043 真実の宝玉
冒険者ギルドの2Fにあるギルドマスター室に連行された。
室内にはスキンヘッドでサングラスの、どう見ても堅気じゃない男が執務机に座っていた。
あれがギルドマスターかな?
このギルドって何でこんなに強面率高いの?
絡まれたって勘違いした私は悪くないと確信した。
「さて、ヒナ。全部話してもらうぞぃ」
「あーうん、まぁいいけど……」
ちなみに此処に連れてこられたのは私だけではない。
私が助けた少年達3人組、私に絡んで来たおっさん、あとは何故か紅髪の女性もである。
紅髪の女性は相変わらず私を睨んでいる……。
ミミィではないという誤解は解けたけど、ギルドカード偽造がバレてしまったからだ。
「この子はクソジジイの知り合いなのか?」
「まぁそうなんじゃが……なんでずっと儂の事クソジジイって呼ぶんじゃ、レイア?」
「散々迷惑掛けられたし、今後一年間はクソジジイと呼ぶ事にしたから」
「儂、師匠なのに……」
紅髪の女性はレイアさんって言うのか。
しかもジっちゃんはレイアさんの師匠らしい。
とりあえず今はそんな事はどうでも良くて、どうやってこの場を切り抜けるかよね。
ふいにレイアさんがこっちへ近づいて来た。
「『真実の宝玉』を使います」
「おいおい、そこまでせんでも……たかが冒険者の揉め事じゃろ?」
レイアさんが腰の袋から、何やら水晶玉みたいな物を取り出した。
明らかに袋より大きいものが出て来たんだけど、あれってもしかしてファンタジー大定番のアイテム袋!?
めっちゃ欲すいっ!!
「では質問する。君の名前は?」
どこぞの映画タイトルですか?
「えっと、ヒナです……」
水晶玉がなんか淡い赤い光を発した。
「嘘をつくな。本当の名前を言いなさい」
「なんじゃヒナと言うのは偽名だったのか」
あれ?なんでバレたし?……って、どう考えてもその水晶玉よね。
「この『真実の宝玉』の前で嘘をつけば赤く光る。正直に答えなさい。君は『闇王ミミィ・ヴァンプ・モッサリ』か?」
「いいえ」
今度は光らなかったけど、レイアさんの眉間の皺は深まってしまった。
中二病の冠詞『闇王』は、後々黒歴史と化すから付けないであげて。
「ミミィはもっと髪の色も白いし、赤目じゃぞ。顔立ちも全然違うからのぅ。そういえば、レイアは会った事無かったか」
ジっちゃんミミィの事知ってるんだ。
「……質問を変えよう。君は『闇王』の眷属か?」
「いいえ」
当然光らない。
だって眷属化は回避したもんねー。
レイアさんのこめかみに青筋が……私悪くないよ?
「じゃあ、君は何なんだっ!?髪の色を変えて偽装するのはヴァンパイアの技だろう!?」
「あ、はい。半分ヴァンパイアです……」
もちろん光らない。
「……えっ?」
「お前さん、ヴァンパイアだったのか?」
「あっ、前にジっちゃんに会った時は人間だったよ?でもミミィって言うヴァンパイアに噛まれて眷属化しそうになった時に、スキルで抵抗したら半分ヴァンパイアになったの」
レイアさんは頭を抱えた。
ジっちゃんはちょっと呆れている。
ギルドマスターは不動……なんだろこの人?全然会話に入って来ないけど、何の為にいるんだろう?
少年達3人組と絡んで来たおっさんは口をあんぐりと開けて、意識が飛んでるみたいだ。
「……まぁ、それは置いておくとしよう」
置いておくんだ……結構重要な事だと思うんだけど、思考放棄した?
「ギルドカードを偽造したと言うのは本当か?」
「……はい」
当然光らないよねー。
「ギルドカードの偽造は犯罪だ。判っているか?」
「一応理由があったんですけど、言い訳してもいいですか?」
「……どんな理由だ?」
「転移の罠に嵌まってダンジョンの中に転移してしまったので、ギルドカードを持ってない状態でダンジョンに入ってしまいました。それで、出る時に持ってないと怪しまれると思って、慌ててスキルで作りました」
うん、光らないって知ってた。
レイアさん困惑顔。
「素直にその場で事情を話せなかったのか?」
「貴族に目をつけられて追われてたので、身元がバレないようにする必要があったんです。ジっちゃんに偽名を名乗ったのもそれで……」
「マジか……」
マジである事は水晶玉が示してくれてます。
「しかしギルドカード偽造はいかんな」
と、ここで突然ギルドマスターが口を開いた。
置物じゃなかったようだ。
「君はフライシュ伯爵家から逃げた令嬢アイナだな」
うわっ、さすがギルドマスター。私の素性がバレてるよ。
もう誤魔化しきれないか……。
そもそもあの水晶玉が有る限り嘘は付けないし、黙秘したら解放してもらえないだろうからなぁ。
「君の事はライエル神官から、詳細を聞いている」
ライエル神官……?あっ、あの私を逃がしてくれた神官さんかな?
「スキルについてはジオ様からも聞いた……」
あれ?ギルドマスター、何で泣いてるの?
「お願いだっ!!私の毛根も甦らせてくれえええええええええぇっ!!」
よく分からないけど、ギルドマスターに泣きながら懇願されちゃったよ……。
この物語はファンタジーです。
実在する映画タイトルとは一切関係ありません。




