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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第四章『円卓編』
159/258

159 王城潜入

 再び王都へ舞い戻る。

 どこでもド……どこへでも一瞬で行けるドアで、私達は王都の自宅があった場所へと出た。


「ほんとすげぇ魔導具だよな。これがあればどこにでも行けるんだろ?」

「実際はどこにでもって訳には行かないらしいよ」


 九曜が言うとおり確かに便利ではあるけど、万能ではないとマル婆から聞いている。

 このドアで飛べる先は一度行ってアンカーを打ち込んだ場所だけ。

 亜空間に打ち込んだアンカーが出口になる扉を開く事で、空間同士を結合して通れるようになる仕組みらしい。

 これは空間を認識するスキルを持つマル婆にしか作れないとのこと。

 セキュリティも万全で登録者しか開けれないし、悪意ある者にはそこに扉がある事すら認識出来ないとか。

 ステルス性能はカク爺が使ってる隠密魔導具と同じ原理なのかな?


 とりあえず魔導具の考察は後にして、今は王城を目指さないとね。

 今回はカク爺と九曜が同行者……というかお目付役だ。

 みんな心配性だなぁ。

 ぼっちさんを白い円柱にして、私達3人は乗り込んだ。


 ぼっちさんごと隠密の術で姿を隠し、上空から城に潜入する作戦だ。

 作戦と呼べる程の事でもないけど……。

 何やらクリティカルポイントが多数集まっている場所があるので、とりあえずそこへ向かってみる事にした。

 廊下に降り立ちそちらの方へ進んで行くと、そこはよくある王が謁見する広間の様であった。

 広い部屋の中央に赤い絨毯が玉座へ向かって敷かれている。


「皆良く集まってくれた」


 その先の玉座に座る人物が、室内にいる貴族らしき人々に声を掛ける。

 あの人が王様……じゃないよね。

 確か王族はルールーが逃がしたはず。

 じゃああれは誰?って事になるけど、あのものすごく既視感がある金髪のリーゼントを見れば大体察しがつく。

 あれが公爵か。

 堂々と玉座に座って簒奪さんだつが完了したと言わんばかりだ。

 そしてこの広間に集まっている貴族達は公爵に忠誠を誓う者達なのだろう。

 明らかに貴族らしい人が20名程とその護衛らしき人達が周りを固めている。

 玉座の脇にも数名の貴族が控えており、その中に例の侯爵がいた。

 侯爵の後ろに控えるようにバズも立っている。

 都合良く2人共いるけど、どこかへ移動するのを待つ?

 いやでも、ここにいる貴族はソフィア王女が戻った時に必ず足を引っ張る存在になるよね。

 今この場でこちらの勢力の力を見せておいた方が良いような気もする。


『お嬢、あんまり騒ぎを大きくしないでくれよ』


 なんで私の考えって読まれちゃうの?

 姿を消してるから顔に出てても分からないはずなのに。


『大丈夫だよ、ちゃんと殲滅するから』

『全然大丈夫じゃねぇ!!王城で大きな騒ぎ起こしたら、帝国とか教皇国にも伝わって動きづらくなるだろうが』

『あぁ、そっか。意外と考えてるね、九曜』

『意外とは余計だ』


 まぁ私としてもあまり大騒ぎになるのは望むところじゃないんだけどね。

 どうしようかなと思ってると、玉座に座る公爵へ側近らしき人が耳打ちしている。

 そしてその人がチラッとこちらを見た。

 あれ?バレてる?

 索敵系のスキル持ちかなぁ?


「どうやら招かれざる客が来ているようだな」


 招いてない客が来た時ってとってもウザいよね〜、わかるわかる。

 私も王子が来た時めっちゃ嫌だったし。


『バレてるじゃねーか』

『だねぇ。九曜とカク爺は隠れてて。私一人でやるから』

『バレてるのに隠れてる意味あるか?』

『たぶん姿までは見えてないっぽいから意味はあるんじゃない?』


 流路を視る限り私達が視えてるんじゃなくて、空気の流れが滞ってる場所を視てるみたいだし。

 不意に、公爵に耳打ちしてた人が私に向かって武器らしきものを投げた。

 それをぼっちさんで弾くと同時に私だけ隠密を解いた。


「また来たのか」


 侯爵が忌々しそうに呟くと、後ろに控えていたバズも大剣を抜いて構える。

 貴族達は騒然としたが、その護衛達の動きは早く、主人達を守るように立ち回っている。


「何だこの小娘は?この人数に立ち向かえるつもりか?」


 公爵は何故か余裕の表情。

 あれ?私の事報告してないの?

 普通なら危険因子であればトップに報告が行くものだけど。

 失態を隠蔽した?

 あるいは侯爵も玉座を狙っている?

 帝国の動き次第で切り捨てるために、目立つところに置いてるとか?

 いずれにしても報告を上げてないなら一枚岩じゃないって事よね。


 それにしても侯爵が妙に落ち着いてるのも気になるなぁ。

 スキルが消されそうになってめっちゃ慌ててた人が。

 あ、そっか。

 私は異空間で数百日修行してたけど、侯爵にとっては戦闘は昨日の事なんだ。

 クレグとバズの2人相手にギリギリの立ち回りをしていた程度の強さのままだと思ってるのか。

 それがこれだけの人数の護衛達に囲まれては、たとえ一人ぐらいスキルを消しても今度は逃げ切れないだろうと。

 じゃあちょっと修行の成果を見せてあげますかね。


『カク爺は大丈夫だと思うけど、九曜はちょっと歯食いしばってね』

『ちょっ、何する気なんだ?』

『気を解放するだけだよ』


 私は体内で気を練って、ただ・・それを・・・解放・・した・・

 広間をドンっと衝撃波のようなものが通り抜ける。

 明らかに戦闘慣れしてるらしき者を除いて、そこに居た者の殆どは気を失ってバタバタと倒れていった。

 あ、公爵も倒れた。

 残ったのは10人程か……けっこう残ったね。


「ば、馬鹿な……今のはまさか『魔闘気』か……?」


 侯爵が驚愕の表情で真っ青になっている。


「今のはただ気を解放しただけ。本番はこれからだよ」

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