034 魔力測定機
洋館を出て、歩きながら新しい毒を生成してみた。
一つは魔力量を測定出来る半透明のガラス。
このガラスを覗き込むと、そこに映った人物の魔力量を数字で表してくれる。
ファンタジー毒は私のイメージし切れない部分を補う為に多量の魔力を消費するけど、ヴァンパイアロードになった私の魔力ならかなりぶっ飛んだものでも作れちゃう。
針一本につき一種類の毒しか生成できないから、パソコンみたいな複数の素材で出来たものは無理だけど、このガラスは魔力量に応じた数値をガラスの屈折率を変化させて表示するだけなので生成できるのだ。
そして、そのガラスを片耳側に掛けて固定するために固定具も生成して、ガラスと組み合わせる。
これで魔力測定機が完成した。
ちょっとミミィの魔力を見てみると……
「うん、53万だ」
基準値を指定するためにミミィが言ってた53万を基準にしてあるので、ピッタリの数値で表示される。
さて、これで私の現在の魔力を測ろうと思ったんだけど……自分じゃ自分を視れないじゃん。
「ねぇ、ミミィ。これで私の魔力測定してみて」
「ほほぅ、なんか面白そうな魔導具じゃな」
そっか、端から見たら魔導具に見えるのか。
何かに使えるかな、これ?
「どれどれ。魔力量5か……ゴミじゃな」
何でよっ!?
ヴァンパイアロードになってめっちゃ魔力増えた気がしてたけど、私の魔力量って5なの?
つまりミミィの10万分の1ってこと?
「あ、違った。お前の頭にとまってる虫の魔力量じゃ、これ」
「虫嫌ああああああぁっ!!」
必死に虫を追い払う私を見て、ミミィはケラケラ笑っていた。
「ちゃんとやってよ……」
「うむ、魔力量は……20万じゃ」
20万か……ミミィの半分以下なのね。
ミミィにはもう負けないだろうと思ってたけど、まだ全然届いてないじゃん。
もっとも、私には魔力意外に気とか獣王の腕輪があるから、必ずしも魔力量の比較による勝敗にはならないと思うけど。
考え込んでたら、ミミィが小瓶を取り出して血を飲んでいた。
「あれ?それってダメージ受けた時に飲む用のやつじゃなかった?今飲んじゃっていいの?」
「ダメージなんて自然治癒で殆ど回復するから必要無い。それに、近くに血があると落ち着かないから、いつもすぐ飲んでしまうんじゃ」
ヴァンパイアにそんな生態あるんだ……。
私はハイブリッドだからか、血が近くにあってもあんまり変わらないけど?
「うーん、なんかお前が生成してくれる血を飲んだからか、普通の血が物足りないな……」
あー分かるわー。
外食した後って普通の食事がちょっと物足りなくなっちゃうよね。
特に私が生成した血は旨味成分マシマシだから、よっぽど栄養豊富な血じゃないと満足できないかも。
「なぁ、ちょっとでいいからあの血を出して……ん?んむっ……!?」
ん?なんかミミィが小刻みに震えてる?
「どしたの?大丈夫?」
「ぐっ……がああああああああああああああぁっ!!」
「ええっ!?」
なんか叫びだしたと思ったら、全身に赤いオーラみたいなの纏い始めた!?
しかも何か徐々に体が大きくなってる気が……?
あっという間にミミィの身長は推定5m程となり、周りの針葉樹の高さを追い越した。
そういえば、師匠もライオンの時に巨大化してたっけ……。
この世界の物理法則ってどうなってんのよ?
前世の世界では巨大化するには元々その仕組みを内包している必要があった。
でもヴァンパイアにそんな機構があるとは思えない。
違いは——この世界には魔力がある事。
たぶん、細胞を構成する分子間構造を魔力が補完して、巨大化しても構造が崩れない仕組みになってるのかも?
……って、そんな事考えてる場合じゃなかった。
ミミィの目は白目まで赤く染まって、完全に我を失っているようだ。
赤いオーラが風を切るような音を出し、木々をなぎ倒して周囲に被害が出始めた。
どう見ても暴走してる……。
「絶対あのロバールとか言う奴が渡した小瓶の血が原因だ」
犯人探しよりも、今はミミィの暴走を沈静化しないとだけど……。
巨大化した分、強くなってたら勝てないよ。
念のため魔力測定機で計測してみる。
「嘘でしょ……魔力量100万っ!?」
巨大化しただけでそんなに急に増えるもんなの?
いや、さっきの私の考察が正しいなら、魔力が増えた事で巨大化したのかも。
ミミィの発する赤いオーラは更に勢いを増していて、どんどんパワーアップしてるように見える。
まだ二段階変身を残してたりしないでしょうね……?
この物語はファンタジーです。
実在する魔力測定機とは一切関係ありません。
 




