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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第五章『天空編』
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210 時間切れ

 この天空族の人、見た事あるなぁ。

 確か天空王の従者の人。

 顔立ちが綺麗過ぎて男性なのか女性なのか判別がつかない。

 まぁ今はそんな事はどうでもいいんだけど。

 重要なのは、何故ここに現れたのかって事。

 私がさっき天空族の国に近づき過ぎて攻撃された件だろうか?

 今ちょっと取り込んでるし、後にしてくれないかな?

 と、突然玉座から立ち上がった皇帝が慌てて喚く。


「教皇!た、助けてくれっ!!今スキルを封じられているんだ!!」


 教皇!?

 つまり教皇国の一番偉い人って事?

 そんな人が自ら帝国まで来たの?

 それほどまでに聖女の引き渡しは重要な事だったのかな?

 いや、ひょっとしたら一緒に捕らわれてたソフィア王女の方が目的かも。

 どっちも我が家へ送ってしまったので引き渡しは失敗だろうけどね。


「スキルを封じる魔物……いずれにせよ、魔物であるならば聖域を展開するだけで十分でしょう」


 教皇が私に向かって右手を翳すと、無詠唱で聖属性の魔法を発動した。

 『麟器』を封じられているのに加えて、更に体の重さが増す。

 聖域ってミミィが『暗黒爆裂掌』で吹き飛ばしたって言ってたやつかぁ。


「あとは『絶壁』で囲えば捕獲出来ますな」


 絶壁だと?

 教皇、貴様も私の逆鱗に触れるか……。

 ヴァンパイアになったおかげでもう私の胸は成長しないんじゃあっ!!

 妖魔闘気を怒りで全開にして放出すると、教皇は目を見開いた。


「なんとっ!?聖域内でこれほど動けるとは、この魔物は先日教皇国に飛来した闇王に匹敵するのかっ!?」


 『麟器』が使えなくても妖魔闘気が使えればこの程度の聖域で私を封じる事は出来ない。

 そもそも私が聖域で影響を受けるのは、たぶんヴァンパイアの部分だけだと思うので1/4だし。


「は、早く絶壁で捕らえろっ!!」


 帝国の皇帝が叫ぶが、そんな事されてたまるか。

 私は教皇のスキルを無効化する為に、入口側へ向かって飛んだ。

 しかし教皇の前に天空族が立ち塞がる。


「私がやりましょう」


 天空族が手の甲に付けた籠手のような物を私に向けた。

 そこから飛び出したロープが私の腕に絡みつく。

 私はそれを妖魔闘気で強化された膂力で引き千切ろうとしたが、どうやっても切れる事は無かった。


「特殊な繊維を縒り合わせた拘束具。例えドラゴンの力であろうと引き千切る事はできません」


 『麟器』が使えれば獣王の腕輪の力で引き千切れそうだけど、今の状態では無理か。

 別に力に拘る気は無いからどうでもいいんだけどね。

 私はロープを溶かす毒を生成して溶解させて切り離した。


「なっ!?拘束具が溶けた!?……なるほど、報告にあったとおり、かなり危険な存在のようだ」


 やっぱりこの天空族の人は私を討伐に来たのかな?

 この2人はかなり厄介そうだ。

 スキルを無効化する為にも、またぼっちさんに時間を止めてもらおう——と思ったが、


「アイナ!時間切れだぞ!」


 ぼっちさんが叫ぶと同時に、後方から透明な壁のようなものが飛んで来て私にぶつかった。


「ぐっ!?」

「やっとスキルが使えるようになったよ。ババアの言った通り耐え忍んでたら状況が変わったねぇ」

「特異点じゃから心配していたが、どうやら占いの通りに運命は進んどるようじゃの」


 スキルをジャミングする毒の効果が10分経って切れてしまった。

 まさかの横槍で教皇と天空族が現れるとは思っていなかったので、完全にタイムオーバーしてしまった。

 『麟器』を封じられている事で、思った以上に力がうまく使えず手こずったせいもあるだろう。

 でも、もう一回時を止めればいいだけだ。


「ぼっちさん、もう一回!」

「待て、魔力がそろそろヤバいぞ」

「え?うそっ!?」


 怒りで無意識のうちに魔力を込めすぎた?

 いや、『闇王の耳飾り』が無効化されてて魔力効率が上がってないから、いつもと同じように闘ってたら消費魔力量が半端じゃない事になってたみたいだ。

 修行で私自身が強くなったつもりだったけど、意外と『麟器』に頼ってた部分があったのか。

 ちょっと力任せにやり過ぎた。

 先に麟器を無効化する魔導具を処理しておくべきだったかも知れない。


「おやぁ?特異点ちゃん、何か焦ってないかい?」


 ちっ、見透かされてるか。

 夜行のバリア女を相手にするには、かなり魔力に余裕が必要だ。

 妖魔闘気じゃないと破壊出来ないのに、そろそろそれも切れてしまう。

 なんとか最後に皇帝だけでもぶん殴っておきたいけど……。


「うおっ!?」


 全力で皇帝に向かって跳んで殴りかかったけど、ガキンという音が鳴って寸前で止められた。

 透明な壁が私の侵攻を阻む。


「ふ……ふははっ。も、もうお前なぞ怖くないぞ……」


 皇帝がめっちゃビビりながらイキってるけど、溜飲は下がらない。

 でも魔力が尽きそうな今、撤退するしか無さそうだね。


「逃がすと思うかい?」


 夜行の女が立場逆転したとばかりに嫌らしい笑みを見せた。

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