表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第五章『天空編』
214/258

214 魔導王の籠手

 別に魔導王がどうなろうと知ったこっちゃないんだけど、家の前で何かあったら気になっちゃうでしょ。

 私はうつ伏せになっている魔導王を仰向けに寝かせ直して、頬を叩いて意識があるか確認する。


「ちょっと、大丈夫?」


 ペシペシと軽く叩いても反応が無いので、脳を揺らさない程度に強めにバシンと叩いた。


「ぐっ……!?お、お前は……」


 僅かに目を開けて私の姿を確認したが、直ぐにまた気を失ってしまった。

 結構拙い状態なのかも知れない。


「しょうがない。助ける義理は無いけど、ほっとく訳にもいかないか」


 私は回復薬(毒)を魔導王に投与した。

 みるみるうちに傷は塞がって行き、顔色も良くなって呼吸も安定した。

 それなりに魔力を込めたので急速に回復したようだ。

 しかし、意識はまだ戻らない。

 九曜を呼んで家に運んで貰おうかと思ったら、突然魔導王の腕に装着されていた『麟器』が白く輝き、腕から離れて宙に浮かんだ。

 ……ねぇ、ちょっと待ってよ。

 それ前にも見た事ある動きなんですけど?

 そして案の定、私の腕に向かって飛んで来て装着されてしまった。


「あちゃ〜、やっぱり『麟器』の継承だったか……」


 でも私が魔導王を倒した訳でもないのに、なんで私に装着されちゃったの?

 もしかして、回復薬による急激な身体の変化が、体に負荷となって攻撃認定されちゃった?

 しかも既にかなりの重傷だったから、私が止めの一撃入れた事になったとか?

 どうしよ……麟器4つ目になっちゃったよ。

 しかも魔導王って魔導具オタクっぽくて、この『魔導王の籠手』持ってる事をとても自慢げにしてたんだよね。

 起きた時に絶対何か言われそう……。


 そこへキャサリン姉とリスイ姉も駆けつけた。


「えっ?魔導王じゃないのよ」

「アイナ、これどうしたの?」

「私の方が聞きたいよ。なんか急に家の前に現れたんだけど」


 始めは魔導王の事を気にしていた姉達だが、私の腕に装着されている『魔導王の籠手』を見て目を見開いた。


「アイナちゃん……まさか殺ったの?」

「殺ってないからっ!!回復してあげたら勝手に私に装着されたの!!そもそも生きてるでしょ!!」


 とんだ濡れ衣だよ!




☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆




 魔導王を家の中に運んで、ベッドに寝かせてあげた。

 外傷は治したけど魔力が回復していなかった為か、暫く起きて来なかった。

 数時間経って日も傾き始めた頃、クリティカルポイントと流路を常に見張って警戒していた私は、魔導王が起きた事を感知した。

 すぐに寝室へ向かうと、上半身を起こした魔導王が部屋の中を見回していた。


「ここはどこだ……?」

「ここは勇者キャサリンの所有する家だよ」


 私の声を聞いてこちらへ視線を寄越した魔導王は、目ざとく私の腕に装着されている『魔導王の籠手』に気付いてしまった。

 しかし、何故か怒るでもなく、静かにじっと私の腕を見つめていた。


「一応言っとくけど、これ私が奪ったんじゃなくて、勝手に装着されちゃったんだからね」

「ふっ……思うところはあるが、既に継承されてしまったのでは一年は取り戻せないからな。暫く預けておく。寧ろ奴らに奪われなくてほっとしているぐらいだ」


 まぁ今後の行い次第では一年後に返してあげなくもない。

 でもまた『龍の嘆き』みたいな薬をばらまいたら絶対渡さないからね。

 それにしても、何か妙な事言ってるな。


「奴らって?」

「……天空族だ」


 あら、また天空族か。

 こいつも天空族の国に近づき過ぎたのかな?

 と、そこへキャサリン姉とリスイ姉もやって来た。


「魔導王、目が覚めたようね」

「魔導王——もとい元魔導王。プププッ」


 リスイ姉が笑いを堪え切れてない。

 何やらリスイ姉と魔導王——もとい元魔導王は何やら因縁があるみたいだからね。

 今回ボコボコになってたあげく、私に麟器が継承されちゃったのがツボったらしい。

 何やらかしたんだか、元魔導王。


「ケガしてたのって天空族にやられたの?」

「……やられた訳ではない」

「何その無駄なプライド。完膚なきまでにやられて逃げて来たようにしか見えなかったけど?」

「交戦はしたが、負けてはいない。ちょっと劣勢だったので転移魔法で立て直そうとしただけだ」


 え?この人転移魔法使えるの?

 あとで見せてもらおっと。


「まったく、円卓の盟約が無くなったお陰で、勇者vs魔王じゃなくて魔王同士の争いが起こってるじゃない」


 キャサリン姉が私をジト目で見る。

 私はもちろん目を逸らした。

 見たら負けだ。

この物語はファンタジーです。

実在する回復薬とは一切関係ありません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ