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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第五章『天空編』
220/258

220 落月

「天空族は、昔は地上で暮らしておりました。しかし、空を飛べる以外の能力が低い天空族は、人族に比べて遙かに脆弱でした。その為に人族から酷い扱いを受けており、翼をもがれ奴隷にされる事が多かったようです。そこで魔導具を作る能力に長けている者達で空を飛ぶ島を作り、人族の干渉から逃れる事にしたのです」


 ふむふむ。

 つまり人族に対してあまりいい感情を持ってない可能性もあるね。

 それにしても骸骨だった時と違って、流暢に話すなぁ。

 声帯が無い骸骨が喋るには、たぶんぼっちさんが喋ってたように何らかの発声魔法を使ってたんだろうね。

 それが変な訛りに聞こえてたのかも。


「天空族が空に逃れた話は文献にも残っているので割と知られている事と思いますが、問題はその後です」

「その後の事なんてよく知れたね。私は天空族の国に近づいただけで迎撃されたのに」

「ふふふ、私はリッチだったのでアストラル体だけを飛ばして世界を視る事が出来るのですよ。今ならアイナ様もリビングデッドになれば可能ですよ」

「やる訳ないでしょうが!」


 機能としては便利だけど、その為だけにリビングデッドになるのは嫌だよ。


「逆にアストラル体だけ残しておく事で、円卓の盟約を守った状態のまま領地外で活動も可能だったのです」

「それで盟約違反してないのにあちこちで目撃情報があったのね」


 キャサリン姉が呆れた様子で元不死王をジロリと睨んだ。

 そんな盟約の抜け道あったんだね。

 まぁ盟約とか無視してあちこち動いてた元魔導王アホもいたみたいだけど。


「私の事はとりあえずいいでしょう。重要なのは天空族の事です」

「そうだね。それで、問題って?」

「『赤き月が落ちる時、天空族の持つ神器が満ちる』という言葉を聞きました」

「ん?天空王は魔王だから、持ってるのは『麟器』じゃないの?」

「アイナ様も『麟器』を持つ魔王でありながら『神器』を持ってるでしょう?」


 あ、そっか。

 私もぼっちさんと白銀の鎧という2つの神器を持ってるもんね。

 天空王も神器を持ってても不思議じゃないか。

 勇者の定義として神器を持ってるものだと思ってたけど、勇者の定義は『勇者の証』が魂に刻まれてる事だから、魔王が神器を持っててもいいんだった。


「赤き月ってのは最近月が赤いから、たぶんそれだよね。え?月落ちてくるの?」

「ええ。月がかなり地表近くまで落ちてきます。完全に地面に墜落する事はないのですが、空高く飛べる者は月に触れる事が出来る程大地に接近します」


 さすがファンタジー世界。

 物理的には月がそんな距離まで近づいたらラグランジュ点を維持するのに超加速が必要になる。

 飛んで行ける距離にそんなものがあったら、質量的に大地を削る程の衝撃波が生まれるんじゃないかな?

 いや、この世界の月の質量が元の世界と同じとも限らないのか。

 重力魔法がある世界で物理法則なんて無意味だよね。


「赤き月は100年周期で現れます。赤く染まっているのは月が保有する魔力量が高まっているせいで、その魔力量の関係で地表に落ちてくる事から、『赤き落月』と呼ばれます」

「『赤き落月』?『赤き落日』じゃないの?」

「『赤き落日』は天空族がもじってつけた作戦名ですね。月が落ちる日に決行するつもりのようで」

「決行するって、まさか……」

「落日——つまり人族を衰退させるという事でしょう」


 衰退って、人為的にやるとしたらそれはもう侵略だよね。

 うわぁ、天空族が攻めてくるって事は、こっそり天珠華だけ取ってくればいい状況じゃなくなった。


「100年前の『赤き落月』の時にはそれは計画されなかったのかな?」

「どうやらされていたようなのですが、何者かに阻止されたらしいです。さすがに昔の出来事の詳細まで知る事は出来ませんでしたが」


 出来れば当時はどうしたのか知りたかったけど、100年も前のことじゃね……。

 100年前のことは、ぼっちさんも封印されてたから知らないらしいし。

 まぁやる事は変わらないか。


「要はその神器を止めればいいんでしょ?」

「……おそらくそれは難しいでしょう。天空族によってかなり改良が加えられていて、恐らく『対勇者用兵器』として作られていると思われます」


 あぁ、よく考えたら、これって本来勇者案件だもんね。

 人族の領域に攻め込む魔王とか、勇者が出ていく理由として十二分だ。

 話を聞いていたキャサリン姉は、いつになく真剣な顔をしている。

 オネエ言葉を話さない真剣な顔のキャサリン姉は、めっちゃイケメンである。

 勿論、勇者案件だからと言って、私は手を引くつもりなどない。

 姉達の手伝いとして全力で参戦するつもりだ。

 どうせ元魔導王の件もあるから、天空族の国には行く事になるんだし。


「それで、天空王の持つ『神器』ってどんなものなの?」

「かなり巨大な鎧でした。いや、あれはおそらく搭乗型ゴーレムでしょう」


 と、搭乗型ゴーレム……!?


「ねぇ、ぼっちさん。それってやっぱアレよね?」

「あぁ、間違い無くロボだな」

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