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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第四章『円卓編』
195/258

195 ドラゴンの群れ

 元龍王は自分が弱体化した事を理解しているようで、警戒して近づいては来なかった。


「何故『龍王の首飾り』が急に私をあるじに選んだのか。それはあなたの細胞が敗北したと錯覚したからよ」

「錯覚だと!?俺は全く敗北したなどと思っていないぞ!!」

「錯覚ってのは必ずしも意識下で起こる訳じゃないよ。感覚と現実に齟齬が生じている状態であればいいんだし。つまりあなたの意識とは関係無しに敗北したと錯覚させる毒を打ち込んだから、あなたを敗者とみなした『麟器』が自動的に勝者である私へ譲渡されたって訳」

「そんなバカな事があるか……」


 錯覚させるだけで肉体に大きな変化を与えない毒は魔力消費量も抑える事が出来た。

 龍王の攻撃が思ったより激しくて魔力ギリギリだったし、この毒にして正解だったね。

 脳にも錯覚させないとダメかと思ったけど、よくよく考えてみると師匠もミミィも気絶状態の時に譲渡されていた。

 つまり意識下で敗北を考えていた訳では無かったという事。

 だから体の細胞が相手を畏怖してさえいれば条件を満たすんじゃないかなと思ったのだ。

 確証があった訳じゃないから、そこは毒のイメージで補完したけど。


「『龍王の首飾り』を得た事で魔力も少し回復したし、あとはあなたのスキルを消して終わりよ」

「くっ……くそおおおおおああああああああっ!!」


 大声で天に向かって吠える元龍王。

 とは言っても私も万全じゃない。

 ハヤテさんとミカヅチさんの力も借りないとダメかな?

 さっき無茶したから呆れられてないといいけど……。


 ふと、元龍王が動きを止めた。


「……ふ、ふふふ、ふはははははははっ!!」


 そして不気味に笑い出す。

 壊れちゃったの?


「天は我を見放さなかった!」


 突如かなりの数のクリティカルポイントがこの草原に出現した。

 ハヤテさんとミカヅチさんが現れた時も思ったけど、ダンジョンのこの階層に来る時って階段とかじゃなくて何らかの転移みたいな移動手段を使うのかな?

 それにしてもこれはヤバいかも。

 クリティカルポイントの形が人のそれでは無いんだよね。


「拙いよ。ドラゴンの群れが予想以上に早くこの階層に辿り着いちゃった」


 元龍王の持つ龍族を支配するスキルはまだ消せていない。

 相手の弱体化とこちらの回復を同時に行える『龍王の首飾り』奪取を優先したからだ。

 その後スキルを消すつもりだったのに、ドラゴンの侵攻速度が思ったよりも早かった。

 元龍王は数千にも及ぶとか言ってたけど、ここに現れたドラゴンは数十匹だけ。

 それでもかなり強力な個体の為、私とハヤテさんとミカヅチさんの3人だけではとても太刀打ち出来ないだろう。

 迷ってる間にも次々にドラゴン達はこの階層へ現れ続けている。


「ハヤテさん、ここから逃げる手段ってある?」

「……あっ、ハヤテって俺か!いやすまん、来る時に急ぐ必要があったから高速で移動出来る手段はもう使っちまったんだ」


 偽名に戸惑ってる場合じゃないから。

 そうだよね、逃げる手段あったら元龍王の相手なんてしないでさっさと使ってるよね。

 私を助ける為に急いで来たせいで移動手段を使ってしまったんだろう。

 でもお陰で今生きてられる。

 感謝こそすれ、咎めるなんてあり得ないよ。


「この階から別の階には行けるの?」

「まずは転移装置を探さないとなんだ。それをあの数相手にしながらははっきり言って……」


 絶望的ですね、分かります。

 一発逆転狙いで元龍王に毒を打ち込む——のは無理ね。

 警戒されているから近づくのも難しい。

 これはもう、一匹ずつ支配から解放してこちらの味方に付けて行くしかないか。

 私の魔力が尽きるのが先か、勢力を押し返せるようになるのが先か。

 そうこうしているうちに一匹の強力な個体が高速で近づいて来ていた。

 赤い鱗に覆われたレッドドラゴン。

 他のドラゴンと比べても一線を画す強さで、うちの料理担当ヤスガイアさんと互角ぐらいだと思う。

 でも、元龍王は私が支配から解放できる事を忘れているのかな?

 一匹で突っ込んで来たら順番に解放して行っちゃうだけなのに。


「行けっ!!奴らを蹂躙しろっ!!」


 ドラゴン達が来た事で元龍王はかなり強気になっている。

 私の魔力もそれほど多く回復してる訳じゃないから、なるべく強い個体から解放して行きたい。

 まずはあのレッドドラゴンか——と思ってたら、何故かレッドドラゴンの進行方向が私達の方には向いていなかった。

 レッドドラゴンは高速で飛翔したまま元龍王の方へ突っ込んで行き、そのままドロップキックを食らわせた。


「ぐぼあっ!?な、何だぁっ!?」


 不意打ちでレッドドラゴンからの攻撃を食らって、元龍王は盛大に吹き飛んで行ってしまった。

 私達3人は唖然としてその光景を見つめるだけ。

 あのレッドドラゴン支配解けてないかい?

この物語はファンタジーです。

実在する錯覚させる毒とは一切関係ありません。

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