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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第五章『天空編』
230/258

230 牽制

残酷な描写が含まれる部分があります。

苦手な方はご注意ください。

 レントちゃんの作った積乱雲は、私達のいる位置を覆うように展開していて、天空族の国からは見え辛くしている。

 恐らく魔力感知等で照準を定めているだろうから、見え辛い事にはあんまり意味は無いんだけど、レーザー等の威力を減衰する効果はあるはずだ。

 それを見越した積乱雲である。

 ただし、こちらからの視界も塞がれてしまうので、勘で攻撃を避けなければならない。

 まぁその辺は勇者と元魔王達にとっては容易い事だし。


「では我々は帝国兵へ向けて牽制の魔法を打ち込みます」


 元不死王の渋顔おじさんが両手に魔力を込めて高々と掲げた。

 魔法が発動すると炎を帯びた岩が無数に帝国兵のいる付近に降り注ぐ。

 いやちょっと過剰威力過ぎない?

 地面にボコボコと穴を開け、周囲に炎の欠片が飛び散って行く。

 水分を求めて右往左往しているところに火の粉が飛んで来た為、もはや帝国兵は統制がとれなくなっているようだ。

 しかし、そこから数人の屈強な兵が飛び出してこちらへ向かって来た。

 中には教皇国の聖騎士もいる。


「どうやら戦闘力に自信のある者で先行するつもりのようですな」

「雑兵が使い物にならないのであれば、そうするしかないだろう」


 今度は元魔導王が氷の槍を作り出し、先行する兵に向けて放った。

 さすがに向こうも実力者が出てきたようで、氷の槍は簡単に打ち砕かれる。

 しかし、元魔導王は連続して終わる事の無い槍の雨を浴びせ続けた。

 始めのうちは氷の槍を払い除けれていた兵達も、徐々に劣勢になって行く。

 ぼっちさんに感化されて魔力効率を上げた元魔導王なら、あの程度の氷の槍であれば一昼夜打ち続けても魔力枯渇する事は無いだろう。

 少しずつ削られていく兵達はもう進軍もままならなくなり、それどころか止まない攻撃に撤退すら選択できない状況となった。

 これはもう任せて空に向かってもいいかな?と思い始めた頃、突如氷の槍は見えない透明な壁に阻まれて敵に届かなくなった。

 あー、これは奴がいるなぁ……。


「ちっ、例の夜行の女とやらか?」

「そうみたいだね。当然参戦してくるとは思ってたけど、相変わらず厄介なスキルだわ。前に会った時に消せなかったのが悔やまれるよ」


 夜行の首領がいるとなれば、それを何とか出来るのは私しかいない。

 ひょっとしたらパワーアップした元魔王達が全力を出せばあの壁をぶち破れるかも知れないけど、天空族の国を攻める前に余計な消耗は避けたいんだよね。


「しょうがないから、私が直接行って夜行の首領のスキルを消してくるよ。あの女さえ居なければ魔法も普通に通ると思うから」

「下手に近づかれて白兵戦になると面倒だ。こちらは人数も少ないから、範囲殲滅魔法が効く距離を保てるうちに仕留めてこい」

「うん、分かった」


 魔導王が言うように、近づかれたら魔法での牽制は難しくなる。

 この人達ならそれもやってのけそうだけど、当然ながら消耗も増えてしまうだろう。

 私は勇者達に先行するようお願いする事に。


「勇者の皆と、ミミィとヴァイスさんと師匠は先に空に向かってくれる?私はちょっと帝国兵の要を潰してくるから」

「アイナちゃん一人でやる気?大丈夫なの?」

「平気だよ。元魔導王と元不死王が遠隔で牽制もしてくれるし」

「いや、ここは俺がアイナちゃんに付き添うよ。他の皆は先に行ってて。俺は別で飛べる手段があるから」


 さっきまではあくまで対魔王を主張していたライズさんが、何故か私と一緒に帝国兵に突っ込んでくれるみたいだ。

 うーん、何考えてるか分からない人だなぁ……。

 勇者の面々は、マル婆の用意した空中浮遊魔導具『重力遮断の翼』という頭に乗せるタイプの竹とんぼを装着している。

 私やヴァイスさんの翼ほど自由に空中を旋回出来ないが、それなりのスピードで飛ぶ事が出来るらしい。

 どう見てもアレだったけど、気にしたら負けだ。

 とりあえず私とライズさんを残して、他の人達は魔導具や自分の翼で先に宙に飛び上がって行った。


「別にライズさんも先に行って良かったのに」

「いやだってアイナちゃん、真っ直ぐ敵に突っ込むつもりだったでしょ?」

「そうだけど?」

「どう考えても横の森から行って奇襲した方が良くない?」


 たぶんどっから行っても夜行のババアが予知してると思うんだよねぇ。

 でも正面突破すると他の兵も相手にしないといけないから、ライズさんが言う事も一理あるか。


「じゃあ気配を消して森の中を高速移動するよ」

「心配だから俺も行くよ。アイナちゃんのサポートする為に残ったんだし」

「ライズさん、私に付いて来れる?」

「みくびってもらっちゃ困るなぁ。仮にも勇者だよ?」

「分かった。じゃあ勇者(仮)のライズさんにだけ感知できるように隠密するから付いて来て」

「ちょっと!(仮)って何なのさぁ!!」


 自分で言ったんでしょ。


 私達は荒野に隣接する獣人国側の森の中を高速で走り抜ける。

 夜行の首領のクリティカルポイントはもう何度も会ってるから完全に把握している。

 走りながら確認すると、夜行の首領は帝国兵の隊列の中央付近で屈強な兵に守られながら前方へ向けてスキルを展開していた。

 帝国軍は少しずつ進軍速度を戻しつつあるようなので、早めに対処したいところだ。

 後ろからライズさんが付いて来てるけど、あくまでも主戦は私が切り開かないといけないだろう。

 勇者が前に出ると、後々面倒な事になるからね。

 帝国兵の真横まで来たので、ここからは全力で接近しようと足に魔力を込める。

 その時、付近で奇妙な音が鳴った気がした。


「ごめんねぇ、アイナちゃん」


 ライズさんの声と同時に、私の胸から銀色の刀が生えた。

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