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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第四章『円卓編』
187/258

187 対龍王 1

 どこまでも続く草原には身を隠す場所も無い。

 つまり正真正銘真っ向勝負しなければならないということ。

 とりあえず魔闘気だけ纏って様子見と思ったんだけど、


「どこを見ている?」


 クリティカルポイントで視えているのに反応が遅れた。

 龍王は瞬時に私の後ろへ移動していて、咄嗟に身を捻るが躱せずにモロに蹴りを食らってしまう。


「くっ!」


 魔闘気をガードに集中したお陰でダメージは無いけど、地面へ叩きつけられてしまう。

 素早く体勢を立て直すが、何故か龍王は追撃せずにゆっくりと歩いて近づいて来た。


「麟器を2つも持っててもその程度か?まるで話にならんな」


 完全に向こうが速度で上回ってる状態——これは一段階ギアを上げないと厳しそうだね。


「じゃあちょっとだけ本気出す」

「さっさとしろ。力を試す前に殺してしまいそうだ」


 余裕綽々しゃくしゃくですか。

 すぐに顔色変えてやるかんね。

 私は丹田に力を込めて獣の力を解放した。

 体は一回り大きく変化し、全身から白銀色の毛が逆立つように生えてくる。

 獣人族特有の獣化によって、私の力は大きく増加した。

 私の両親は絶対人族だと思うんだけど、私は獣王の腕輪を付けた日から尻尾が生えて獣人族になってしまった。

 でもそのおかげで今、目の前の脅威にも対抗出来る。

 当初は私に獣王の腕輪を渡した白銀の鎧の人に、なんて事してくれてんねん!って思ってたけど、今ではちょっと感謝している。

 獣化した体に魔闘気を巡らせ、戦闘の準備は整った。


「行くよ」


 地を蹴り、一瞬で龍王との間合いを詰める。

 低い体勢から伸び上がるように拳を突き出すが、龍王はそれを片手で受け止めた。

 私は拳を掴まれる前に素早く腕を引いて、そのまま回転しながら顔面に向けて蹴りを放つ。

 龍王はそれを避けずに、寧ろ顔を突き出すようにして額を打ち付けて来た。

 ぶつかり合った衝撃が、轟音となって周囲に響く。

 そこから怒濤の連続攻撃を仕掛けるが、私の動きが見切られてるようで中々攻撃が通らないのがもどかしい。


「ほう、それでこそ我が力を試すに相応しい」


 龍王はまだ全然本気じゃないとでも言いたげだ。

 途中魔素(毒)を生成して魔法を織り交ぜてみるも、魔法による攻撃は防御するまでも無いようで鱗に当たって全て弾かれてしまう。

 次にファン○ル(毒)で牽制してみるが、小細工は全て鱗で弾かれるだけで大したダメージも与えられない。

 迂闊にクリティカルポイントを突きに行けば、大振りになった攻撃の隙を突かれて逆に拳で殴られる。

 獣化までしているのに全く崩せる気がしなかった。


「どうした?妖魔闘気は使わないのか?いや、制限があって使えないのか」

「っ!?何で妖魔闘気の事知ってんのよ?」

「俺の能力は、この世界に於ける龍に連なる者を全て支配下に置けるというものだ。それは龍の嘆きで龍化した者も例外ではない。そして支配下の眼を通して離れた場所の映像も見る事が出来るのだ」


 そういえばヴァイスさんがそんな事言ってたっけ。

 なるほど、それで王城での戦闘もバズとクレグの目を通して全部見られてたって訳ね。


「それで支配出来ない例外を作れる私が邪魔だから排除したいのね」

「猿の割に理解が早いな」

「猿はずる賢いんだよ」


 会話しつつも隙を探るけど、龍王は意外と戦闘慣れしていて毒を打ち込むのも難しい。

 感知出来ない毒を大気中に撒こうと思ったけど、それも魔力の流れで気付かれてしまう。

 これは確かに龍王の言う通り妖魔闘気を使うしかないのかも知れない……。

 敵に言われるって癪だけどね。


「じゃあ見せてあげるよ妖魔闘気を」


 私は自身の腕に妖力と魔闘気を融合するファンタジー毒を打ち込んだ。

 全身が一瞬輝き、煌めくオーラが体毛を黄金色に染める。

 黄金の猿となった私は、音を置き去りにして龍王の腹へ拳を叩き込んだ。


「ぐぶぉっ!?」


 今まで効かなかった攻撃がようやく通り、硬質な龍の鱗を砕いて拳が深くめり込む。

 この期を逃さないように、連続で龍王の急所へと拳を打ち込んでいった。

 しかし妖魔闘気で強化された私の速度ですら、龍王の速さにクリティカルポイントを捉え切れない。

 龍王の流路がほとんど乱れていない事からも、ダメージはそれほど大きくないと思われる。

 それでもさすがに耐えきれなくなったのか、龍王が反撃してきたので一旦距離を取った。


「ふぅ……、思った以上に強いな妖魔闘気は」


 呼吸を整えるように構え直す龍王。


「だが、思った以上ではあったが俺を倒せる程では無かったな」


 そう言った龍王の気が大きく変化した。


「我が龍族には龍気というものが存在する。人族の気の上位となるそれは魔力と融合し、勇者の魔闘気を越える絶大な力を発揮するのだ」


 先程まで魔力だけを高めていた龍王は、龍気と呼ばれる気を高めて魔力と融合させていく。

 大地だけでなく空までが震えているようだ。


「ふんっ!!」


 龍王の奮った腕を妖魔闘気でガードしたが、体重差でそのまま吹き飛ばされてしまった。

 というかガードがやっとで、躱す事が出来なかった。

 魔力と融合した龍気——龍魔闘気といったところだろうか。

 妖魔闘気でこちらの力が上回ったと思ったのに、簡単にひっくり返されてしまった。

 あれを相手にどう闘えばいいんだろう?

 などと悩んでいると、龍王は更に衝撃的な事を言い出した。


「どうやらここはどこかのダンジョンの深層のようだな。呼び寄せた支配下の龍族達が辿り着くのに時間がかかっている。だが、お前に残された時間はせいぜい1時間といったところだろう。いかにお前が支配から解放できるスキルを持っていようとも、数千に及ぶドラゴンの群れを相手に生き延びる事は出来まい」


 数千のドラゴンとか……マジ?

 それがここに到達する前に龍王を倒さなきゃいけないって、どうしたらいいのよ?

この物語はファンタジーです。

実在する魔素及びファン○ルとは一切関係ありません。

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