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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第四章『円卓編』
189/258

189 対龍王 3

 龍化した龍王の強さは想像を絶するものだった。

 吐き出されるブレスに対して、妖魔闘気を全開にしても逃げ続ける事しか出来ない。

 幸いにも思ったよりブレスの範囲は狭いから何とかなってるけど。


「ちょこまかと逃げおって!的が小さくて面倒だっ!」


 自ら大きくなっておいて酷い言い草だ。

 でも逃げる分にはこのままの方がいいけど、攻撃出来なきゃただのジリ貧よ。

 やっぱりこっちも巨大化するしか無いか。


 私は青く輝く光の玉『擬似月(毒)』を生成して上空に放った。

 龍王のブレスで破壊されないようになるべく高い位置で固定する。

 この世界の月の光に近い冷えた色の輝きを見て、私の心拍が早まっていく。

 龍王の攻撃を避けながら、次第に巨大化して行く体で駆ける。

 そしてビリビリと破ける服……巨大化に耐えられる伸びる服が欲しいっ!!

 大猿に変貌した私は、走り抜ける勢いそのままに龍王に突撃した。

 しかしガンっというぶつかる音がしただけで、簡単に受け止められてしまう。

 龍の体を覆う鱗は予想以上に硬かった。


「でかくなっただけで互角だなどと思うな!!」


 龍王は私の腕を掴んでブンブンと振り回す。

 ほぼ体重差は無いはずなのに一方的に大猿化した巨体の私を振り回すとか、どんな膂力してんのよ!?

 このままでは投げ飛ばされてしまうので、私は足の裏で龍王の腕を掴んだ。

 獣化した私の足は手と同じ程度に物を掴める。

 龍王が私を放り投げようと手を離したが、逆に捕まっていた足に力を込めてその反動を利用して投げ返す。


「ぬうっ!?」


 上手く投げれたと思ったのに、龍王は空中で翼を広げて体勢を立て直した。

 空飛べるとかズルいっ!

 くそぅ、飛べない猿はただの猿だと思うなよっ!

 私は空中に足場を作って、駆け上がる様に龍王に肉薄する。


「ちっ、その巨体で空を駆けたりも出来るとは厄介なスキルだな!」

「空飛んでる奴が言うなあああぁっ!!」


 叫びながら右拳を龍王に叩きつける。

 しかし相手が地面に踏ん張っていないせいか、あまり衝撃が伝わっている気がしない。

 そもそも何でドラゴンの翼の構造で空中ホバリングできんのよ?

 ファンタジーでよくある「翼は空を飛ぶために魔力を変換する器官」って奴?

 ってそんな事に気を取られてると拙い。

 私は体勢を立て直そうとしたが、今度は龍王の鉤爪で両手両足を掴まれてしまう。


「ヤバっ!?」


 私の動きを封じたまま龍王は急降下を始めた。

 そのまま地面に叩きつけるつもり?

 忘れてもらっちゃ困るけど、手足が使えなくても私には『煌猿の咆哮』があるんだからね。

 口を開けて咆哮を放とうとすると、それを警戒してか龍王は身をひねる。

 私の狙いは体じゃなくて、その邪魔な翼だよ。

 閃光が龍の翼を貫いた。


「グオオオッ!!」


 大したダメージにはならないが、龍王は顔を顰める。

 翼が使えなくなった龍王は私と一緒にそのまま急降下していく。

 そしてそのまま地面に激突。


「ぐぎゃあああぁっ!!」


 受け身を取ろうとしたけど龍王は最後まで鉤爪を掴んだまま放そうとしなかったので、私は全身を地面に打ち付けてしまった。

 翼を打ち抜けば落下するのを躊躇って放すと思ったが甘かった。

 体中の骨が折れ、内蔵も破損して激痛が襲う。

 大量に吐血して呼吸もままならなくなってしまった。

 急ぎ口内に回復薬(毒)を生成するも、回復が間に合わない。

 なんとか意識を保って回復に専念しようとしていると、先に龍王が自動回復して立ち上がって来てしまった。

 私も無理矢理体を起こし立ち上がるが、うまく体を動かせない。


「お前の方が下だったのでダメージに差が出たな」


 龍王が右手の鉤爪で突きを放ってくる。

 私は躱そうと身をよじる。

 しかしまだ回復しきっていないために鉤爪の一本に腕を貫かれてしまった。


「うああああああっ!!」


 ダメージを受けすぎているせいか、回復が遅すぎる。

 今までこれほどダメージを受けた事が無かったから、スキルが鈍化するという事を経験していなかった。

 焦れば焦る程回復の精度は落ちる。

 次々に繰り出される鉤爪による刺突で、私の体は徐々に自由を失っていった。

 終には地面に膝を突き、頭垂れる。


「ふ、ふはははははっ!!龍族に喧嘩を売った事を後悔してあの世へ行くがいい!!」


 体に力が入らず、感覚も失われていく。

 もう、ダメだ……。

 そう思った時、突然私の目の前に巨大な魔法陣が展開される。


「え……?」


 それは回復の魔法陣。

 暖かい光が私へと流れ込んで来た。

 私は毒で回復した方が効率的だから使わないけど、魔法の専門家であるリスイ姉に教えてもらってたので形だけは知っていた。

 というか私の毒より余程早い速度で回復していく。

 よく見ればあちこち改造してある特殊な魔法陣だった。


「おいおい、俺が色々やってる間に大ピンチになってるじゃねーか。回復が間に合って良かったぜ」


 しばらく聞いていなかった声を聞けて、一瞬呆けてしまった。


「ぼっちさん……?生きてたんだ……」

「生きてるわ!勝手に殺すな!」


 いやだってずっと沈黙してたから。

 急激に回復した私を見て龍王が驚愕する。


「な、何だ!?それほどの急速な回復、貴様一体何をしたっ!?」


 本来の詠唱魔法では魔法陣は固定のものしか発動出来ない。

 だが、ぼっちさんは魔力を直接魔法に変換出来るので、魔法を発動する為の魔法陣に改良を加える事も自在だ。

 おそらくそれで改良した回復魔法で高速回復してくれたんだと思う。

 でもぼっちさんが復活したとしても、ちょっと手数が増える程度。

 とてもこの龍王には勝てる気がしないよ。


「おいおいアイナ、俺がいるんだから絶望的な顔すんな。今すげーもん見せてやるからよ」

この物語はファンタジーです。

実在する擬似月及び回復薬とは一切関係ありません。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ぼっちさん本当に伝説だったんだ……
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