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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第四章『円卓編』
180/258

180 盟約

 徐々に高まるジャネスの闘気。

 それでもようやく修行前の私と同程度になったレベルなので、はっきり言って相手にならない。

 でも一発ぶん殴らないと気が済まないからね。


「それが限界?」

「黙れっ!お前だけは許さねぇっ!!」


 ジャネスは気を拳に込めて私に殴りかかってきた。

 許さないのはこっちですけど。

 私は気だけ・・・を練って拳に込める。

 ジャネスの動きはクリティカルポイントを視るまでもなく、ゆっくりと躱せる。

 向かってくる拳の下をかいくぐり、しゃがんだ姿勢から上に伸び上がるように顎を打ち抜いた。


「ぐべゃあっ!?」


 ジャネスの顎は砕けて一瞬宙に舞い、そのまま白目を向いて仰向けに地面に落下した。

 ビクンビクンと痙攣して体が跳ねる。

 一応呼吸はしてるし、魔闘気じゃないから辛うじて生きてはいるようだ。

 気だけにしといて良かった。


「なんじゃ今の殴り方は?」

「カモシカパンチだよ」

「カモ……良く分からんが、後はこちらに任せて席に戻るがよい。お主は一応魔王じゃからの」


 カク爺がジャネスを拘束して部屋の隅に転がした。

 一発殴ってスッキリしたし、後は勇者達にお任せしよう。


 仕切り直すように、席についたカク爺が再度宣言する。


「魔王諸君、待たせて悪かったのぅ。これより円卓の会議を開催する」


 しかし拍手をしているのは軽薄そうなライズさんだけ。

 この人も謎だなぁ。

 たぶんジャネスを従者にして連れてきたのって、弟子にしようかと思ってなくて、ここでつるし上げるつもりだったんじゃないかな?

 つまりジャネスの本性も見抜いてて、ひょっとしたら全ての企みも看破してたのかも。

 そんな人がこの会議に参加してるってだけで、ちょっと身震いするんですけど。

 さすが魔王と勇者が集う会議だ、一筋縄じゃいかない。


「それで、今回召集をかけたのはどんな理由だ?まさか今の茶番を見せるためではあるまいな」


 金色の瞳を持つ天使が急くように発言した。

 ここは召集の魔導具を使った私が理由を述べるべきだよね?

 と思いきや、


「魔導王に問うわ」


 キャサリン姉に先手を取られた。


「あなたは何故円卓の盟約を破り、領地を勝手に離れたのかしら?」


 円卓の盟約についてはカク爺とマル婆から事前にある程度説明は受けている。

 魔王は各々で領地を持っていて、勇者の承諾無しに勝手に領地を出てはいけない事になっているらしい。

 これは魔王が他国への侵略を行わないようにする為の処置であり、同時に領地内にいる種族や魔物への抑止の意味もあるという。

 この盟約のおかげで人族の国は侵略されないし、悪さする者がいた時には魔王が鉄槌を下してくれるので、世界の平和が保たれるのだ。

 しかしそれ程に一方的な内容だけでは魔王達が納得する訳も無く、当然盟約は成立しない。

 その為、勇者側にも枷が掛けられている。

 勇者は魔王に関する事以外での国等への干渉を制限されており、これは魔王の支配する領域にも適用される。

 なので魔王は自身の支配地に限り、やりたい放題出来てしまうのだ。

 そして勇者はギルドからの魔物討伐依頼などは受けれるが、人族の国が魔王の領地へ攻め込む際には参加出来ない。

 それどころか特定の国に所属する事も出来ないので、勇者は国籍の無い風来坊となってしまう。

 キャサリン姉とリスイ姉が王国に家を買ったように住処を持つ事は出来るが、国からの社会保障等は一切受けられないのだ。

 勇者は国に所属できずに完全な独立採算を求められる事になる。


 さてそこで今回キャサリン姉が問題にしたのが、魔導王の動向だ。

 魔導王はとある山岳地帯の一部を領地とする事になっているのに、最近になって龍王や不死王に接触する為に勝手に移動していたらしい。

 魔王達に領地を定めているのは魔王同士が手を組んで悪さするのを防ぐ為でもある。

 それを警戒してキャサリン姉とリスイ姉は動いていた。

 ただリスイ姉は他にも理由があるようだったけど、詳しくは教えてもらってない。

 リスイ姉のスキルは魔法に関係するものだから、何か繋がりがあるのかな?


「ふん、くだらん。俺がどこで何をしようと俺の勝手だ。そもそも多数決で決めた盟約などに従うつもりも無い」


 あぁ、前世でもいたわぁこういう奴。

 マイノリティを無視してるとか言って抗議したりするんだよね。

 少数派の意見全部拾ってたら何もできんわ。

 その為の多数決なのに……。


「それに、その娘だって自由に動き回ってるだろうが」

「え?私?」


 あらぁ?私にお鉢が回って来たよ。

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