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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第五章『天空編』
224/258

224 誇り高き龍族

 場所を移して龍王の間と呼ばれる城内の謁見室みたいなとこへ来た。

 私は今玉座に座っている。

 そして、玉座から部屋の入口にかけて伸びる赤い絨毯には上位種の龍族達が跪いていた。


「新たな龍王アイナ様、若輩の龍族達がご迷惑をお掛けしました」


 先頭で跪く赤髪の龍族が私に詫びた。

 あの元龍王と戦った時に真っ先に現れたレッドドラゴンの人だ。

 なんとなく筆頭っぽいから、もうこの人が仮の代表でいいんじゃないかな?

 こんな事してる時間無いし……。

 でも一見従順に見える跪く龍族達の中に、まだ敵意を見せる者達もいる。

 人族ならあれで大体心を折られて、歯向かって来る事は無くなるのに。

 ……む、待てよ?

 私はドラゴンの食文化を甘くみていたのか?

 ひょっとしたらドラゴンはゲテモノでも普通に食べるのかも知れない。

 だとしたら蠢く芋虫では何の効果も無いじゃないか……。

 と考えてたら、脇に控えてたヴァイスさんが小声で話しかけてくる。


「アイナ様、絶対勘違いしてると思うので言っておきますが、いくらドラゴンでもあんなゲテモノは食べません」


 あれ?そうなの?

 だとしたら、龍族は精神までタフなのか……どうやったら心が折れるんだろう?

 すると突然、跪く上位種の中から一人青髪の龍族が立ち上がった。


「やはりあんなものでは納得できない!再戦を要求するっ!!」


 ギリギリと音がしそうな程強く拳を握りしめ、私を鋭く睨む青年。

 周囲の上位種達は誰も彼を止めようとはしなかった。

 同様に不満を持つ者、あわよくば戦っている時の隙を狙う者、力量差を正確に把握している者など様々。

 流路で視た限り、私の強さを理解している前列にいる龍族達は、あえて傍観しているようだ。

 彼が完膚なきまでに叩きのめされた方が後々統率しやすいという事なんだろう。

 つまり私まかせ?

 おいこら、お前らも纏めてやっちゃうぞ?


「我ら誇り高き龍族が、人族の形など取るのが間違っている!!」


 誇り高き龍族、さっき100対1で少女に闘い挑んでたけど?

 青髪の龍族は叫ぶと同時に龍化して、3m程のブルードラゴンへと変貌した。

 あんまり大きくないのは歳若いからだろうか?

 元龍王も龍化したサイズはそれほど大きいものではなかった。

 ダンジョンで視たドラゴンの群れの中にも、10mを越えるような巨大なドラゴンはあまりいなかったように思える。

 大きい体は燃費が悪いから、寧ろ小さい方が進化した姿なのかも知れないね。

 あれ?それなら人化したままの方が良くない?


「どうだ!?雄々しきドラゴンの姿に恐れを成したか!?」


 この後転移魔法を試すんだから、あんまり無駄な魔力使いたくないんだけどなぁ……。

 私は龍化して魔闘気を練り上げると、『妖魔闘気』を使うための毒を少しだけ自身に打ち込んだ。

 瞬間的な闘気の上昇。

 おそらく闘い慣れしていない者には感知すら出来なかっただろう。

 その一瞬で相手の懐に潜り込む。


「え?消え……ぐぼおぁっ!?」


 深々とドラゴンの腹部に私の拳がめり込んだ。

 くの字に折れた体から拳を引き抜くと、ドラゴンは気絶してしまったらしく轟音を響かせて地面に突っ伏した。

 私の隙を狙っていた上位種の龍族達に向けて、残った『妖魔闘気』を解放しぶち当てると、それらの龍族達はビクリと震えた後にガクガクと膝を揺らして蹲ってしまった。


「さて?まだ文句ある奴はいるかな?」


 唖然とこちらを伺っていた歳若い龍族達は、はっと我に返り、全員が私に対して平伏した。

 これにて一件落着。

 力技過ぎて、こんなん時代劇には出来ないけどね。


「じゃあ、そこの先頭の赤髪が仮の代表って事でよろしくね」

「……承りました」


 実力的にもあのレッドドラゴンの龍族が一番のようだし、問題無いだろう。


「アイナ様、最初からそれやってくださいよ……」


 確かに、最初からこれやってれば簡単だったかも。

 でも脆弱なスキルってのは私にとって琴線に触れる言葉だったんだよ。

 王国でもFランクという最下位に認定されて、国外の龍王国でもそんな風に言われたらやり返したくなっちゃうじゃん?


「まぁ、何にせよこれで解決したし。ヴァイスさん、手伝ってくれるよね?」

「勿論です。憂いさえなければ、アイナ様をお助けするのにやぶさかではありません」

「よし。じゃあ次のとこ行こうか」


 ヴァイスさんが承諾してくれたので直ぐに次の場所に向かおうとしたのだけど、元魔導王が難色を示す。


「ちょっと待て、まだ魔力が回復していない。さっきの急速な魔力回復もお前にとっては負担が大きいだろう?少し休憩が必要だ」


 転移魔法はかなり魔力消費が激しいようで、連発は出来ないのか。

 しかし、そこは我がチームの頭脳担当がおる。


「だいぶ魔力効率に無駄があったから改良したぞ。この魔法陣なら半分ぐらいの魔力で転移出来る筈だ」


 さすがぼっちさん、一度見た魔法陣を私が色々やってる間にもう改良しちゃったみたいだ。


「じゃあぼっちさん、それでお願い。私が使うよりぼっちさんがやった方が効率いいでしょ?」

「まぁそうだな。じゃあ転移するぞ」


 ぼっちさんが転移魔法を発動すると、私と元魔導王とヴァイスさんの周囲の景色が一瞬にして変わる。


「は?い、今何をした……?」


 元魔導王が困惑した声を出す。


「転移魔法だよ。さっき見せてもらったし」

「……な、何で一回見ただけの魔法が再現できるんだよおおおおぉっ!!」


 元魔導王の叫びが周囲に響き渡った。

 ちょっと、うるさいよ。

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