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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第五章『天空編』
257/258

257 解決

 急かす元魔導王に渋々ついて行こうとしたら、ライズさんから待ったがかかった。


「ま、待て!俺の両親についての説明がまだだぞ!」


 あぁ、後で説明するって言っちゃったんだっけ。


「今までの一連の流れを見てたら分かるでしょ。私が過去に行ったから助ける事が出来たんだよ」

「助けたなら、何故俺には教えなかったんだ!?」

「教えたら歴史が変わってしまうからね。私が過去に行く条件として月の破壊が最大の前提なんだけど、月を破壊するには霊気を取得している必要があったの。その為には勇者に覚醒したライズさんに心臓を貫かれないとだったんだよ。幼いライズさんは可哀想だったけど、貴方の両親を助ける為にはこの『時の循環』の中に居なければいけなかったし、たぶん私がライズさんに教えようとしても時の強制力で阻止されてたと思う。というか、そう思ってしまった事自体が既に時の強制力によるものだったのかもね」

「何だよそれ……。じゃあ俺は何の為に……」


 他に手段は無かったというか、無かったと時に思わされたんだろう。

 循環する歴史の中の決められた一幕を演じさせられたみたいだ。

 時という名の神には抗えないか……。


「過去は変えられない。だからそんな変えられないものにしがみつかないで、今生きている両親とこれから幸せに暮らす事を考えた方がいいよ」

「……君みたいな小娘に説教されるとはね」

「100年の旅路を終えた私の方が遙かに年上なんですけど?」


 私の見た目変わってないから、これからも初見の人には侮られるんだろうなぁ……。


 そして元天空王が私へ向かって頭を下げた。


「すまない。知らなかったとは言え、恩人に矛を向けていたとは。今後、誠心誠意償わせてもらう」

「別にいいよ。まぁ何か困ったら頼らせてもらうかもね」


 つきものが落ちたように柔和な顔立ちになった元天空王。

 麟器が継承された事で、麟器の発する闇を受けなくなったのかな?

 もし麟器が闇落ちの原因だったとするなら、今6つ持ってる私はかなりヤバい状態じゃないか。

 出来る事なら封印したい……。

 おいこら『天空王の小環』、頭締め付けるんじゃないっ!痛いからぁっ!




☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆




 元魔導王に転移で連れて来られたのは、人気の無い岩だらけの山脈のど真ん中。

 その一角にある魔法で隠された洞窟の奥にそれはあった。

 美しい女性が、青く光りを放つ水晶の中に閉じ込められている。

 リスイ姉をもう少し大人にしたような顔立ち。

 命の流れである流路が停止しているが、霊気を感知出来るようになった私には、まだそこに彼女の魂が有る事が分かる。


「これがエレノアさん?」

「あぁ、そうだ」


 同行して来たリスイ姉もその水晶の前に立つ。

 水晶の中の女性と見比べてみると、かなり似ていると思う。


「天珠華を出してくれ。そこに俺の魔力を注ぎ込む」

「1本しか無いから失敗しないでね」

「……成功率は2割といったところだ。はっきり言って魔法が複雑過ぎるからな」


 成功率2割しか無いの!?

 それならもっといっぱい天珠華を取ってくれば良かったよ。

 いや、そうしたら歴史を変えてしまった可能性もあるし……そもそも歴史の強制力で1本しか取れなかっただろうなぁ。

 でも、もうちょっと確率上げときたい。


「ぼっちさん、手伝ってもらえる?」

「そうだな、それが良さそうだ」


 元魔導王が魔法陣を構築しているところに、ぼっちさんが魔力を割り込ませる。


「おい、何をしている!?」

「少しでも成功率を上げる為にちょっと魔法陣を弄るよ」


 魔法陣の解析はぼっちさんにとってはお手の物。

 次々に魔法陣の各所を書き換えていく。


「なんだこれは……いや、この効率であればいける!」


 元魔導王もさすが魔法の専門家。

 ぼっちさんのやってる事を理解出来たようだね。

 天珠華を収納から取り出すと魔法陣の上に立ってクルクルと回り始める。

 そして神器『朱雀』の背中から出ていた炎に似たオーラを溢れさせた。

 それがエレノアさんの眠る水晶を覆って行くと、洞窟全体が赤い光に包まれていく。

 パリンとガラスが割れるような音が響き、水晶の中の女性が前のめりに倒れてくる。

 そして女性は眼を開けた瞬間——元魔導王に飛び膝蹴りを食らわせた。


「余計な事すんなって言っただろうがこのクソがあああああぁっ!!」

「ぐぼぉぁっ!?」


 ええええっ!?

 エレノアさんの膝を顔面に受けた元魔導王は吹き飛んで行き、洞窟の壁に激突した。

 どゆこと?


「エレノア姉さんは愛情表現がかなり過激なの。そして極度の照れ屋。助けてもらったお礼が言いたいけど、素直になれなくて飛び膝蹴りしちゃったんだと思う」

「リスイっ!余計な事言わないでっ!!」


 何かお姉さんの行動が予想外過ぎて唖然としてしまったよ。

 元魔導王は頑張って助けたのに、お礼として飛び膝蹴りが来るなんて、ちょっと可哀想な気がしてきた。


「おお、これこそエレノアだ。良かった……」


 と思ったのに、元魔導王はめっちゃ笑顔だった。

 エレノアさんの性格を全部知った上で愛しているなんて、ちょっと素敵な関係かも?

 あるいは超ド級のエ……いや皆まで言うまい。

 何にせよ成功して良かった。


 その後リスイ姉の説得により、エレノアさんは渋々ながらも素直に元魔導王にお礼を言ったのだとか。

 これでようやく私の長い旅路は終わった。

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