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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第五章『天空編』
250/258

250 蹂躙

 激戦を繰り返す勇者達と元魔王達。

 しかし天空王の纏う神器『朱雀』を倒すには至らない。

 アレを倒すには私の全てを出し切らなければならないだろう。

 但し、それに関して一点だけ不安要素がある。

 それを見透かしたかのように、白銀の人が私の元へ近づいて来た。


「その神器『白虎』は所有者の体がどれ程大きくなっても適合する。心配せずに全力でやるといい」


 色々吃驚びっくり要素が詰まった事を言いおった。

 この私が今纏っている神器の名称、『白虎』なんだ……。

 つまりあの天空王の纏う鎧と同シリーズという可能性が高い。

 他に『青龍』とか『玄武』も有りそう。

 体のサイズに適合するのは、龍化した時に経験済みなので、たぶん大猿化しても体に合わせて大きくなってくれるだろうなとは思ってた。

 サイズだけでなく、翼が出る部分を避けて変形までしてくれる優れものだし。

 でも、さも心を読んだかのようにそれについて言及してくるとか、怖いよ白銀の人。

 まるでこの先に起こる事も知っているかのような雰囲気を漂わせている。

 私が元龍王と共に飛ばされたダンジョンの位置まで知ってたし。

 ホント、何者なのよ?


 白銀の人は魔力がまだ回復しきってないようで、天空王との闘いにはあまり積極的に参戦していない。

 危なそうな人がいる時にフォローしている程度だ。

 この人が魔力回復した方があっさり天空王倒せそうなんだけどなぁ?


「君がやらないとダメだよ」


 だから心読むのやめてぇ!

 まぁ元々人任せにするつもりは無いのでいいんだけどね。

 私はこれから行う蹂躙の為の準備をする。

 傲慢かも知れないけど、これをやったら蹂躙以外の言葉が見当たらない結果になるだろう。

 毒針から生成されるのは、この世界から失われた月の光。

 赤き月ではなく、獣人を巨大化させる青く輝く月を模倣したもの。

 その光を私の目が捉えた瞬間、体内の気が膨れ上がった。

 四肢が盛り上がり、白銀の体毛を携えた大猿へと姿を変える。

 もっとも、体の大半は巨大化した身体に合わせたサイズの白銀の鎧に覆われているが。

 獣人の巨大化はただの体積肥大ではない。

 筋肉の質も向上し、膂力も桁外れに増大する。

 しかし今回はそれだけで完了させない。

 私と共に巨大化したぼっちさんで、次の毒を生成する。

 先程月を破壊した際に生成した、自分の中に眠る全ての力を融合する毒。

 気、魔力、妖気、龍気、霊気——を融合させた究極の闘気を生む。


「『龍霊妖魔闘気』!!」


 大猿の体毛が逆立ち、オーラと共にユラユラと揺れている。

 怒髪天を衝くと言うが、怒ってる訳でもないのに相手を威嚇する獣のような姿となった。


「おまたせ!危ないから皆退避してっ!!」


 私の声を聞いた勇者達と元魔王達が散開する。

 私と天空王の間を遮るモノは何も無くなった。


「デカくなったぐらいでこの神器に勝てると思うなああああぁっ!!」


 鎧の中で怒声を上げる天空王。

 残念、こっちが装備してるのも同シリーズの神器なのよ。

 まぁそんなの関係無く倒すけど。


 私は地面を思い切り蹴って天空王に向かって跳んだ。

 鉄で出来た強固な地面が抉れて飛び散る。

 私の加速に天空王は全く反応出来なかった。

 一瞬で間合いを詰めた私は、その速度を拳に乗せて天空王の鎧の肩に叩きつけた。

 ブチリと千切れて吹き飛ぶ朱雀の右腕部。


「……はぁっ!?」


 何が起きたのか状況を把握出来ない天空王は、間抜けな声を上げただけだ。

 次に朱雀の左腕部に全力の拳を叩き込むと、またもや千切れて吹き飛んで行く。


「な、何をした?朱雀の両腕の反応が消えた……」


 天空王が再生の炎で腕を再生しようとしたが、どうやらパーツが遠くに離脱してしまって材料が不足している部分は再生出来ないようだ。

 今までは外殻となっている金属部分がひしゃげただけだったので再生出来てたって事ね。


 私は高速の蹴りを朱雀の両足部分に食らわせる。

 両腕同様に股の関節部分から千切れて飛んでいってしまった。

 両足部を失った朱雀は地面に落下するかと思ったが、天空王の飛行能力によってそのまま宙に浮いていた。


「両足も消えただと!?何だっ!何が起こっているのだっ!?」


 私の攻撃が高速過ぎて、天空王は何をされたか理解出来ていない。

 特殊なスキルによる攻撃を受けたと思ってるのかな?

 ある意味合ってるけどね。

 最後に朱雀の頭部に向かって全力の拳を叩き込んだ。

 最後の頭部が千切れ飛んで行くと、朱雀の背中から出ていた赤い炎も霧散した。

 そして天空王の飛行能力が伝わらなくなったのか、ゴトリと音を立てて朱雀は地面に落下した。


「蹂躙としか形容できんな……」


 誰かの呟きが静寂の中に響いた。

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