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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第四章『円卓編』
163/258

163 妖魔闘気

 修行というのは同程度の強さの者同士で切磋琢磨する事で相乗効果が生じる。

 元魔王達の力は拮抗していたけど、私だけはそれに少し足りてなかった。

 初めは毒で誤魔化していた。

 でもそのせいで徐々に実力が引き離されていった。

 紛い物の力では相乗効果が薄かったからだ。

 真なる力を得るには姑息な手段は逆に足枷となった。


 一人取残される訳には行かないので、3人の元魔王が順番に私を鍛える事になった。

 皆には申し訳無かったけど、そうすることで元魔王達の進化は鈍化し、私が追いつく余地が出来た。

 ようやく魔闘気を身に付けて皆に追いついたと思ったところで、その先が視えてしまった。

 私には決定打になる必殺技が無い。

 師匠の『獅子の咆哮』、ミミィの『暗黒爆裂掌』、ヴァイスさんの『白焔覇龍』と元魔王は相手を圧倒出来る技を持っている。

 ミミィのは最近技名を考えたみたいだけど、技としては以前から使えたらしい。

 そんな事はどうでもいい……。

 そうするとまた私だけ互角に闘えないので成長が遅れる事になる。


 反物質を生成——は世界が崩壊するので却下。

 毒を組み合わせてレールガンという事も考えたけど、発動までに時間がかかる。

 そんな中で編み出したのが妖気を魔闘気と融合させる技『妖魔闘気』だ。

 気と妖気は本来相反するモノなので、どちらも内包出来るのは世界中でも私しかいない。

 つまり完全にユニークな必殺技なのである。

 毒で無理矢理融合させているせいで10分という時間制限はあるものの、元魔王が3人で連携を取ったとしても抗える程強力な力となった。

 更に修行によって、それを1日に10回程度は使えるようになった。

 もっとも普通の・・・魔王クラス相手であれば1回の使用で十分殲滅できる。

 そしてこの『妖魔闘気』の凄いところは、ゾーンと呼ばれる超集中状態に入れる事だ。

 一流アスリートの中には集中力が高まった時にゾーンという特殊な状態になれる者もいる。

 周囲の余計な情報を遮断し、人によっては色まで消え去ってしまうと言う。

 その極限とも言える状態によって通常では引き出せないパフォーマンスが可能となるのだ。


 現在そのゾーンに入った状態で周囲を見回している。

 先日バズに殺されかけた時のように周囲の時間がゆっくり流れているように視える。

 あれもたぶんゾーンに入っていたんだと思う。

 バズが私の横に回り込もうとしているが、まるでスローモーションだ。

 まずはその両足を封じるべく私はローキックを放った。

 バズの足の膝から下が吹き飛んで、遅れてその下で城が大きく崩壊した。

 私が魔闘気でクレグと闘っていた時に異常な程の戦闘音を響かせていたおかげか、城に居た人達は既に皆逃げ出しているので巻き込む心配は無い。

 多少崩壊してもここにいる私と侯爵達の足場が無くなるだけだ。

 いやまぁ、ソフィア王女が戻る為の城も無くなっちゃう訳だけど……。


「グギャアアアアっ!!」


 遅れてバズの悲鳴なのか怒りなのか分からない叫びが聞こえてくる。

 次いでクレグが動きが鈍くなった体で私に覆い被さろうとしてきた。

 拳を強めに突き上げるとクレグの肩が弾け、そのままの勢いでクレグは吹き飛び全身を天井に打ち付けた。


「な……な……」


 もう言葉もろくに発する事が出来ない侯爵は、崩れゆく城を見ながら唖然と立ち尽くす。

 私は、クレグとバズが身体の再生を行なっている隙に、2人のクリティカルポイントを確認する。


「それぞれ5箇所か。結構多いね」


 両足を再生したバズが立ち上がってこちらへと駆け出す。

 同時に私も距離を詰めた。

 右肩、左二の腕、右脇腹と毒針を刺したところで反応されたので距離を取る。

 バズが振り回す大剣を掻い潜って右太腿、左腰と計5箇所に毒を打ち込んだ。


「ぐっ!?何……!?」


 龍の鱗が剥がれ落ち、人族の平坦な肌へと戻って行く。

 体の各所の隆起した部分は溶けるように体内に引っ込む。

 僅か数秒でバズは元の人族の姿へ完全に戻ってしまった。


「も、元に戻った……!?」


 ほっとしてるとこ悪いけど、鳩尾にもう一発毒針を打ち込む。


「ぐぼぁっ!!」


 今度のはスキルを消す毒だ。

 勢い余ってバズの体がくの字に折れ曲がり、スキルが使えなくなった事で重くなった大剣は地面に大きな音を立てて落ちた。

 バズから離れると、クレグが狂ったように腕を振り回して後ろから迫ってくる。


「ガアアアアアッ!!」


 振り下ろした腕は私の残像を叩いてそのまま地面にめり込んだ。

 高速で動き既に後ろへと回り込んでいた私は、背中側から深めにクレグのクリティカルポイントを突いていく。

 5つ突き終えたところで、クレグが苦しみ始めて体から鱗が剥がれ落ちていき、そのまま気を失ったようで動かなくなった。

 魔闘気を纏った私と闘っていたせいで服がボロボロだったため、人の姿に戻ったクレグはかなりの広範囲がはだけてしまっていた。

 エロジジイを退避させといて良かったよ。


「薬の効果が消えただと……!?あれは一度使ったら元に戻れない筈だ……」

「元に戻っただけじゃなくて2度と薬の効果が出ないように処方しときましたぁ」

「何だとぉっ!?」


 龍化を元に戻す毒に免疫力が付いてしまう後遺症を付け加えておいたのだ。

 後は侯爵のスキルを消すだけで今日のミッションは終了だ。


 それにしても城がもう修復不可能なぐらいボロボロになっちゃったなぁ。

 妖魔闘気で高速移動とかしたから柱や壁は殆どが抉れてたり吹き飛んでたり……うん、やり過ぎたかもね。

この物語はファンタジーです。

実在する修行とは一切関係ありません。

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