017 しっぽ
まさかの副作用でしっぽ生えるなんて……。
体の状態が悪くなる訳じゃないからいいのかな?
一応、願いを込めて腕輪を外そうと試みるも、
「外れない……」
いや、何となく外れないんだろうなとは思ってたけど、やっぱりかい……。
まさか呪われてんじゃないよね?
『力が欲しいか?』なんて言ってくる奴と契約しちゃいけないんだわ。
それにしても、しっぽが生えてると目立っちゃうし、なんとか隠さないとだね。
もっと短ければ服の中に入れておけばいいだけなんだけど、普通に私の胴周りを一周するぐらい長さがある。
オナガザル系のしっぽなのかな?
某戦闘民族はしっぽを腰に巻き付けて帯みたいに見せてたから、それに倣ってみることにした。
しっぽはとりあえずこれで大丈夫。
一応、どれぐらい強くなったのか確認しておこうかな。
近くにあった私の体の2倍ぐらいある岩を持ち上げてみる。
重さを全く感じずに、軽々と持ち上げてしまった……。
あまりにも軽すぎて私の力が凄いのか岩が軽いのか分からない。
その岩はそのまま下ろし、次は私の体の3倍ぐらいある岩を持ってみた。
少し重さを感じたけど、まだまだ全然行けそうだ。
次に私の体の4倍ぐらいある岩を持ってみた。
「4べぇだあっ!!」
掛け声の必要も無く、軽々と持ち上げてしまった。
何この腕輪、チート過ぎない?
いや、この辺の岩が軽すぎる可能性もある……。
腕輪取った状態で持ち上げてみないと、パワーアップしたかどうか分からないもんね。
過信は良くない。
先程、高位ランクスキルを持つ人の戦いを目にしたばかりじゃないか。
あれで私のスキルは所詮Fランクなんだと思い知った。
ちょっと力が増したぐらいでは簡単に足元を掬われかねないし、ジっちゃんや白銀の人と渡り合えるぐらいになるまでは、正面切って戦うのは避けた方がいいと思う。
イメージ次第でどんな毒でも生成できるからと慢心していた。
もっと研鑽を積まないと……。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
獣人の国アインホルンの城の一室で、気を失っていた女性は目を覚ました。
「知らない天井……」
「いや、知ってるでしょ。あなたの部屋ですよ?」
冷静に突っ込む幼なじみにジロリと視線を向ける女性。
「お前が運んでくれたのか?」
「いえ、白銀の鎧を着た者が運んで来ました。治療もかの者が行ったらしいです」
「っ!?何者なんだ奴はっ!?」
「それは私にも分かりません」
「新月とはいえ、私が手も足も出ないなんて……。新しい勇者か何かか?」
「ひとまず敵対する意思は無いようです。帝国への牽制を行ってくれるそうですから」
「そうか。獣王に求められるのは強さだけだ。敵でないのなら、奴が新しい獣王としての責務を負ってくれれば、私も言う事は無い」
「それが……」
「どうした?」
「どうやら獣王の腕輪は別の者に渡したそうです」
「な、何だとっ!?」
勢いよく起き上がった女性は拳を握りしめる。
「白銀、何を考えている!?……まさか、あの場にいた人族の小娘に渡したのか?」
「いずれにしても、あなたは一旦身を隠してください。どうせ一年は腕輪を取り戻せないのですから」
「あぁ……。魔王の一角が崩れたと知れれば世界の均衡が崩れるからな」




