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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第四章『円卓編』
151/258

151 ルールー

「それで、マル婆が言ってた宛てってどこ?この人数だと移動も大変だけど」

「移動なんて一瞬じゃ」


 マル婆が異空間収納の指輪から、ピンク色の片開きのドアを出した。

 まさか……。


「この魔導具のドアには遠距離との空間接続が可能な仕組みが組み込まれとる。どこへでも一瞬で行けるドア、略して……」

「それ、略しちゃだめなやつっ!!」


 って言うか、こんなものまで持ってるって、勇者ぱねぇ……。

 そうか、カク爺とマル婆の強力な流路が突然現れたのって、このドアを通って来たからだったのか。


「そもそも秘密の場所なんでな、何処なのかは教えられん。まぁ安全は保証するがな」

「仮にも勇者だからその辺の心配はしてないよ」

「仮じゃなくて真に勇者じゃ」


 会ったばっかだし、真に勇者なのかどうかは知らんよ。

 強者なのは間違い無いけどね。


「じゃあ行くぞい」


 マル婆がドアを開けると、そこには周囲とは全く違う景色が広がっていた。

 木々が生い茂っていて、奥の方には湖のようなものが見える。

 学園の裏山の奥にある景色に似ているような気がした。

 最初にマル婆がドアをくぐると、恐る恐る順に後に続く。

 そして私はある事に気付いてドアをくぐる前に立ち止まった。


「ソフィア王女、ルールーは今日一緒じゃないの?」

「ルールーは城の方で動きがあったら教えてもらうために、城に残ってもらってました」

「……それはやばいね」

「えっ?」

「王子が動いたのに、ルールーが知らせに来てない」

「あっ!」


 王女の影の護衛達の中にルールーの流路が無かったから、このままだと置いて行っちゃう事になるなと思って確認したけど、聞いておいて良かった。


「ごめん皆、ちょっと先に行ってて。私は城へ行ってルールーを連れてから行くから」


 ルールー一人なら、最悪抱えるような事態になっても何とかなるし。

 と思ってたら、


「お嬢、俺も付いてくぞ」

「儂もじゃ」


 九曜と叢雲が名乗り出てくれた。

 護衛で来てくれるのはありがたいんだけど……


「悪いけど、急ぐから私一人の方が早い」

「ぐっ……」

「確かにそうじゃが……」


 私を心配してくれるのはとても嬉しい。

 でも今は一刻を争う気がするんだよね。


「無茶はしないから、心配しないで」

「……分かった」

「くれぐれもお気を付けて」

「うん」


 私は即座にぼっちさんを白い円柱に変えて飛び乗る。

 とそこへ一人乱入者が……。


「儂はついて行くぞ」


 カク爺もぼっちさんに乗り込んで来てしまった。

 まぁ監視対象を逃がしてくれる訳もないよね。


「振り落とされないように出来る?」

「仮にも勇者じゃぞ」


 カク爺の方は仮でいいんだ……。

 本人が大丈夫という事だったので、フルスロットルで城へ向かってぼっちさんを飛ばした。

 一応足にフックを生成してあるので万が一にも落ちないと思うけどね。




☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆




 城には盛大に突っ込んで、穴の開いた壁付近は瓦礫にまみれた。

 加減を間違った訳ではない。

 大きな騒ぎを起こせばルールーに何かあった場合でも時間が稼げると思ったからだ。

 案の定、城内は蜂の巣を突いたような大騒ぎとなっている。

 私が隠密の術で姿を隠すと、カク爺も何やら魔導具を使ったようで同様に姿を隠した。

 まぁクリティカルポイントが視えてる私には丸見えですけど。

 カク爺の方を向いたら、何かビクリと反応してた。


「さてルールーは……居た!!」


 割とすぐルールーの流路を発見したのはいいが、何故かうずくまっているしかなり流路が乱れている。

 急がないと拙いかも知れない。

 私は急いで、その場へと駆け出した。


 でも何か城の様子がおかしい気がするんだよね。

 私が起こした騒ぎとは別に、どこかで闘ってるような音が聞こえるし、ルールーのいる場所以外でも何か戦闘が起こってる?

 まぁでも、今はルールーの事が先だ。


 城内の白亜の廊下を走った先に大きめの扉が見えてくる。

 その奥にルールー以外にも3人の流路が見えたが、対峙するように位置している事から敵であると判断した。

 私は扉をその3人の方向へ吹き飛ばすように蹴破った。

 残念ながら、直撃するかに思われた扉は前に出た2人によって破壊される。


「ルールー、大丈夫?」

「え?主様、何故ここに……!?」

「話は後。とりあえず逃げるよ」


 なんとか間に合って良かった。

 ルールーに回復薬(毒)を注入して傷を癒やすと、部屋にいた3人が不気味に笑った。


「逃がす訳ないでしょう」

「俺達から逃げられると思ってるとか、滑稽だな」

「ふふふ、あの婆さんには手を出さない方がいいと言われてたが、ここで出会ってしまうは運命か?互いに相容れぬ巡り合わせなのかも知れんな」


 両手に短剣を持った軽装の女性、大剣を肩に担いだ大柄な男性、そして明らかに貴族のような雅な服を着たおっさん。

 三者三様の姿だが、3人共にとても濁った目をしているとても嫌な感じのする人達だった。

 扉を蹴破った音で近くの兵士達が騒ぎ始めたから時間が無いけど、さすがに見逃してくれそうには無いよね。


「さてルールーよ、もう一度聞こう。奴隷に戻る気は無いか?」


 奴隷に戻る・・

 ……そうか、こいつが例の侯爵か。

この物語はファンタジーです。

実在する回復薬とは一切関係ありません。

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