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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第一章『逃亡編』
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030 ヴァンパイアロード

「うああああああぁぁっ!!」


 噛まれた首筋が焼けるように熱い。

 毒針使いの私に毒を注入するなんて。


「むぅ、中々に美味い血よのう」

「ぐぅっ!」


 このままじゃヴァンパイアの眷属にされちゃう。

 毒針を首に食いついたままのモッサリに向け、目を瞑って聖属性っぽい光を生成する。

 瞬間、辺りを昼間のような明るさが支配した。


「ぎゃああああっ!!目が!目がああああぁっ!!」


 某大佐のように苦しむがいい。

 この技は○ルスと名付けよう。


 しかし、牙が首から抜けても焼けるような熱さは増すばかり。

 確か漫画では気で毒を抑え込んだりしてたっけ。


「はああっ!」


 体内の気を噛まれたところに集中するようにしてみた。

 かなり抑え込めてる気がするけど、このままじゃダメだ。

 ファンタジー中和毒を生成して、毒針を患部に突き刺す——が、何故かあまり効果が無いみたい。

 いや、効果が無いというよりは、効果を上回る威力で毒が上書きされてる感じ?


「ふふん。下手な薬なんて効かんぞ。なんと言っても妾はヴァンパイアの王、ヴァンパイアロードだからな。一度我に噛まれればもう眷属になるしか道はないのだ。もっとも、素質があれば精神を維持したままヴァンパイアになれるが……」


 暗き闇の王じゃなかったの?やっぱりそっちはただの設定だったか。

 それにしてもヴァンパイアの王って、ちょっとやばいかも?

 今は気で抑え込んでるけど、私の気は内気功だから体の中の気が尽きたらお終いだ。

 気を解放できる素質は有ったけど、ヴァンパイアになる素質なんてあるの?

 そう考えてる間にも、徐々に首の熱さが体中に広がっていく……。


「どうやら素質無しのようじゃのぅ。残念だが、我が眷属として生きてもらう事になるな」


 毒針スキルの熟練度が足りないのか、どうやってもヴァンパイアロードの毒の方が上回って中和出来ない。

 もうダメかも……?

 また転生出来るかな……?

 いや、眷属になっちゃったら転生すら出来ないじゃん!

 モッサリの配下になって、永遠にアンデッドとして中二病の相手するとか絶対に嫌!!


「お主、何かとっても失礼な事考えてるじゃろ?」


 スキルの熟練度が足りないんじゃない、私のイメージ力が足りてないんだ。

 イメージ……イメージ……あ、そっか。

 毒を中和するんじゃなくて私の体の方を毒に順応させればいいのか。

 フグは自分の毒では死なないらしい。

 それと同じように、私の体を作り替える——ヴァンパイアロードに!!

 首筋に打ち込む毒は、ファンタジー毒『首筋に残ったモッサリの遺伝子情報を元に私の体の遺伝子を組み換える毒』!

 名前長いけど、私の魔力全部持ってっていいから頑張って毒っ!


「あああああああああああああああっ!!」

「むっ!?何じゃ!?」


 元々色白だった肌はちょっと病的な程白くなっていく。

 爪の先が少し尖って来た。

 あんまり容姿の変更が無いようにイメージしたけど、モッサリの遺伝子情報に若干引っ張られてるかも?

 尻尾は腕輪の効果からか、そのまま残るみたいだ。

 私が注入した毒が全身に周り、モッサリが噛んだ部分が自然に治癒していく。

 回復力がもの凄く上がった気がする。

 さすがヴァンパイアロード。


「ふぅ……無事ヴァンパイアロードになれた」

「な、なんじゃとおおおおおおっ!?」


 おや?今まで見えなかったモッサリの流路が見える?

 ひょっとして魔力が視えるようになったのかな?

 アンデッドは気じゃなくて、魔力の流路を持ってるみたいだ。


「確かにヴァンパイアロードになれば妾の毒に対抗できるだろうが……、普通自らアンデッドになろうとするか?」

「意識が残ってれば何でもいいのよ。操られるよりはマシ!そもそも私、既に人から獣人になった経験有りだから、今更別の生き物になっても何とも思わないもんね」


 尻尾をフリフリしてみる。

 形はほぼ人族の時のままだし、ファンタジー世界じゃスライムに転生するような人もいるんだから、それを考えたら大した問題じゃないよ。

 特に不便も無いし。


「お主、変わっとるのぅ」


 中二病に言われると何か腹立つ……。


「で、どうするの?まだやる?私かなりパワーアップしたけど」


 ヴァンパイアロードになった事で魔力が激増して、さっきのファンタジー毒に使った分の魔力は一瞬にして回復した。

 更に肉体も強化された上に、アンデッドなのに気も問題無く使える。

 普通のヴァンパイアロードじゃなくて、人とアンデッドのハイブリッド的存在になってるみたいだ。

 これならモッサリにも負けないと思う。


「そうさのう……じゃあ洋館に招待しようか」

「いや、まだ諦めてなかったんかい!っていうか、私既にヴァンパイアになっちゃってるけど、洋館に行く意味ある?」

「ふふふ、妾の同族になったのだから、客としてもてなそう。自分の意思で動いているヴァンパイアはおっても、妾と同じヴァンパイアロードはおらんからな。仲間が出来て嬉しいぞ」

「そんな意識でいいんだ……」


 元人だからか、まだヴァンパイアの考え方には馴染めそうにないなぁ。

 とりま、敵対して来ないならいっか……。

 わざわざこっちから戦いを仕掛ける事もない。


「では行こうか親友ライバルよ」


 親友と書いてライバルって読むとか完全に中二病……って、勝手に親友にしないでよ!

この物語はファンタジーです。

実在するファンタジー毒とは一切関係ありません。

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