190 対龍王 4
「すげーもんって、この状況で何言い出してるの?」
「ふふふ、お前の驚く顔が楽しみだぜ」
ぼっちさん、無機物だから表情は分からないけど絶対今ドヤ顔してるよ。
その自信はどこから来るんだろう?
そんなに凄い発見があったのかな?
「ヒントはカク爺だ」
「……ぼっちさん遂に性欲に目覚めてしまったのね」
「違ぇーよっ!!っていうか、いい加減俺の武器名の『性剣』だけでも取ってくれ!」
「はいはい後でねー」
「子供あしらうみたいに言うなあああぁっ!!」
などと遊んでたら、目の前を鋭い爪が通り過ぎる。
回復してなかったら避け切れなかった。危なっ!
一応そこはぼっちさんに感謝。
「いつまでもふざけていられると思うなよ」
ドラゴンの表情は良く分からないけど、まぁ怒ってるんだろうね。
私だって、ただでさえ劣勢なのにふざけてられないとは思ってるよ。
それにしてもヒントはカク爺って……まさかアレ?
王城でクレグのスキルを消したら魔力が尽きて、危うくバズに殺されそうになった。
でもその時にカク爺が一瞬で部屋の外へ移動する不思議なスキルで助けてくれたんだよね。
その後、異空間で修行した時も私と元魔王達3人がかりでもカク爺の動きは捉え切れなかった。
明らかにチートなそのスキルってのが……
龍王が両手の鉤爪をこちらへ向けて突き出して来た時に、それが行使される。
「カク爺のスキルを再現した『時間停止』だ!!」
ぼっちさんが魔法を構築すると、私とぼっちさん以外の全ての動きが止まった。
こちらへ攻撃を仕掛けようとしていた龍王は物理的にあり得ない重力を無視した姿勢で固まっている。
翼を羽ばたかせて空を飛んでいた時とは全く違う不自然な宙での制止だ。
それ以外にも草原の草も龍王が巻き起こした風に靡いたまま、凍っているかのように傾き続ける。
世界の全てが停止している中、私とぼっちさんだけが自由に動けている。
止まった時の中を動けるスキル、それがカク爺の持つ反則みたいなチートスキル『時間停止』だ。
どうやらぼっちさんは、暫くそのスキルを再現する魔法を構築していたらしい。
「どうだアイナ!すげぇだろ?」
「凄すぎるよぼっちさん……。ってか、何でぼっちさんが発動した魔法の中で私も動けるの?」
「そりゃあお前が俺の所有者だからだよ。伝説の武器である俺と所有者であるお前はパスで繋がってるから魔法も共有できるんだ」
「ただの喋る無機物だと思ってたけど、本当に伝説の武器だったんだね」
「俺の扱い酷過ぎん?」
しかし世界との乖離も僅かな間だけ。
程なくしてこの世の全ての鼓動が蘇る。
「とった!!……何っ!?バカな、今のを躱すなど不可能なはずっ!」
龍王の攻撃が空を切り、困惑して辺りを見回している。
私は止まった時の中をゆっくり移動しただけだが、物理的には光の速度を越える動きだ。
うわぁ、この魔法マジヤバなんですけど!
「魔力ドカ食いするから連発できねーからな」
確かにかなりの量の魔力を消費していた。
妖魔闘気や大猿化も比較にならない程だ。
乱発したら一気に魔力が枯渇しちゃうよ。
「ってか、ぼっちさんは私の魔力使ってるんだから、それこそ勝手に発動しないでよ」
「ははは、まぁ一発目はちゃんと発動するかの実験だから許せ」
実験を実戦でやるとか危ないから!
まぁ、このタイミングで漸く完成した魔法なんだからしょうがないのか……。
でもこれで劣勢から逆転できるかも。
「ぼっちさん、私の今の魔力で最大何秒時を止めれる?」
「20秒で枯渇だ」
『龍の轟き』を無効化する毒を生成するのに使う魔力量分差し引いたらギリギリか……。
でも多分、今この世界で龍王に勝てる者はいないと思う。
いかにチートなスキルを持つ勇者であろうと、全員でかかったとしてもきっとあの硬質な鱗を貫けない。
だから、今せめて『龍の轟き』だけでも無効化しておかなければならない。
どうせ20秒程度じゃ逃げ切れないし他に方法も思いつかないから、やるしか無いね。
「ぼっちさん、私が龍王に近づいたら、15秒だけ時を止めて」
「わかった。だが、15秒で仕留め切れるのか?」
「たぶん無理」
「うおぃっ!」
「だから私がやられたら、いい人に拾われてね」
「え?おい、お前っ!?」
大猿化も妖魔闘気も残り時間僅か。
これが最後の攻撃だ。
私は龍王に向かって駆け出す。
それに合わせて龍王もこちらへ向かって跳んだ。
交錯する瞬間、
「今っ!」
「くっ、『時間停止』っ!!」
世界が静寂に包まれる。
「おい、アイナ!無茶すんなよ!」
「残念ながら、無茶しなきゃなのよ」
心配してくれるぼっちさんには悪いけど、この『龍の轟き』だけは消し去っておかないとなの。
『龍の轟き』を無効化するには15箇所もクリティカルポイントに毒を打ち込まなければならない。
止まった時の中で順番にクリティカルポイントに毒を打ち込んでいく。
1発打ち込むのに1秒必要になる程の強力な毒。
その最後となる15発目が打ち込まれると同時に、時が動き出した。
この物語はファンタジーです。
実在する時間停止とは一切関係ありません。




