な事を言うジっちゃんを睨んだレイアさん、怖っ!!

 魔力量15万ぐらいあったけど、伸び悩んでるんだ……。

 まぁミミィは魔力量 53万だったから、私もそれぐらいは欲しいなって思うし。

 『魔力を解放する毒』を注入してあげたら見逃してくれないかな?


「問答無用だ。地下の訓練場に行くぞ」


 問答無用らしいので無理みたいです……。

 さすが脳みそ筋肉さん、拳や剣でしか語れないようだ。


 私達は全員で冒険者ギルドの地下にある訓練場へと降りて来た。

 あれ?何でみんな付いて来てるんだろ?

 私とレイアさんだけで良くない?


「さあ、武器を取れ」


 訓練場の入り口付近に、色々な武器が入った籠が置いてあった。

 レイアさんはそこから剣を一本抜く。

 入ってるのは主に剣だけど、槍や弓なんかもあるね。

 針が無い……当たり前だけど。

 レイピアにしてみようかと思ったけど、訓練用だから先端が潰してあるので針として使えないし。


「えっと、スキルは使ってもいいんですか?」

「構わないが、ランクFのスキルで戦うつもりか?」

「ここにある武器は使った事がないし、私のスキルと相性が悪いので、スキルだけでやります」

「まぁいい。勝ち負けは気にせずに、君の気持ちをぶつけて来なさい」


 わぉ、体育会系の教師が言いそうな事を……。

 私が絶対に勝てないと思ってるな?

 何かカチーンと来たので、是非とも勝ちに行っちゃうもんね。

 スキル使ってもいいって言った事を後悔させてやる。


「じゃあ儂が審判を務めよう。危ないと思ったら止めるからの」


 ジっちゃんが審判をやってくれるようだけど、ジっちゃんも私が勝てないと思ってるでしょ?

 私はレイアさんの正面まで歩き、拳を構えて向き合った。

 もちろん指の間にはフィンガーパームで隠し持った針を忍ばせている。


「では、始めっ!」


 ジっちゃんの掛け声と同時に私は地面を蹴り、一足飛びでレイアさんとの距離を詰める。

 レイアさんはその場から一歩も動かず、剣を構える事すらしていない。

 勢いのまま拳を突き出す——と見せかけて、針の先に聖属性の光を生成した。


「○ルスっ!!」

「「「「「ぎゃああああっ!!目が!目がああああぁっ!!」」」」」


 しかし、ダメージを受けているのは観客として来ていたギルマスと少年達とおっさんだけで、ジっちゃんとレイアさんは何とも無いみたいだ。

 ミミィにはめっちゃ効いたのに、聖属性に耐性でもあるのかな?

 徐に、レイアさんは剣を軽く横に振って私に斬りかかる。


「おっとぉ!」


 寸でのところで後ろにステップして、何とか躱せた。

 全然本気じゃないみたいだけど、かなり速い。


 私は足に気を集中して、高く飛び上がった。

 レイアさん、飛び上がったらただの的だと思ってる顔だね。

 私は足場になる透明な物体を生成し、それを蹴って空中で方向転換。

 更に移動した先でも同様に方向転換して、高速移動で後ろへ回り込む。

 一瞬で背後に回られたレイアさんは、さすがに焦ったか体を捻り、後ろの私へ向けて剣を突き出す。

 残念、それは質量を持った残像(毒)だ。

 パシャっという音をたてて、私の形をした毒が弾け飛んだ。

 そして、それがそのままレイアさんの足に纏わり付いて、動きを封じるように凍る。

 実はドラゴンを倒してから、毒の温度調整が可能になったのだ。

 但し、絶対零度とかマグマとかやろうとすると、20万ある私の魔力でも半分ぐらい持って行かれるからやりすぎは注意しないとだけど。


「ふむ、まぁランクFならこの程度だろうな」


 あら?またまたカチーンと来ちゃったよ?

 反物質でも生成してやろうかしら?


「ふむふむ、これぐらいだと手加減しすぎでしたかね?」


 レイアさんの眉がピクリと動いた。

 そして力まかせに、足を凍らせていた私の毒を蹴散らした。


「手加減など不要だ。本気で掛かって来なさい」


 そこまで言うなら本気で行っちゃうよ?

 私は手が痛くならないように白銀鉱でグローブを生成して、気を全開に練り込んでから体中に巡らせた。

 レイアさんのクリティカルポイントの動きが僅かに左に寄っているのを確認して、逆側の右下から拳を打ち込む。

 しかし難なく剣で弾かれ、やや体勢を崩せた程度にしかならなかった。

 次に足のクリティカルポイントへ向けて蹴りを放つも、それも剣で弾かれる。

 動きは見えてるけど、隙が無い。

 このレベルの相手だと、ちゃんと武術を修めてないと全く攻撃が通らないね。

 でも、私はレイアさんの眼の動きも捉えていた。

 今度は、私は気の流路と魔力の流路の流れを、少しずらして攻撃する。


「ちっ……!?」


 初めてレイアさんの体を私の拳が掠めた。

 やっぱり、思った通りっ!

 レイアさんは気と魔力の動きを視て、それで私の動きを予測してたんだ。

 でも、私は人とヴァンパイアのハイブリッドだから、気でも魔力でもどっちでも動けるんだよ。

 人として気で攻撃をしかけると思わせておいて、ヴァンパイアとして魔力で動いて攻撃する事で、タイミングをずらせたのだ。

 そのまま変則的リズムで、連続攻撃を次々に繰り出す。

 それでもレイアさんはさすが達人だけあって、なかなか決定打までは届かない。


「不可思議な動きだが、これで私を倒せるとは思わない事だ」

「思ってないけど、さすがにイライラしてきたよ」

「こらこらお前達、あんまりエキサイトするんじゃない」


 ジっちゃん、申し訳ないけどこれはもう止まらないよ。

 奥の手いっちゃうどー!!

この物語はファンタジーです。

実在する質量を持った残像とは一切関係ありません。

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