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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第四章『円卓編』
152/258

152 強スキル

「誰があなたの元へなど戻りたいものですか!」


 ルールーが断固拒否の姿勢を見せるも、侯爵は逆に嗜虐的な笑みを浮かべた。

 この国の貴族ってこんなんしかいないの?

 折角侯爵を見つけた事だし、悪さ出来ないようにぶっ潰しておきたいんだけど、侯爵の前に出ている2人はかなりの使い手みたいなんだよね。

 流路がちょっと普通じゃない。

 『夜行』の達人ぐらいは強いと思うし、それを2人同時に相手となるとちょっと大変かも?

 カク爺は国の貴族相手に喧嘩売るのは拙いだろうから手助けは期待できないし。


「ルールー、あの2人のスキルについて教えて」

「は、はい。女の方はクレグと言ってスキルは『透明化』です。武器や自分自身を透明化して攻撃してくるのですが、気配まで完全に消すので位置を掴むには動きを予測するしかありません。男の方の名はバズで、スキルは『重量変換』です。持っている武器の重さを軽くでき、逆に相手に当たった攻撃は重くなります。重量級の武器を縦横無尽に振り回し一撃でも食らえば大ダメージを受けるので、必ず防御ではなく回避してください」


 夜行の時みたいにスキル無効化とかされないなら、私にとっては戦い易いかな。


「でも、一番厄介なのは後ろに控えている侯爵です」

「え?何で?」

「侯爵のスキルは『範囲内のブースト』です。しかもこの部屋内限定にすればあの2人の能力は倍以上に膨れ上がります。それもあって、私一人ではとても止められなかったんです」


 なるほど、気を解放してかなりパワーアップしてる筈のルールーがやられたのはそれもあるのか。

 貴族は強力なスキルを持っている事が多いのは知ってたけど、侯爵自身もかなり強いスキルを持ってるみたいだ。

 逃げるにしても隙を作る為にある程度は牽制しないとなんだけど……。

 うーん、師匠とミミィも連れてくれば良かったかなぁ?


「スキルを知ったところで、お前らの運命は変わらねーぞ。俺の大剣でミンチにしてやるからよ」


 大剣を持った男バズはヘラヘラと笑いながら近づいて来た。

 私はあらかじめ出しておいた一酸化炭素(猛毒)をバズの口元へ運ぶ。


「ん?なんだこりゃ、毒か?おい、クレグ吸い込まないようにしろよ」

「了解。見かけによらず油断できない嬢ちゃんだねぇ」


 無味無臭の筈の一酸化炭素(猛毒)を感じ取ったの?

 いや、自分の体の調子の変化を繊細に読み取ったのかも知れない。

 粗野な風に見えて、意外と隙が無い。

 加えてスキルも強力ってのは大変だなぁ……。


「主様、私が前に出ます!」

「いやいや、ルールーは回復したばかりで体力が戻ってないでしょ。私が片づけるよ」

「大きく出たなぁ。でもスキルを使う間なんて与えねぇよ」


 バズが大剣を小枝でも振るように私へ向かって振り下ろす。

 それを横飛びで躱したけど、重量を軽くした武器は易々と軌道を変えて襲ってくる。

 まるで巨大な蛇に執拗に追われているような感覚だ。

 しかも当たれば一撃必殺……これは確かに強い。

 なんとかバックステップで躱すも、今度はクレグが姿を消したまま下から突き上げるように攻撃して来た。

 それを今度は体を捻って躱す。

 今のはちょっとヤバかったかも……。

 流路が完全に見えなくなってたし、クリティカルポイントが視えてなきゃやられてた。


「へぇ、私の事見えてるんだ。完全に気配を消してた筈なのに、どうやってんのよ?魔導具?」


 クレグが姿を現すと、その目はかなり獰猛な野獣のようになっていた。

 自分のスキルを看破されたから、どうしてもここで私を仕留めておきたくなったって感じかな?

 そしてバズはバトンを回すように重量感のある剣を軽々と一回転させると、姿勢を低くしてこちらに突っ込んで来た。

 横薙ぎに振るわれた剣を飛んで躱すと、それを狙っていたとばかりに剣が進行方向を変えて上へと舞い上がる。

 私は空中の足場を蹴って辛うじてそれを避けた。


「おいおい、何でそんなに色々出来るんだよ。魔導具を使ってる形跡がねぇし、全部スキルでやってんのか?」

「この嬢ちゃんはヤバいね。ルールーなんてほっといて、ここで仕留めないと拙いよ」


 あら、私の評価が上がっても全然嬉しく無いんですけどぉ?

 でもこっちにばかり気を取られてて大丈夫かな?

 私は後ろの侯爵へ向けて一酸化炭素(猛毒)を飛ばす。


「ちっ、ほんと油断ならねぇなっ!」


 バズがそれを大剣による風圧だけで吹き飛ばした。

 だから何で見えてんのよ?

 あ、もしかして魔力の流れを見てるのか……。

 ホント厄介な敵だわ。

 と、突然クレグが奇妙な動作をしたので私は咄嗟に身を躱す。

 右腕を何かが掠めて皮膚を浅く切られてしまった。


「今のを躱すかい、中々勘がいいじゃないか。でも掠っちゃったからもうお終い」


 突然視界がグラッと揺れて、膝を突いてしまう。

 毒かぁ……じゃあ解毒っと。

 おそらく夜行が使ってたものと同じ毒と思われるので、難なく解毒できてしまった。


「うそ……。巨獣ですら仕留める毒よ?あんたいったいどんなスキル持ってんのよ!?」


 毒に関しちゃこっちの方が遙かにエキスパートなんですよ。

 たぶん今のはチャクラムっぽい何かに毒を塗って投げたんだと思うけど、軌道が読みづらい武器を透明化してたせいで避け切れなかった。

 スキルの使い方も含めて戦闘慣れしてるかなり厄介な相手だ。

 このままじゃ逃げることすらままならないね。

 どうしよ……。

この物語はファンタジーです。

実在する一酸化炭素とは一切関係ありません。

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