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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第四章『円卓編』
175/258

175 狂戦士

 さっき魔導王が言ってた「彼我の実力差が分からない」ってのをジャネスにも言ってあげたい。

 でも何か場の空気が、勇者の事は勇者だけでみたいになってて発言できないよー!


「この娘は弟子ではない。そもそも勇者の弟子とは強さだけで決まるものではないわ」


 勇者の弟子って強さ基準で選んでるんじゃないのか。

 ライズさんは知らんけど、他の5人の勇者は化物級に強いから、てっきり魔王を止められるぐらいの強さが基準になってるものかと。

 ジっちゃんの弟子である閃紅姫レイアさんも強さは相当のものだし。

 レオナさんがキャサリン姉に弟子入り志願してきた時も結局力で納得させちゃったし。

 だからジャネスが強さについて主張するのも分からなくはない。

 カク爺は強さ以外にも必要なものがあると言いたいんだろうけどね。

 そこへマル婆が割って入る。


「よかろう。そこまで言うならこの娘と闘ってみるがいい」


 マル婆がレントちゃんと闘う事を許可しちゃったよ。

 あれ?これ止めた方が良くない?

 ジャネスコロサレチャウヨ……。

 以前はちょっとおどおどしていたレントちゃんだが、今はそんな様子も無くじっとジャネスの方を見つめている。

 修行によって精神も鍛えられたレントちゃんに隙は無さそうだ。

 ……あ、いや違った。足だけめっちゃ震えてるし。


「だが安全の為に結界の魔導具を使うよ。万が一の事が無いようにね」


 マル婆は収納魔導具から一つの魔導具を取り出した。

 それを操作すると、学園のクラス対抗戦で使われていたような結界が生成される。

 あの結界の中ではどれだけ大ダメージを負っても、ギリギリ命だけは助かるようになってるらしい。


「あぁ、大事な弟子候補が殺されないようにですね」


 ジャネスが軽口を叩くと、カク爺とマル婆の目が鋭く細められる。

 絶対レントちゃんがジャネスを殺しちゃわないようにしたんだと思うけど。

 あの魔導具、ちゃんとレントちゃんの力に耐えられるんでしょうね?

 一応心肺蘇生の準備もしとこっと。


 これだけ勇者側がワイワイやってるのに魔王側は身動ぎもせずにじっと待っている。

 あんたら魔王なのにしつけ行き届き過ぎてない?

 それでいいのか、魔王?

 なんて思ってる間に、レントちゃんとジャネスが結界の中に入って行った。

 そして向かい合う2人。

 異空間で修行したために少し背が伸びたレントちゃん。

 しかし、それでもジャネスの方が頭2つ分ぐらい背が高い。

 体格だけ見れば圧倒的にレントちゃんが不利に見えるけど、私にはジャネスが勝てるビジョンが全く見えない。

 それでも挑むジャネスは、ある意味勇者……?


「それでは……始めっ!」


 マル婆の掛け声と共にジャネスが身構える。

 そこにノータイムでレントちゃんの水レーザーが撃ち出された。

 空中の水分を圧縮して打ち出す高圧の射線がジャネスを襲う。

 修行によって速度も強化されたそれに、ジャネスは一歩も動けず両足を貫かれた。


「ぐあっ!?な、何だ今のはっ!?」


 それぐらいで驚いてたらとても勝負にならないよ。

 次々に放射される水レーザーをジャネスは何とか転がって躱す。

 しかし最初に足を貫かれたせいで思ったように動けないようだった。


「思ったより強いな。ならばこちらも本気を出そう」


 ジャネス、余裕見せてないでさっさと本気でやらないとヤバいから。

 レントちゃんは全然本気じゃないし、何なら初撃を当てれたから精神も落ち着いちゃってるよ。

 本気を出すと言ったジャネスは全身に力を込めると、急激に気の量が増した。


「『狂戦士化バーサーカー』っ!!」


 ジャネスの叫びと共に体から湯気のようなオーラが立ち上り、筋肉が隆起していく。

 それに伴って皮膚の色が緑色へと変色していった。

 体が一回り大きくなり、目も赤く染まった姿はまさに狂戦士のようだった。

 これがジャネスのスキルか……。


「ガアアアアアアアアァッ!!」


 咆哮を上げた狂戦士ジャネスは一瞬でレントちゃんとの間合いを詰める。

 そして振りかぶった右拳をレントちゃんに向かって勢いよく叩きつけた。

 そして砕けた……拳が。


「グアァッ!?」


 どういう訳か、レントちゃんって防御力が異常な程高いのよね。

 冒険者ギルドでも絡んで来た人の攻撃が反射してたかのように効いて無かったし。

 強い力で殴ればそれは硬い壁を殴ってるようなもので、ダメージは全部自分に返ってくる。

 更に攻撃は遠隔系だから逃げられないときたもんだ。

 正に魔王……今は勇者の従者だけど。


 水レーザーが動きの止まったジャネスの体を滅多打ちにした。

 しかしそれは意外にも効いていないようだった。

 狂戦士化した肉体はそれなりに丈夫みたいだ。

 お互いの攻撃が効かないという事で膠着するかと思ったけど、ジャネスは攻撃するとダメージ受けるからジリ貧なんだよね。

 それにレントちゃんにはアレがある。

 結界内に雷鳴を伴う雨雲が作られていき、そこからジャネスに向かって稲妻が撃ち込まれた。


「ギャアアアアアアァッ!!」


 プスプスと煙をあげてフラつきつつも、狂戦士はまだ攻撃しようと拳をレントちゃんに打ち付け続ける。

 その度に骨が砕ける音が周囲に響いた。

 あの狂戦士化って自分の意思で戻れないのかな?

 自動攻撃し続けるとどんどんダメージが蓄積していくと思うんだけど……。


「雷も効かないし、アレやっちゃおうかな?」


 ボソリとレントちゃんが何かを呟いた。

 次の瞬間私に見えたのは、奇妙な魔力の流れと、急激にしぼんでしまったジャネスだけだった。

 骨と皮だけのようなヒョロヒョロの体になったジャネスは、その場に突っ伏すように倒れてしまった。

 レントちゃん、何やったの……!?

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