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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第五章『天空編』
240/258

240 理不尽

 ミミィの攻撃を難なく防いだ天空王は、神器から立ち上る炎を更に大きく広げた。

 それが鞭のようにしなって私達を襲う。

 でも私達だって天空族程ではないが、それなりに自由に空を飛べるのだ。

 攻撃範囲から遠ざかるだけで、その攻撃からは逃れられた。

 もっとも天空王も近くを飛んでいる羽虫を払った程度の事だったのだろう。

 さほど避けられた事を気にした様子は無かった。


「次は私が行きましょう」


 ヴァイスさんの体を白いオーラが覆うと、次の瞬間には巨大なホワイトドラゴンへと変貌する。

 龍化したヴァイスさんは天空王の鎧に匹敵する大きさだ。

 ドラゴンの鉤爪が天空王を襲う。

 それを天空王はあっさりと右手で掴み、遠心力を利用して放り投げた。

 宙を舞う相手を放り投げても当然の如く姿勢を制御されて大したダメージにはならない。

 くるりと一回転して静止するホワイトドラゴン。

 だが姿勢を正す隙を突いて、天空王が高速で激突してきた。


「ぐああぁっ!?」


 脇腹に激突されたヴァイスさんは苦悶の声を上げる。

 助けに入る間も無くヴァイスさんが攻撃されてしまった。

 でも龍化したヴァイスさんの防御を完全に貫いた訳ではないようで、すぐにヴァイスさんは距離を取って離れる事が出来た。


 それにしても天空王の動きが速い。

 これは最初からフルスロットルで行かないとダメかも知れないね。

 私は一旦、霊気によるアストラル体からの制御を停止する。

 そして自身の肉体で魔闘気を練り上げた。


「あれっ?リビングデッドになってるせいか、何かいつもと感覚が違う?」

「そりゃそうだろ。気ってのは生命の源だ。今の状態で魔闘気を練れば生命活動が停止してるのに生命が巡ってるっていう矛盾が生じるんだからな」

「えー?ぼっちさん、どうしよう?」

「生き返ればいつも通りに魔闘気を練れるだろうが、現状でもそれほど遜色無いんだからそのままやればいい。妖魔闘気も使うつもりなんだろ?どうせ妖気が入り込めばまた質が変わる」

「それもそっか」


 感覚が違うだけで使えないって訳じゃないからいいのか。

 私は直ぐに自分に毒を打ち込んで、『妖魔闘気』を纏う状態にした。

 全身を強いオーラが覆い、体も一回り大きくなる。

 白銀の鎧はさすが神器だけあって、体の伸縮に合わせてサイズ変更してくれる。

 衣服の問題を考えなくていいのはありがたいね。

 ただ、大猿化した時にそこまでのサイズになってくれるかは分からない。

 たぶん大丈夫だと思うけど、一応借り物だから気をつけよう。


「ほう、羽虫の割に強いオーラを纏うじゃないか。辛うじて私と闘う資格はあるようだ」


 どこまでも上から目線の天空王に若干苛立つ。

 巨大ロボに乗って調子に乗ってられるのも今のうちだからね。

 毒で足場を作り、それを蹴って一瞬で天空王との間合いを詰める。

 いかに神器によって高速で動けるようになったとしても、反応速度は天空王のものだ。

 空を飛んで近づくと思ってたようで、反応が遅れて同様しているのがはっきりと分かる。

 私は全力の妖魔闘気を拳に込めて天空王の鎧の腹部を殴った。

 硬質な音が響き、紅い金属の鎧がひしゃげる。


「ちぃっ!?何故そこまでの速度で動けるのだっ!?」


 天空族には翼で飛ぶって発想しか無かったようだね。

 空中に足場を作って跳ぶ私は、はっきり言って天空族の飛行速度よりも速い。

 それに加えて妖魔闘気を纏った私の速度を捉えれる者もそうはいない。

 さっきまでの余裕が揺らいだ天空王を、縦横無尽に殴り続ける。

 紅の鎧はボコボコにへこみまくっていた。

 しかし、さすがに神器だけあって破壊にまでは至らない。

 ちゃんと攻撃は効いているようなので、それほど理不尽な存在でも無さそうだけどね。

 でもこのままだと倒せそうにないか……。


「いい気になるなぁっ!!」


 天空王の怒声と共に、鎧の背中から炎が吹き上がった。

 そしてそれが鎧自体を包み込む。

 炎で防御した?と思ったが、その炎は程なくして霧散した。

 でもその後の姿を見て目を見開く。


「修復した……?炎が金属を修復って、どんな原理よ?」


 紅の鎧は僅かなへこみすら無い完全な状態に復元されていた。

 あれはまるで再生の炎——でもそれって『朱雀』って言うより不死鳥じゃない?

 持久戦になったら明らかにこちらが不利だ。

 しょうがない、なるべく壊さないように手に入れたかったけど、後でマル婆に直してもらえばいいや。

 私は金属を腐食させる毒を鎧の隙間に流し込もうと考えた。

 そして毒の足場を蹴って距離を詰めようとしたのだが、先程まで反応出来ていなかった天空王が突然私の攻撃を容易く躱すようになった。

 更にカウンターで殴りに来たので、私は腕をたたんでガードする。


「さっきまでと動きが違う?あの炎は鎧を修復するだけのものじゃなかったの?」

「ふはははっ!赤き月からのエネルギーが私自身にも還元されるのだ。月の輝きが増す程に鎧だけでなく私自身も強くなるっ!」


 あの炎は赤き月のエネルギーによるものなのか。

 先程よりも更に速い動きで私との距離を詰めてくる天空王。

 妖魔闘気でなければ反応出来ない程の速度だ。

 毒の足場を蹴ってなんとか避けれたが、今後もまだまだ強くなるんだとしたら、『龍の轟き』を飲んだ元龍王以上に強くなるかも知れない。

 誰よそれほど理不尽な存在でも無いって言った奴!

 あ、私だった……。

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