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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第四章『円卓編』
192/258

192 神器

「あなた達はいったい……?」


 謎の赤と青の鎧を纏う人達に問うと、2人はほぼ同時に答える。


「俺はア……じゃなくて!は、ハヤテだっ!!」

「私はリ……じゃないわっ!えーと、えーと、あっ!み、ミカヅチよっ!ミカヅチ!!」


 おい、完全に偽名じゃん……。

 嘘看破するスキルとか無くてもはっきり分かるわ。

 なんだろこの残念コンビは……。

 まぁ助けて貰ったんだし、あえて突っ込まないでおいてあげよう。

 兜もフルフェイスで完全に顔見えないし、何らかの事情があって正体を隠してるんだろうね。


「助けてくれてありがとう」


 私が礼を述べると、2人共少しほっとしたかのような雰囲気になった。

 それにしても、明らかにピンポイントで私を助けに来たみたいだけど、どうやってこの場所を知ったんだろう?

 一応白銀の人とは顔見知り——と言ってもこの2人と同様に兜で顔見えなかったから素顔は知らないけど——なので、私が龍王と共に消えた事で誰かに救難を求められて応じたんじゃないかと思う。

 でも時間的にここに辿り着くのが早すぎないだろうか?

 このダンジョンの入口から恐らく今正に侵攻しているであろうドラゴン達よりも早く駆けつけるなんて、転移系の魔導具でも使わない限り不可能な筈。

 もっと言えば、ダンジョンの特定の位置への転移は一度行った事が無いと座標の特定が難しいので、この人達は一度はここへ来た事があるという事になる。

 ドラゴン達が1時間も掛けてようやく辿り着ける程の深層に来た事があるなんて、それはもう勇者や魔王に匹敵する程の強さを有していると言えるのではないだろうか?

 あの白銀の人も含め計3人もの強者が円卓と無関係な立ち位置で存在しているなんて、世界は広いとしか言いようがないね。


 ズキリと腕が痛むので、なけなしの魔力で傷口だけでも塞ぐ。

 すると赤鎧の人が近づいて来た。


「そういえば、これを渡すように言われてたんだったわ。きっとあなたには必要になるからって」


 赤鎧の人が着けている指輪から、巨大な盾がにゅるんと出て来た。

 え?ちょっと待って。

 それって収納魔導具じゃない?

 マル婆が持ってたのと同じものだ。

 何故それを赤鎧の人が持ってるんだろう?

 マル婆以外にあれを作れる人がいるとは思えないから、確実にあれはマル婆が作ったもののはず。

 ひょっとしてマル婆と知り合いなんだろうか?

 救難の声を掛けてくれたのもひょっとしてマル婆かな?

 それにしても盾って……私のスキル的に使い辛いから必要とは思えないんだけど?


「あら、盾は使わないみたいな顔してるわね。一応これもあなたの持ってる武器と一緒で伝説の装備『神器』の一つなのよ」


 魔王の持つ『麟器』と対を成す魔導具『神器』。

 え?伝説の武器って神器なの?ぼっちさんすごい!

 そしてこの盾も『神器』であると……。

 よく見るとこの盾の意匠、赤鎧の人や青鎧の人と同じものだ。

 白銀のベースに金色のラインが入っている綺麗なデザイン。

 あの白銀の人の鎧そっくり。

 でも……、


「いかに『神器』でも私の闘い方はかなり格闘寄りだから、使いどころが難しいと思うんですが」

「大丈夫よ。これを腕に付けて『形態変化』と言ってみて」

「はあ……」


 言われた通りに腕に着けてみる。

 見た目は重厚なのに、アルミ素材どころかプラスチックより軽い。

 これ軽すぎるけど攻撃防げるの?


「け、『形態変化』っ」


 私の声に呼応したように白銀の盾は輝き、その輝きがリボンのようになって私の体に纏わり付いた。

 一瞬の後に私の体全体を包む光は白銀の鎧へと形を変えた。

 盾の名残はほぼ無く、左腕に装着されているガントレット部分がやや大きいぐらいになっている。

 鏡が無いから断言は出来ないけど、たぶん赤鎧の人や青鎧の人と同じ形状の鎧みたいな気がする。


「よく似合ってるわよ。全身隠れてて中身見えないけど」


 適当だな、この人……。

 っていうか白銀色であのデザインって事は、あの白銀の人と同じ鎧なのでは?


「そうよ、その鎧はあの白銀の子が着けていたものよ。私達のはレプリカだから『神器』では無いんだけど、その鎧は紛れもなく本物の『神器』だから」

「やっぱり……って、何故私の考えてる事が分かったの!?」

「顔に書いてあるわよ」


 おかしい、顔はフルフェイスの兜で覆われているはずなのに、何故分かったし?

 まぁそんな雰囲気で自分の手足に装着された鎧見てたら分かるか。

 しかし、何故白銀の人は私に『神器』のような貴重な魔導具を渡したんだろう?

 そういえば獣王の腕輪も、あの人が受け取らずに私に渡したんだった。

 あの人はいったい何者?

 なんで私にそこまでしてくれるんだろう?

 とりあえず次会った時にお礼はしっかり言わないと。


 鎧の人達とやり取りしていると、龍王が立ち上がってこちらへゆっくりと歩いて来ていた。


「不意打ちごときで私を倒せると思うな。全員纏めて消し炭にしてやる」


 龍王は大きく息を吸い込んだ。

 ブレスが来る——と思った瞬間、私が見ていた景色はぐるっと回る。

 私を抱えたまま青鎧の人は瞬間移動かと思う程の速度で龍王の背後に回り込んでいた。

 一瞬遅れて向こう側が炎の渦に包まれる。

 この人凄い。

 速さだけならうちの元魔王達に匹敵するんじゃないかな?

 そして龍王がブレスを吐ききった直後、再び赤鎧の人の膝蹴りが横から決まって龍王は吹き飛んだ。

 な、何か赤鎧の人もめっちゃ強いんだけど……。

 ほんと何者?

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