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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第四章『円卓編』
157/258

157 魔王

 4つの巨大な影が広大な草原を疾駆する。

 一つは黄金色に輝く巨大な獅子。

 一つは白銀の体毛に包まれた巨大な猿。

 一つは漆黒の闇が具現化したような巨大な蝙蝠。

 一つは白亜の鱗に覆われた巨大な龍。

 それらが追う先には、小さな老齢の男性が恐慌状態で逃げていた。


「何でお前ら皆巨大化しとるんじゃー!!」

「「「「エロジジイが風呂覗くからだろっ!!」」」」

「ちょっとぐらいええじゃろ!別に減るもんじゃなし!」


 その4体の力を持ってすれば世界を統べる事すら可能であろう。

 それ程の者達を相手に覗きをする胆力は、ある意味勇者と呼べるのではないだろうか……。




☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆




 迷宮の森に佇む一件の館。

 その館の中に設置された一つの扉が開いた時、館内に居た者達に極度の緊張が襲う。

 そこから出てくる者達を知っていながらも、皆は急ぎ警戒して扉のある部屋へ向かわざるを得なかった。

 その者達は空間を歪めるのではないかと思われる程の強大な気と魔力を纏っていた。

 まるで龍の逆鱗に触れてしまったのではないかと錯覚させる。

 先に出て来た4人の姿は、その扉の中で約一年を過ごしたにも関わらず全く容姿に変化が見られなかった。

 大人であれば一年程度ではそれほど変化が無いのも納得いくが、明らかに少女である2人も外見は全く成長していないかのようだった。

 もっとも内包する気と魔力は別人のような凄まじさを感じさせたが。

 逆に後に続いた老人だけは、一年では済まなかったのではないかと思う程に老け込んでしまったように見えた。

 その場に駆けつけた青年はその異様さに顔を引き攣らせながらも進言する。


「お嬢、ちょっと気を抑えてくれ。圧が強すぎる」

「あぁ、ごめんごめん。ちょっと出る直前に盛大な狩りをしてたから気が昂ぶっちゃって」


 一人の少女が謝罪するとともに気を潜めると、続くように他の3人の女性も溢れ出る力を抑えてくれた。


「こっちでは一日だけど、扉の中ではどれくらい経ったんだ?見た感じあんまり変わって無いけど」

「300日ぐらいかなぁ?あ、私の容姿が変わって無いのは半分ヴァンパイアだからだよ。ミミィも変わってないでしょ?他の2人は大人だから変わらなくて当然だけど」

「妾が変わってないのは大人だからじゃ」


 その抗議をスルーして、皆の視線はやつれた老人へ向けられる。


「なんで一番変わりそうに無いカク爺が最も変貌してるんだよ?」

「それは自業自得だから」

「老人が更に老け込むって、一体何があったんだ?」


 とそこへ一人の老婆が呆れたような顔で現れた。


「どうせ覗きでもしたんじゃろ。しかし、修行は成功のようじゃの。こやつらが魔王に戻ったらと思うとぞっとするわい」


 その言葉を聞いた少女は意味が分からず困惑の表情を見せる。


「魔王に……戻る?」

「なんじゃ、知らんで行動を伴にしとったんかい?獣王、闇王、龍王ってのは魔王の呼称じゃ。まぁこいつらは元じゃけどのぉ」

「はぁっ!?師匠達って魔王なのっ!?」

「ん?言ってなかったか?」

「まぁ、妾達は元じゃからな」

「私ももう魔王ではありませんよ」


 開いた口が塞がらないまま、更なる事実を告げられる。


「そもそも今の獣王はアイナだろう」

「闇王もな」

「な……な……な、何でええええええぇっ!?私、別に魔王になんてなる気無かったんですけどおおおおぉっ!?」


 少女の絶叫に追い打ちを掛ける一言が。


「いや、獣王の腕輪と闇王の耳飾りが無くても、もう実力的に魔王と言って申し分ないと思うぞ」

「魔王はレントちゃんだけで十分だよおおおおおぉっ!!」

「アイナさんっ!?わ、私は魔王じゃないですよぉっ!?」


 とばっちりを食った少女も必死に否定しているが、彼女の持つ能力は問題無く魔王に匹敵する。

 しかしそれも今この場にいるパワーアップした元魔王達の前では霞んでしまっていた。


「アイナ様が魔王……」

「確かに主様のスキルは常識外の凄さでしたけどね」

「主殿は儂らにとっては救い主だ。呼称なんぞで敬意は変わらん」

「そうですね、私達の忠誠は変わりません」

「アイナお姉ちゃん魔王なんだ!格好いい!!」


 狼獣人の子の賛辞に気を取り直す少女。


「え、そ、そう?格好いい?えへへ……」

「こんなちょろい奴が魔王とか、世も末じゃな」

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― 新着の感想 ―
[一言] 権力・財力・腕力を持った男がそれを利用して自分より弱い女に性犯罪する(この場合強制わいせつ)のが『ギャグ』として成立した時代はもう終わった 味方にそんな糞犯罪者がいる、しかも重鎮ってのは不快…
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